常にエネルギッシュでポジティヴなエネルギーに溢れたライヴ・パフォーマンスを見せてくれるアメリカのハード・ロック・レジェンド:ナイト・レンジャーが、“最後の来日公演”として今年10月に開催する、FAREWELL JAPAN The “Goodbye” Tour 。10月14日は大阪、16日は39年ぶりに日本武道館にて行なわれることもあり、ファンの間には悲しみと期待が入り混じった気持ちを抱いている人も少なくないだろう。一体どんな内容が予定されているのか、今後のバンドはどうなっていくのか…。今回、オリジナル・メンバーの一人であるギタリスト:ブラッド・ギルスにビデオ・インタビューで話を聞くことができた。
公演に対する意気込みはもちろん、デビュー当時から深いつながりのある日本への様々な思いや、おなじみのメイン・ギターである赤いフェンダー・ストラトキャスターに関するエピソードまで、たっぷりと語ってくれたブラッド。これまでにリリースされたアルバムやライヴ作品の数々をお供に、ぜひお楽しみいただきたい。
俺達は日本が大好きなんだ
YG:早速ですが、ナイト・レンジャーがこのタイミングでフェアウェル・ジャパン・ツアーを決断したのはどんな理由だったのでしょうか?
ブラッド・ギルス(以下BG):まず、これは言っておかないと。俺達は日本が大好きなんだ。初めて行ったのは1972年、パイロットだった父親に連れられてのことだった。俺と兄貴を東京に2〜3日滞在させてくれて、富士山やホンダ工場を訪れたり、新幹線に乗ったりした。とにかく日本といえばその興奮が蘇るんだ。2回目は1982年、オジー・オズボーンの日本公演で。これはとてもエキサイティングだった。そして、ナイト・レンジャーが初のレコード契約を手にした時、日本へ向かったんだけど、ここで初めて俺達はゴールド・ディスク、そしてプラチナ・ディスクを獲得した。しかも日本滞在中にね。とても成功した。だから日本のファンやオーディエンスには常に愛情があるし、これまでに15回ぐらいライヴをやっている。2〜3年に1回のサイクルで訪れることができていた。
そして…まあ、俺達も少し歳を取ってきて、これからどのぐらいナイト・レンジャーのツアーを続けていけるか分からないな、というところに来ているんだ。もちろん日本に戻ることは楽しいけど、時間があるうちに(最後のツアーを)やっておこうとなった。それで日本公演をブッキングしたところ、プロモーターから「武道館でやることになりました」と返事がきた。これはとってもエキサイティングだよ! たしか1986年だったかな。2日連続で武道館公演を行なった。みんな、チープ・トリックの『AT BUDOKAN』(1978年)のアルバムが好きだから、武道館でプレイした時は最高だったよ。「世界中でも有名な会場で演奏できたぞ!」って。それ以来戻ってはいなかったから、今回はとてもエキサイトしているよ。チケットもとても好調らしい。楽しみにしているね。
YG:現在はアメリカ・ツアーの真っ最中ということですが…。
BG:ああ、でも1年に18〜19本やる程度で、20代だった’80年代の頃のようにツアー・バスに乗って2〜3ヵ月かけて回るという感じではない。もうあれはやらないよ、いっぱいいっぱいだ(笑)。みんな歳を取ったし、それぞれ家庭があるしね。あの頃は1ヵ月間出突っ張りなんて大したことじゃなかったけど。今は“ウィークエンド・ウォリアー”と称して、木曜日に家を出て金・土にライヴをやり、日曜日に帰る。で、2〜3日オフを取ってまた集合…という感じ。で、今はアメリカが夏に入ったから、木・金・土・日と、ちょっと長めにプレイすることもある。これからは夏フェスも控えているんだ。ブレット・マイケルズのバンドと2〜3回やるし、ZZトップも出たり…多岐にわたるバンドとの様々なフェスティヴァルが予定されているんだ。中でも、先日東海岸のオーシャン・シティで行なったショウは55,000人の観客を前にしたステージで、素晴らしかったしとても楽しかった。その時もブレット・マイケルズと一緒だったし、アリス・クーパーも出ていたし…とにかく楽しい夜で、今のところ今年一番のハイライトだね。
俺達は今も忙しくしているし、明日から東海岸に戻ってもう2〜3回ショウをやる。サンフランシスコのベイエリアに住んでいるけど、ここは今の時期、最高だよ。気候が24℃ぐらいでとってもいい。自宅では忙しくしているよ。またソロ・アルバムを作り始めたので、完成に向けて取り組んでいる。それに、1週間後にはサンフランシスコ・ジャイアンツの試合会場でアメリカ国歌をギターでプレイすることになっている。それで自分のお気に入りのギターを引っ張り出してきているんだ。これはルビコン時代に弾いていたレスポール(と、黒いモデルを手に取る)。オジー・オズボーンでも使ったもので、これで国歌を練習しているよ。
そんな感じで、もうたくさんのことが同時に進んでいるんだ。特にこの歳になってくるとなおさら、こうやって忙しくしている時のエネルギーが好きだね。だから日本に行くことも、今年のハイライトの1つになるだろうな。
YG:日本ツアーは“フェアウェル”とのことですが、バンド活動は続きますか?
