INVIOLATE/スティーヴ・ヴァイ:7弦ギターの魔術師、10年ぶりのオリジナル・アルバム

INVIOLATE/スティーヴ・ヴァイ:7弦ギターの魔術師、10年ぶりのオリジナル・アルバム
アーティスト名STEVE VAI
スティーヴ・ヴァイ
アルバム名 INVIOLATE
インヴァイオレット

CD | ソニー・ミュージック ジャパンインターナショナル | 2022年1月26日発売

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ロック・ギター界のデヴィッド・カッパーフィールドとでも形容したくなる7弦ギターの魔術師が、オリジナル・アルバムとしては実に10年ぶりとなる新作を完成させた。コロナ禍に入り、右肩と左親指を負傷、その手術を乗り越えての作品だが、そんな怪我の影響など微塵も感じさせないヴァイ節に溢れた革新的な演奏の数々が、ギター・インスト全10曲の中に凝縮されている。アートワークに写る猛獣のようなシェイプのギターが印象的だが、この“The Hydra”と呼ばれるカスタム・ギターはオープニング「Teeth Of The Hydra」で使用されており、その獰猛さの中に潜む繊細な音色によって緊張感のある幕開けを演出。一昨年発表済みの「Candlepower」では、指の第一関節のみを他の指から独立させて、同時に複数の弦を反対方向にベンドさせる“ジョイント・シフティング”なる超絶技が披露されており、彼としては珍しいフィンガー・スタイルによる浮遊感のある独創的なメロディーが楽しめる。雪崩のように迫り来るアップ・テンポなリズムが軽快な「Avalancha 」はライヴ映え間違いなしのヘドバン・ナンバー。「Knappsack」は、右肩負傷時になんと左手のみを使って書き上げた曲で、ほぼハンマリング、プリング双方のみで完結。弦のミュートもアーミングもすべて左手のみという恐るべきパフォーマンスは、ネット上の動画で確認可能だ。齢60を過ぎても進化し続ける奇才が放つ、強烈な奇作である。

【文】Masa Eto