6曲で十分お腹いっぱいになれる密度
YG:6曲目「FAKE」。これは、クラシック・ロック寄りですが、全体的にはKNOCK OUT MONKEYらしい王道曲ですね。
dEnkA:僕らは何でも入れたがるというか、色んなことをしたがるところがあるんですよね。ご飯でいうと「おかずがたくさん入ってないと嫌だ」みたいな(笑)。でもこの曲はアルバムの中でも一番まとまっているというか、分かりやすいですよね。
YG:ただギターのフレーズを見てみると、サビのところなんかはすごく凝ってますよね。パワー・コードを弾いているパート、高いコードを弾いているパート、単音のメロディーを弾いているパートがあり、それらが急に同じメロディーを奏でる瞬間もあって、エアポケットに入ったような感覚というか。
dEnkA:カウンター的なパートですよね、あそこはすごく考えました。この曲はそういう構築をするところがいくつもありましたね。2番のAメロなんか、いきなりCharさんみたいなカッティングが出て来たり(笑)。
YG:あれはCharさんのイメージなんですね(笑)。
dEnkA:あそこもやっぱり、1番とは違うことをやった方がいいと思って。メインのギブソン“Les Paul Axcess”をコイル・タップした音で録っているんですけど、ちょっとストラト弾きみたいな感じですよね。
YG:対してソロ・パートは、’80年代テクニカル・ギターのイメージですよね。
dEnkA:そうです。曲に沿い過ぎるのも良くないなと思って、ギタリストが勢いで弾いている感じを出そうと工夫しました。綺麗すぎず、それでいて勢いを殺さない…みたいな。
YG:確かに前半に出て来るスウィープ系のフレーズなんかは、リズムから敢えて外すパターン。
dEnkA:ダウンが速くて、アップが遅めなんですよ。それがちょうど山なりになって、良い感じに聴こえるという。ちなみに最後のロング・トーンは、1弦22フレットをチョーキングしながらアーム・アップもしています。あそこは「24フレットまであればいいのに…」と思いました(笑)。
YG:では機材に関して。メインの“Les Paul Axcess”は、わりと長い間使っていますよね?
dEnkA:実はけっこう改造したりしてます。まず換えたのがピックアップでしたね。ギブソン純正の“498T”の“496R”から、ベア・ナックルの“VHII Humbucker”にしました。さらに配線材やコンデンサーも替え、フロイドローズ・トレモロの部品をステレンスやチタンにしたり。
YG:かなりマニアックですね! メインのアンプは?
dEnkA:バッキングは主にメサブギーの“Dual Rectifier”を使いました。リード系はEVHの“5150 III”ですね。
YG:ライヴではケンパー“Profiling Amplifier”を使っていますが、レコーディングでは不使用ですか?
dEnkA:ウワモノならケンパーでもいいと思うんですけど、バッキングになるとちょっと綺麗過ぎるんですよね。やっぱり真空管アンプならではの、「録り直しても常に同じ音では録れないよ」っていう感じの方が、全体的に生きているように聴こえるというか。
YG:なるほど。ペダルボードはどうですか?
dEnkA:最近はあまりいじってないんですよ。以前はたたみ一畳分くらいの大きさでしたけど、だいぶ小さくなりました。ライヴの機材をケンパーにしたタイミングで、エフェクトをデジタル化したので。アナログはかなり好きだったエフェクターだけレコーディング用に残して、ほぼ省きました。
YG:あそこまで大きくしてしまうのは、ある意味趣味の領域ですもんね。
dEnkA:まあ、エコではないですよね(笑)。
YG:さて、作品には「RIOT」「One world」「旅人」「Greed」という、4曲のライヴ・テイクも入っていますよね。これらはすべて同じ日のテイクですか?
dEnkA:そうです。“7 CITIES”ツアーの最終日で(2018年5月13日)、会場は渋谷のTSUTAYA O-WESTですね。
YG:KNOCK OUT MONKEYの場合、特にギターはスタジオ・ヴァージョンと全然違っているので、ライヴ・テイクを収録する意味がありますよね。
dEnkA:そうですね。ちょっとした音源は鳴らしますけど、いわゆる同期音源は一切使いませんし。
YG:アルバムでは重ねまくっていた曲を、ライヴ向けにアレンジし直すわけですよね。その作業にはどのくらいの時間を掛けるんですか?
dEnkA:僕の場合はもう慣れてきているので、レコーディング中に「ライヴではここのパートを弾くんだろうな」というのが、すぐに頭の中でできちゃいますね。
YG:なるほど。ちなみに例えばガンガン歪んだ音でソロを弾いた後、いきなりクリーンなアルペジオを弾く瞬間なんかもたくさんありますよね。あれっておそらく、ライヴをやっていて一番大変なところじゃないかと思うんですが。
dEnkA:そうです、一番嫌な瞬間です。やっぱりソロを弾いた後は、僕もテンションが上がっているじゃないですか。なのに、なんで静かにならなあかんねん…みたいな(笑)。
YG:上げたテンションを無理矢理戻すわけですもんね。
dEnkA:うちのバンドはソロ後にすぐ静かになって歌へ入るパターンが多いんですけど、クリーン系はたいてい僕が弾くんですよ。大分慣れましたけど、当初は大変でした。
YG:そういう細かいところを、ファンの方にもきっちり聴いてほしいなと思いました。ちゃんと職人芸が生きているところを。
dEnkA:そう、実は一番分かってほしいところなんです(笑)。まあ普通、お客さんはそんなところまで見ないですけどね。同業者くらいですよ、そこに突っ込むのは。
YG:では最後に、読者の方々へひとこと。
dEnkA:今回のミニ・アルバムは1曲1曲のパワーがすごくて、スタジオ・テイクは6曲だけですけど、十分にお腹いっぱいになれる密度だと思います。これを聴いてぜひライヴにも遊びに来てください!
INFO
CD | Being | 2018年9月19日発売