ピックアップの出力バランス調整にチャレンジ!! YG TUNE-UP FACTORY 第6回 メンテナンス編

ピックアップの出力バランス調整にチャレンジ!! YG TUNE-UP FACTORY 第6回 メンテナンス編

今回はセットアップ作業の第4弾。弦高を正しく合わせたら、今度は各ピックアップの音量(出力)を確認し、必要なら高さを調整してバランスを整えます。ピックアップのポジションを切り替えると音量が大きく変わってしまう…とお悩みの方は、これを読めばきっと解決!

ヴォリューム回路は無関係

ギターやベースのピックアップが搭載されるポジションはブリッジ側、ネック側、その中間のミドルという3箇所が一般的ですが、どのポジションを使用するかは専用のスイッチ——ピックアップ・セレクターで切り替えます。どのポジションに切り替えてもアンプから出る均等な音量が出るように整えることを、“出力バランス調整”といいます。

このバランスを気にしない人がいるようですが、ピックアップを切り替えるたびに音が大きくなったり小さくなったり…ということがあると、バンド演奏時にメンバー間の音のバランス合わせが難しくなります。特に自分でピックアップを交換した時は要注意です。専門店に依頼すれば出力バランスも整えてくれますが、個人の方の場合は交換できた時点で満足してしまい、他のピックアップとのバランスを確認しないまま作業を終えてしまうことも少なくないようです。大事なことなので、是非合わせることをおすすめします。

音量バランスに関係しているのはヴォリューム回路ではなく、弦とピックアップ間の距離です。つまりピックアップを弦に近づければ音は大きくなり、遠ざければ音は逆に小さくなります(図A)。これを調整するには、(ヴォリューム。ノブを動かさずに)アンプからの出音を確認しながら、ピックアップの高さを変えて弦との距離を変えていきます。ギターに複数搭載されるピックアップの数は2基、3基などがあり、ネック、ミドル(あれば)、ブリッジすべてのポジションで音量を聴き比べます。

しかし音量を測るための特別な計測器があるわけではないので、聴感が頼りになります。また、スタジオとライヴ会場では聴こえ方が変わるため、その都度調整が必要なこともあります。

図A ピックアップと弦の距離
図A ピックアップと弦の距離

次に知っていただきたいのは、弦の振幅が最も大きい弦長の中央部分は一番音量が大きくなるため、その付近に位置しているネック・ピックアップはリアよりも出音が大きくなる傾向があるということです(図B)。そのため、同一仕様のモデルを複数の場所に搭載する場合、ネック・ピックアップはブリッジ・ピックアップより弦から遠ざける必要があります。なお近年は、初めからネック用に出力が調整され、同じ型番の中でポジションごとに専用モデルが用意されているものもあります。

図B ネック・ピックアップの音が大きくなる理由
図B ネック・ピックアップの音が大きくなる理由

ピックアップを近づけられる距離には限界あり

ピックアップと弦の理想的な距離は2mmです。測り方は、1弦または6弦の最終フレットを指で押さえた状態で、各ピックアップのポールピースから弦の下までを定規で測ります。前回の弦高の時のように、端から0mmで始まっている定規を使って下さい。

弦の下からポールピースまでの距離を測る
弦の下からポールピースまでの距離を測る

マウント方式別・ピックアップの高さ調整

ピックアップを上下に動かすには、両側を固定している2本のネジをドライバーで回します(図C)。ピックガードやエスカッションに装着(マウント)されたピックアップの場合は、時計回りに回すと高さが上昇し、逆に回すと下降します。

一方、ピックアップがボディーにダイレクト・マウントされているピックアップの場合は、反時計回りに回すと高さが上昇し、逆に回すと下降します。ピックアップのキャビティ内にある両側のネジを回していきます。

図C ピックアップのネジを回す向き
図C ピックアップのネジを回す向き
ピックガード・マウントの高さ調整
ピックガード・マウントの高さ調整
エスカッション・マウントの高さ調整
エスカッション・マウントの高さ調整
ダイレクト・マウントの高さ調整
ダイレクト・マウントの高さ調整

では、実際の調整に入ります。まず、1弦か6弦どちらでも良いので“最終フレットを押弦した状態”でピックアップを上昇させ、弦に近づけます。定規を当てて、弦までの距離が2mmになったらストップ!(図D) これが基準値となります。ピックアップが傾かないよう、左右のネジをバランス良く回して下さい。作業はブリッジ(1)、次にネック(2)、最後にミドル(3)の順です。毎回、各ピックアップの距離を測りながら進めましょう。

図D 弦との距離を基準値に合わせる
図D 弦との距離を基準値に合わせる

図Dのようにすべてのピックアップを2mmの距離に調整したら、ギターをアンプにつないで実際に音量を聴いてみます。ブリッジ・ピックアップよりも他のピックアップの音が大きい場合は、そのピックアップを下げて音量を合わせます。それぞれのピックアップが専用設計になったセットの場合、弦から同じ距離に調整した結果ブリッジ・ピックアップの方が音が大きくなる…ということも起こり得ますので、その場合はネック・ピックアップの距離を2mm以下に近づけるのではなく、ブリッジ・ピックアップを下げて調整した方が良いでしょう。

アンプで音を確認している写真
アンプにつなぎ、ピックアップごとの出力音量を確認する

終わりに

距離が近いほど音量は上がりますが、例えばもともとパワフルなピックアップを近づけ過ぎると、磁力が弦に影響してサステインが切れたり、ハウリングなどのトラブルが起こったりします。YG読者の皆さんはパワフルなサウンドを好む人が多いと思いますが…上げ過ぎには注意しましょう(笑)。