昨年9月、メロディック・メタル・バンド:ノーステイルを率いて再来日を果たした日本大好きシュレッダー:ビル・ハドソンのインタビューをお届けしよう!
ノーステイルは当初、2023年2月にエドゥ・ファラスキと共に来日する予定だったが、ビザ発給のトラブルにより公演延期を余儀なくされ、それから半年以上経ってようやく実現の運びとなったのだった。9月17日の東京、翌18日の大阪での通常ライヴに加えて、名古屋では同19日にスペシャルなアコースティック・セットが披露された。
バンド・ラインナップが2019年の前回来日時から…いや、セカンド・アルバム『ETERNAL FLAME』(2021年)とも大きく違っていたのには驚いたが、ライヴは大盛況。会場を埋めたギター・フリークは、みんなビルの流麗なシュレッド攻勢にノックアウトされまくったことだろう。
3公演を終えた翌日──9月20日にビルは都内でギター・クリニックも実施。本誌取材はその直前に行なわれた。果たして、メンバー異動の真相やいかに? また、意外なカヴァーも飛び出したセットリストの裏話、ビルご自慢のカスタム・ギターにも迫ったインタビューに加えて、エドゥのバンドも含めたライヴ・フォト・ギャラリーもお楽しみあれ〜!!
俺の他に今、誰がノーステイルのメンバーなのか…?
YG:今回の来日ツアーはいかがでしたか?
ビル・ハドソン(以下BH):前回初来日公演よりもずっとずっと良かったよ! さらにファンが増えたという手応えが感じられたんだ。みんな曲を知ってくれていて、名古屋でやったアコースティック・ギグでも楽曲フレーズや歌メロを覚えてくれているのがよく分かった。俺にとってはこれが、セラドールでの“LOUD PARK 07”出演含め3度目の日本だけど、間違いなく今回が一番だね!
元々は2月に来るハズだったから、延期になった…と聞かされた時はめちゃくちゃガッカリしたんだ。最悪だと思った。来日ビザで何かトラブルがあったそうだけど、こういうことって今後も起きるのかな…と思うと不安になる。でも、それを乗り越えたからこその特別なショウになった…とも言えるね!
YG:来日メンバーの顔触れが『ETERNAL FLAME』リリース時とは大きく違っていましたが、一体どんな経緯で? まずはジミー・ピッツ(key)の不在から…というか、キーボーディストの帯同自体がなかったワケですが?
BH:ジミーはフルタイムのミュージシャンではなくて、昼間の仕事を持っているんだ。それで、今回はスケジュール的に無理だった。オフが取れなくてさ。そこでキーボード・パートはバック・トラックを使うことにした。つまり、彼の素晴らしいプレイはみんな耳にすることが出来ていたんだよ。
YG:ベースシトの交代については?
BH:オリジナル・ベーシストのミカエル・プラーネフェルトは、もうバンドを離れたんだ。自分には向いていない…と思ったそうだ。あと、あまりツアーをやりたくない…とも言っていたな。彼には家庭があって、家族を大事にしたいからだろう。それで今回、ティレン・フドラップを連れてきた。以前、ヴィシャス・ルーマーズとかパラドックスなど、色々なバンドでプレイしてきたヤツだ。
YG:あなたも在籍していたU.D.O.のメンバーだったこともありましたね?
BH:そう。実は、俺がU.D.O.を脱退したあと、彼と初めて会ったんだよ。ティレンについては面白い話があって──あれはノーステイルがスウェーデンで初めてショウをやった時のことだ。
YG:2019年の“SABATON OPEN AIR”ですね?
BH:そうそう。あの時、フェスのヘッドライナーを務めたのがU.D.O.で、俺はその半年前に脱退していたんだけど、彼等とは友達だから、バンドの面々と会い、そこで初めてティレンと話した。すぐに仲良くなったよ。今回もごく短期間で曲を覚えてくれて、まさに完璧だったんだ。素晴らしいプレイヤーだね! その後、彼はDOROのサポート・メンバーにも抜擢されたから、その際も彼とは一緒にプレイした。ドイツとスウェーデンでね。
YG:ドラマーのパトリック(ヨハンソン)も日本に来られなかったのにはビックリしました…!
