テンペランスを率いるマルコ・パストリーノ(g,vo)がセレニティのゲオルク・ノイハウザー(vo)とタッグを組み、新たなるメロディック・メタル・バンド:フォールン・サンクチュアリを始動! 間もなく、劇的ツイン・ヴォーカルを全編に配したデビュー・アルバム『TERRANOVA』をリリースする(日本盤発売は7月6日。海外では6月24日に先行リリース済み)。疾走パワー・メタルからAOR寄りまで、イタリア&オーストリア出身の2人のルーツがドラマティック&キャッチーに封じ込められた同作について、そしてニュー・バンド結成の経緯などについても、掛け持ちバンド多数でワーカホリックな日々を送るマルコが大いに語る…!!
ボーナス・トラックを含めた全曲が、このバンドを立ち上げてから書かれた
YG:まずは、フォールン・サンクチュアリ結成の経緯から教えてください。そもそも、あなたとゲオルクはいつ、どのようにして知り合ったのですか?
マルコ・パストリーノ(以下MP):俺たちが初めて会ったのは、’17年にイタリアで行なわれたセレニティのショウにおいてだった。でも、より交流を深めたのは、その翌年に、テンペランスがセレニティのツアーに同行した時でね。当時、俺たちは「誰に影響を受けたの?」「お気に入りのアーティストやアルバムは?」といったことを、色々と語り合ったものさ。だから、いずれ一緒に何かやることは必然だったとも言える。そして、セレニティのアルバム『THE LAST KNIGHT』(’20年)で何曲か共に仕上げた(※マルコがバッキング・ヴォーカルで参加)ことが、俺たちにとって最初のコラボとなったんだよ。
YG:フォールン・サンクチュアリというバンド名は、セレニティのセカンド・アルバム『FALLEN SANCTUARY』(’08年)のタイトルから採用したのですよね?
MP:スタートの時点から、そうしようと決めていたよ。俺たちの過去とこの新しいバンドとをつなぐ…という意味も込めてね。実際、(『FALLEN SANCTUARY』は)俺のフェイヴァリット・アルバムの1枚だったし、新しいバンドにぴったりの素晴らしい名前だと思ったから、ごくごく自然なチョイスだったな。
YG:『TERRANOVA』の曲作りはどのようにして行ないましたか? 実際に2人で顔を突き合わせて? それとも、リモートで?
MP:会って一緒に作業する機会もあったけど、その際は、互いのアイデアを擦り合わせ、それが上手くいくかどうか確認することに、時間の9割を割いたよ。ただ、俺たちは離れた場所に住んでいるから、リモートで作業する方がずっと簡単だったのも事実だ。
YG:サウンドの方向性はあらかじめ決めていましたか? それとも、曲を書き進める中で定まっていったのでしょうか?
MP:最初に決めたのは、全曲に可能な限り2人のヴォーカルを入れることだった。俺たちのヴォーカル・レンジは全く異なっていて、コーラスやハーモニーでそれを最大限活かすことが出来ると思ったからさ。でも何曲かでは、特にルールを決めず曲を書いていったよ。2人ともパワー・メタルやメロディック・メタルが好きだけど、もっと可能性を見出せると思ったからね。そうして、AOR方面やアコースティックの要素すら試していったのさ。
YG:『TERRANOVA』収録曲は、テンペランスとセレニティの併せ技のような部分もありますが、プログレッシヴ&シンフォニックな要素は控えめで、よりストレートかつメロディック&キャッチーな印象も受けました。
MP:俺もゲオルクも、それぞれのバンドのメイン・ソングライターだから、当然その影響は出てくるだろう。しかし、特に方向性は決めていなかったから、自然とそうなっただけなんだ。
YG:テンペランスやセレニティで使わなかったアイデアを流用したり…ということは?
MP:全くないよ。ボーナス・トラックを含めた全曲が、このバンドを立ち上げてから書かれたんだ。
YG:レコーディングではあなたがベースも弾き、ドラマーとしてアルフォンソ・モセリーノ、キーボーディストとしてミケーレ・グアイトリ…と、テンペランスのメンバーが起用されていますね?
