去る1月下旬、北欧スウェーデ…もとい、未知なるトワイライト王国より異界の楽士達が日本を再訪した。劇的にして壮大なる鋼鉄の調べを奏でるその楽団の名はトワイライト・フォース! 前回、彼等が日本初上陸を果たしたのは’17年秋で、その時からはシンガーとドラマーが交代している。フードを深々とかぶって叩く後者は、パッと見あまり違いが分からないかもしれないが、前者については見た目からして全く違う。しかも、前任のクリリオンが前回来日直後に電撃解雇…という衝撃の経緯もあり、代わって迎えられたアリオンには大いに関心が集まっていた。その新たなる剣士アリオン──実は…トリック・オア・トリートのアレッサンドロ・コンティなのだが、そこには敢えて詳しく触れるまい。というか、マントを羽織り、皮の鎧をまとった彼は、ステージに登場したその瞬間から威風堂々とした佇まいで、意外にもそう違和感がなかった。
ファンタジックなSEに導かれ、最新作『DAWN OF THE DRAGONSTAR』(’19年)のタイトル曲で幕明けたショウは、今回も冒険のスリルが満載で、オーディエンスはのっけから大熱狂。序盤から多くの楽曲でサビの大合唱が起こり、持参した剣を振り上げる者もいれば、エルフの耳を付けたコスプレ・ファンもいて、遥かなる旅路を共に盛り立てる。注目のアリオンは、得意のハイ・トーンで闇を切り裂き、邪を祓い、伸びやかなシャウトが立ちはだかる魔物を次々と調伏。何度かちょっと苦しそうになる場面も見られたが、そもそもトワイライト・フォースの楽曲は、ギリギリ極限の高音歌唱が幾度も求められるからして、さしもの歴戦のツワモノ:アリオンとて、時に窮地に陥ることもあろう。また、他のメンバーとの連携がまだ今ひとつで、時々ショウ運びがぎこちなかったりもしたものの、それは今後さらに経験値を積んでいけば解消されていくに違いない。
一方、半エルフ:リンド&森のエルフ:エレンディールのギター・チームは、両者とも軽やかにステージ上を駆け回り、サラサラのブロンドをなびかせて華麗にフォーメーションをキメながら、今回も終始、観客の目を釘付けにしていた。重厚にギターを掻き鳴らし、タッピングやシュレッド・ソロを連発する前者、基本リズム・プレイに徹しつつも、片足立ちや重心を低くしたポーズなどで見る者すべてを魅了する後者と、言わば分業制を採りながらも、そのコンビネーションは「抜群!」としか言いようがない。以前は、まるで双子かといった印象もあったし(今はリンドがちょっと肥大化して体格差が…)、2人揃えばそれこそ“1+1”が10にも100にもなるぐらいのポテンシャルを秘めているのだ。
それぞれに濃いキャラ立ちの面々の中でも、最も演劇的要素が強いのが黒頭巾姿の鍵盤奏者:ブラックヴァルド。MC担当でもある彼が観客を巻き込んで寸劇を披露するのも、トワイライト・フォースのショウでは定番となっている。例えば、「魔道士になるには、まず不敵な笑い方を会得しなければならない」と言って、オーディエンスに「フハハハハハ…!」と大仰な笑い声を出させたり、「Enchanted Dragon Of Wisdom」(’14年『TALES OF ANCIENT PROPHECIES』収録)の最後を締め括るハイ・トーン・シャウトが出なくなってしまったアリオン(勿論それも演出)に、小瓶に入ったドラゴンのお小水を飲ませ、見事その声を甦らせたり…といった具合に。また本編ラストの「Gates Of Glory」(『TALES OF ANCIENT PROPHECIES』収録)では、中間部にお約束のブレイク・パートがあって、メンバー全員と共に“シャキ~ン!”と抜刀ポーズをキメるのも、ファンには絶対にハズせないお楽しみとなっている。今回、東京公演2日目の新宿BLAZEにて、アリオンがその場面で日本刀を手に大奮闘してくれたことも特筆しておきたい。
壮麗かつ荘厳、勇壮で希望に満ちたシンフォニック・サウンドが“非日常”へ誘なうトワイライト・フォースの極上パフォーマンス。共に歌い、叫び、ヘドバンに興じるうち、我々はいつしか、ドラゴンが大空を舞う剣と魔法の世界の住人となる…!!
トワイライト・フォース@HOLIDAY新宿(2020.1.25)&新宿BLAZE(2020.1.26)セットリスト
※曲目は両日同じ
- 1. Intro~Dawn Of The Dragonstar
- 2. Queen Of Eternity
- 3. Long Live The King
- 4. To The Stars
- 5. There And Back Again
- 6. Enchanted Dragon Of Wisdom
- 7. Winds Of Wisdom
- 8. Battle Of Arcane Might
- 9. Flight Of The Sapphire Dragon
- 10. Gates Of Glory
- [Encore]
- 11. Blade Of Immortal Steel
- 12. The Power Of The Ancient Force~Outro
GRAILKNIGHTS
今回、オープニングを務めたドイツの“スーパー戦隊”メタラー:グレイルナイツ。トワイライト・フォースとはまた趣きの異なる、ちょっとおマヌケな“ヒーロー vs ヴィラン”のコミカルな世界観により、観客はみんな爆笑の連続だった!!