BG:分からないんだ。今、みんなが健康なうちにやっておければと思ったんだよ。それって良いことだ。俺もかなり健康を維持している。何しろ、酒をやめたからね! もう全く飲んでいない。食事の内容を変えたから、極めて健康でいられる。おかげで、ここ8ヵ月で18ポンド(約8kg)も体重が減った! 特に移動が多い時はこうした取り組みが大事になってくるんだよ。
とはいえ、このバンドにはまだたっぷり体力がある。毎日毎晩、110%の力を注いで演奏しているんだ。だから大阪と、東京の武道館でプレイできるのが楽しみだよ。そして個人的には買い物がしたい。食事もおいしいし、文化も好きだ。ファンや人々が素晴らしい。とても清潔な国だと思うよ。あちらに行けば安全が守られているしね。街も見たい。フェンダーのフラッグシップ・ショップ(編註:Fender Flagship Tokyo)が新しくできたよね? 世界最大級だと言うじゃないか。あそこに行くのが楽しみなんだ。
ギターはよく動くように手入れをすることだ
YG:ギターといえば、来日公演には長年のメインである1962年製フェンダー・ストラトキャスターを持ってこられますか?
BG:ああ。兄貴の友人がくれたギターなんだ。彼はエリックというんだけど、ある日大きな箱を持って家にやってきたよ。「ブラッド、君はギターを弾くって聞いている。ここに1962年製のストラトキャスターがあるから、これを君にあげよう。僕が分解してヤスリがけをして、塗装もしようと思ったけど、そこまで手が回らなかった。君にあげるから、自分で直してみるといいよ」「へえ、なるほど。クールだね!」それで引き取ることにした。手元に、オレンジ・レッドの242の塗料が数リットル余っていたので、それをバイクの修理ショップに持ち込んでボディを塗装してもらった。グレーの下地を塗って、その上にオレンジ・レッドを噴き付けた。ネックはオークランド在住のカミモト(ヒデオ)さんという日本人ルシアーに頼んで真っ黒に塗装してもらった。さらに、フェンダーのデカールも貼り付けてもらった。
あと、当時はちょうど最初のフロイドローズ・トレモロ・システムが開発された頃で、エディ・ヴァン・ヘイレンが最初の1個を持っていた。俺も欲しかった!! そこでサンフランシスコにある楽器店Don Wher’s Musicに行ってみると、そこに歴代3個目に作られたフロイドローズがあったんだ! 当時はかなり高価な代物でね。そこで俺は白いレスポール・カスタムを持ち込んで、交換してもらったんだよ。…というのもあまり金がなかったのでね。白いレスポールと引き換えに、3個目のフロイドとストラトのフレット作業をやってもらった。この時、ネックの端っこを加工して22フレット目を追加してもらった。だから俺のストラトは22フレット仕様なんだ。そこからすべてが始まった。
それから、兄貴が電気関係の仕事に就いた。ワイアレス・システムに取り組んでいて、“Gillis Cordless”という製品を開発したんだよ!(笑) 俺はしばらくそれを使っていたけど、「なあ、これをギターの内部に搭載してしまおうじゃないか!」…というわけでボディ背面から配線をやり直して、ネイディーのワイアレス・システムを搭載してもらったよ。これはずっと使っていたね。それから何年も経ち、新しいワイアレス・システムがたくさん登場して、製品もさらに良くなった。そこでネイディーを外して、シュアのワイアレスを入れた。今使っているものはここ数年ずっと入っている製品で、素晴らしいよ。シュアの中でもいろいろ使ってきたけど、俺のツアー用ギターには全部、何かしらのワイアレスが搭載されている。家で使うギターにも数本…自宅にもレシーヴァーを設置してある。ワイアレスはとっても好きだね!