MP:アルフォンソは素晴らしいドラマーというだけでなく、俺の親友のひとりだから、アルバム制作を始めるに当たって、すぐに参加するよう声を掛けたんだ。キーボード・パートに関しては、デモの段階では自分で弾いていたけど、俺は最高の鍵盤奏者じゃないから、ミケーレにやってもらおう…ということになったのさ。
YG:先行公開された「Broken Dreams」のPVでは、ガブリエレ・ゴッツィがベースを弾いていますが、彼はかつて、テンペランスのライヴを手伝ったことがあったとか?
MP:ガブリエレとはもう10年以上の付き合いなんだ。彼は才能豊かで、俺のお気に入りのシンガーのひとりでもある。そう、以前(シンガー兼任の)ミケーレが出演出来ない時、代わりに(テンペランスのライヴで)歌ってもらったことがあってね。彼は(本業はヴォーカルながら)ギターも弾けるから、フォールン・サンクチュアリに参加してもらい、ベースを練習するよう頼んだのさ。
「Destiny」のソロはハーモニック・マイナーにブルージーな要素をミックスしてみた
YG:『TERRANOVA』のレコーディング使用機材を教えてください。まずはギターから。
MP:シェクターの7弦“Hellraiser”で、すべてのエレクトリック・ギター・パートを録った。過去10年間、俺はこのギターと共に世界中でプレイしてきたんだ。アコースティック・パートで弾いたのは、クラフターの6弦アコだ。
YG:近年はレガター・ギターズの“Ninja”をよく使っているようですね? レフティの“Ninja”はあなたのためのカスタムでしょうか?
MP:いや、市販されているモデルで、特に改造はしてないよ。レガター・ギターズのことを知ったのは’21年の早い時期で、そこからエンドースに向けての話し合いをもった。すると彼等は“Ninja”を送ってきてくれたんだ。それが凄く気に入ってね! 知っての通り、左利き用のギターを見付けるのは簡単じゃない。でも俺は、幸運なことにレガターでそれを見付けたのさ。
YG:アンプは何を使いましたか? マイクを立ててキャビネットの音を拾う昔ながらの方法を採りましたか? それとも、ドライで信号を録ってあとからリアンプしたのでしょうか?
MP:以前はメサブギーを使っていたんだけど、ここ数年はLINE 6の“Helix”かケンパーを使っているんだ。まぁ、俺はギター・オタクってワケじゃないからね(笑)。今回はケンパーですべてのギター・パートを録音し、ヤン(・ヴァチック:エンジニア)がリアンプして、素晴らしいサウンドに仕上げてくれた。テンペランスでは、“Helix”のジョン・ペトルーシのプロファイル・サウンドを使っている。とりわけ、リード・パートとクリーン・サウンドでね。
YG:エフェクターはどうでしょう?
MP:ペダル類は全く使っていないよ。
YG:アルバム全曲のチューニングを教えてください。
MP:全曲で半音下げを採用している。
YG:各曲のギター・ソロは、「Broken Dreams」のようにシンプルなモノから、より技巧的なモノまで様々ですね? ソロはあらかじめ練って、レコーディングに備えておきますか? それとも、レコーディング現場で直感的に弾くだけ?
MP:ソロに関しても、特にルールはないんだ。だから、いつも直感的に(どう弾くか)決める。たとえば「Broken Dreams」のような曲だと、ギターで誰も弾けないようなテクをひけらかす必要はない。でも、「Terranova」のような疾走曲の場合、トラディショナルなパワー・メタルのスタイルに倣って速弾きすることになるよね。
YG:テンペランスなど他のバンドとは、今回プレイ・スタイルを変えましたか? それとも、どのバンドで弾く時も特に変わりありませんか?