BH:彼はとにかく忙しい。正直言って、俺も今彼が何をしているのか分からないぐらいだ(苦笑)。でも、彼は脱退したのではなく今後また一緒にライヴをやってくれるハズさ。そして今回は、ジーン・ガルディナリを起用することになった。彼はエドゥのバンドでも叩いていたことがあって、本番ギリギリになって頼んでみたところ、素晴らしい仕事をしてくれたよ。セットリストを2日間で覚えてくれて、俺達を助けてくれたんだ。これ以上ないぐらい嬉しかったな。それで結果的に、来日メンバーの3/4がブラジル人になったのさ。
YG:1曲だけラファエルというドラマーが叩きましたね?
BH:うん。ラファエル・サイーニだ。彼は気の合う仲間で、よく一緒につるんでいる。当初は2曲やってもらうつもりだったけど、最終的に1曲だけになったんだ。実は、今年チェコで行なわれたフェス“MASTERS OF ROCK”に出演した際も、彼に叩いてもらったんだよ。ラファエルもブラジル出身だけどずっとアメリカに住んでいて、長いキャリアの中で色々なバンドとプレイしてきた。彼は今イタリアを拠点にしているから、今後もヨーロッパでプレイする時はまた出番があるかもしれない。
実はさ…自分でもあまり把握しきれていないんだけど(苦笑)、今このバンドは転換期にあるようだ。俺の他に誰がメンバーなのか、ちょっと曖昧なところがあって…。とにかく、状況に応じて様々なミュージシャンを起用しているところだよ。
YG:(2023年)7月に“MASTERS OF ROCK”へ出演した時は、ジミーも一緒だったのですか?
BH:いや、彼はあの時もいなかった。今回と同じ理由だ。そして、ティレンは“MASTERS OF ROCK”が初参加で、日本がその次ということになる。そういえば、今年(2023年)は2月末から3月中旬にかけて、ブラッドバウンドとヨーロッパ・ツアーを行なったんだけど、その時もジミーはいなかった。ツアーに出る時間が取れなくてさ。でもあの頃はまだミカエルもいたし、パトリックも一緒だったよ。他にフィンランドのアリオンとか、スウェーデンのタングステンと一緒に廻って、全13公演を行なったんだ。
YG:日本公演に向けてのリハーサルは充分に出来ていましたか?
BH:いや…(苦笑)。俺個人も凄く忙しかったからね。ここのところ、ずっとツアーに出ていてさ。さっき話したノーステイルのヨーロッパ・ツアーのあとには、I AM MORBIDやDOROのツアーもあったし。そんな調子だから、“MASTERS OF ROCK”に向けてのリハは全く行なえなかった。やれても、俺とパトリックのみという感じだったな。あと、ラファエルとも3日間リハをやった。DOROのツアーのあと、4日間オフがあったんで、ラファエルが経営するイタリアはカリャリの音楽学校でね。イタリアではギター・クリニックもやったよ。4日をフルで使い、色々とねじ込んだ感じさ。
それにしても、みんな──ラファエル、ジーン、ティレン…と、全員がよくやってくれたよ。それぞれ自宅で曲を覚えて準備してきてくれて、そのままステージに上がってプレイするような感じだったのに。俺は自分で書いた曲だからイイけど、彼等にしてみれば頭がおかしくなりそうな状況だったと思う。いや…ホント、彼等には圧倒されたね。俺自身が一番驚いているかもしれない(笑)。でも俺達はずっとそうやってきたし、今ではそれが自然なことになってさえいる。
ティレンについては、そういうことが出来るヤツだから選ばれた…というのもある。俺は彼がやってきたことを、U.D.O.やら何やら…よ〜く知っているからな。バンドでツアーに出ていない時は、母国スロベニアでメインストリームの音楽にも関わっているそうだ。本人としてはあまり言いたくないような仕事もやってきたようだけど、彼は自国の音楽シーンに多大な貢献をしているのさ。