ブラッド・ギルスのライヴ機材紹介動画(2022年公開)
YG:過去2回の日本公演でも、ブラッドのギターの音は素晴らしかったです。あなたといえばやはり、フロイドローズ・トレモロを駆使した多彩なプレイ。その技の数々は本当に鮮烈でした。
BG:どうもありがとう。あのトレモロ・システムを手に入れた時、自分の奏法スタイルに取り入れたんだ。やり方も独特だよ。ジェフ・ベックはジェフ・ベックならではのやり方をしていたけど、俺はクレイジーな感じに使うのがいい。それが自分のスタイルになったんだ。
YG:今、あなたの背後にもギターが何本か見えますね。
BG:これらはどれもツアー用だ。それに、ヴィンテージのギターを集めるのが好きでね、100本以上あるよ。これは1952年製のゴールド・フィニッシュのレスポール。ボディ背面まで全部ゴールドなんだよ! 貴重な品々だ。自分でギターも作っているしね。だから2〜3日家に戻ってくると、すぐにギターいじりを始めるんだ。
YG:アンプやエフェクト類は?
BG:アンプはたぶんレンタルだろうな。それから、カスタムのMIDIフット・ペダルや各種エフェクトをギター・テックのダレンが用意してくれるはずだ。あと2〜3ヶ月はあるから、ダレンと一緒に日本公演のセッティングを考え、最適な機材を決めていくよ。
YG:ストラトを始め、ヴィンテージ・ギターの数々を今もステージで使い続けているわけですが、コンディションを保つ工夫は?
BG:よく動くように手入れをすることだ。ストラトで交換したのはフレットだけ。フレットは摩耗するからね。汗などを残さないようにすればいいんだよ…俺はあまり汗をかかない。汗が入り込むとヴォリューム・ノブやピックアップなどが腐食したりするからね。そして俺には素晴らしいギター・テックがついている。彼は俺のシステムの配線をすべてやり直してくれた。さらに音が良くなったよ。ダレン・ハースト(Darren Hurst)といって、ピーター・フランプトンやジョー・ペリーのテクを務めていたんだ。だけど彼はナイト・レンジャーのチームを気に入ってくれた。ここはファミリーみたいな関係だからだ。他のグループでは得られない、家族のような関係になることができる。みんな仲良くやっているし、バンド側もクルーに家族同様に接するし…。彼がいてくれて大助かりだ。ギターのリペアを手掛けたり、アンプの配線をやり直したり。そして、最高級にかっこいい音を出させてくれるんだ!
YG:そういった家族のようなつながりや精神性があるからこそ、ナイト・レンジャーの音楽は日本はもちろん世界中のファンに愛され続けてきたのだと思います。1982年のデビューから現在まで、バンドの活動を振り返っていかがですか?
BG:そうだね、今年で43年になるけれど、今もオリジナルのメンバーが残って、一緒にやってこられているね。それに今年は『7 WISHES』(1985年)がリリース40周年となる。これは日本でもお祝いをするつもりだよ。このアルバムから今よりもっと曲をやる予定だ。サウンド・チェックの時にいろんな曲を練習してるよ! 他にも、日本向けには特別にいろんな曲を用意している。ライヴでめったにやらない曲、中には一度も弾いてこなかった曲もあるかもね。
YG:とても楽しみです! 残念ではありますが…最後となるショウを楽しみにしています。
BG:ありがとう。この先どうやって戻ってこられるか分からないけど、これは“最後のコンサート”と銘打っている。今から2〜3年したら、どうなっているか分からないからね。日本のことは大好きだし、日本の文化が好きだ。ファン、そして食べ物! いろんな種類のソースがあるのがいいね! 後は魚料理。今、俺は魚ばっかり食べているよ。俺達みんな、日本に行くのを楽しみにしている。きっと素晴らしいショウになるといいな。
ナイト・レンジャー FAREWELL JAPAN The “Goodbye” Tour 概要
大阪公演
日程:2025年10月14日(火)
会場:グランキューブ大阪
開場 18:00 / 開演 19:00
主催: FM COCOLO/FM802
お問い合わせ: ウドー音楽事務所大阪支社
TEL 06-6341-4506
東京公演
日程:2025年10月16日(木)
会場:日本武道館
開場 18:00 / 開演 19:00
主催: J-WAVE/BAYFM78
お問い合わせ: ウドー音楽事務所
TEL 03-3402-5999
チケット料金(各税込):
S席 14,000円
A席 13,000円
VIPパッケージ (公演チケットS席含む/各税込)
Ritual VIP Experience 129,000円
Meet & Greet VIP Experience 69,000円
VIP Soundcheck Experience 29,000円
協力:ワードレコーズ/ユニバーサル ミュージック
企画・招聘・制作:ウドー音楽事務所
公式インフォメーション
ナイト・レンジャー | ウドー音楽事務所