MP:正直、歌もギターもずっと同じスタイルでやってきているよ。これが俺のスタイルなんだからね。
YG:『TERRANOVA』収録曲の中で、ヤング・ギター読者に特に注目して欲しいギター・プレイを幾つか挙げてください。
MP:お気に入りのプレイはアルバムのあちこちにあるよ。たとえば、「Trail Of Destruction」のギター・ソロ。ミッド・テンポの曲だけど、まずはゆっくりとしたメロディー弾きで始め、その後に’80年代っぽいクールなタッピングを入れている。あとさっきも言った通り、絶品パワー・メタル・チューンのタイトル曲でもクールなプレイが聴けるよ。中でも、中間部のソロは特に気に入っているんだ。それから、「Destiny」のギター・ソロもイイと思う。クラシックなハーモニック・マイナーにブルージーな要素をミックスしてみた。是非、みんなも弾いてみて欲しいな。きっと楽しいと思うよ!
YG:ところで、『TERRANOVA』発売に先駆けて、フォールン・サンクチュアリは既にライヴ・デビュー済みだそうで?
MP:うん。(’22年4月上旬に)セレニティのツアーで(スペシャル・ゲストとして)何度かプレイしたんだ。長いブランクを経てのツアーだったから、とても感激したな。
YG:その際のバンド・ラインナップは「Broken Dreams」のPVと同じでしたか?
MP:その通り。俺、ゲオルクに加えて、ガブリエレがベースとヴォーカル、アルフォンソがドラムを担当した。彼等を含む4人がフォールン・サンクチュアリの正式メンバーなのさ。
YG:またそれに先駆け、3月にはファンを招いて『TERRANOVA』のリスニング・パーティーを実施したそうですね? その際、アコースティック演奏などのパフォーマンスも行ないましたか?
MP:ああ。ゲオルクと2人で、「Broken Dreams」のアコースティック・ヴァージョンを披露した。それがフォールン・サンクチュアリにとって、初めてのファン・ミーティング・イヴェントだったんだ。ヨーロッパ中から少数のファンを招き、本当に素晴らしく、マジカルな体験となったよ。集まったファンにとっては、世界で最初にアルバム全曲を聴く機会でもあったしね。
YG:それにしても、あなたの尽きぬ創作意欲は本当に凄まじいですね! テンペランスの他に、VIRTUAL SYMMETRY、WONDERS、EVEN FLOW、FLAMES OF HEAVEN、LIGHT & SHADEなどでも活動しているというのに、今回そこにフォールン・サンクチュアリが加わったワケで…。常日頃から次々とアイデアが溢れ出てきて、使い切れなくて困ってしまうぐらいだったりするのでしょうか?
MP:正直言って、音楽は毎週…というか、ほぼ毎日“降りて”きているんだ。ヴォーカル・ライン、ギター・リック、サビ・メロなんかを、いつもスマートフォンで録音しまくっているよ。ただ、これまでソングライター、プロデューサー、そしてゲスト・シンガーとしても、様々なプロジェクトに携わってきたけど、フォールン・サンクチュアリは(プロジェクトなどではなく)本物のバンドだからね。ゲオルクや他の友人たちとツアーに戻ることが出来て、とても興奮している。これからも、もっと多くの音楽をリリースしていくつもりだ。アートのため、俺自身の情熱のため、ずっと新しい音楽を書き続けなきゃ…と思っているよ!
YG:今後『TERRANOVA』に伴い、より本格的なツアーを行なう計画はありますか? 是非、日本にもいらしてください!
MP:6月末にリリースを記念して幾つかのショウを行ない(註:このインタビューは6月上旬に行なわれた)、その後、今年後半にもまたプレイするつもりだ。そして、来年(’23年)にはツアーにも出たいね。勿論、君たちの美しい国にも行きたいな。俺はこれまでに、シークレット・スフィアやテンペランスで何度か日本を訪れたことがあるけど、今でもその美しい思い出が心に残っている。また日本でみんなに会うのが本当に楽しみだよ!!
INFO
日本盤公式インフォメーション
マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン