10〜12月:サーカス・マキシマス、アンヴィル、ティア…2020年は?
斎藤:さて、ようやく10月まできました。我々が観ていない来日バンドは割愛させてもらっていますが、それでも凄い数ですね〜。では、トゥリッリ/リオーネ・ラプソディーから。
奥村:お客さんが少な過ぎてビビりました(苦笑)。まさか、“〜オブ・ファイア”よりも少ないとは…。
斎藤:6月来日のラプソディー・オブ・ファイアも少なかったようですが、結果的にお客さんを食い合ったのでしょうか?
奥村:それもあると思うけど、やっぱりアルバム『ZERO GRAVITY (REBIRTH AND EVOLUTION)』の方向性が、ラプソ・ファンの思いと乖離していたのが大きかったのかも。個人的には、ルカ(トゥリッリ:g)のプログレ趣味が出ていて、かなり好みだったのですが…。
斎藤:確かに、あのアルバムに馴染めなかった人は多かったのでは? “REUNION”と謳って、久々にルカとファビオ(リオーネ:vo)が一緒に来日した時は、ルカのヒーローっぷりに釘付けになりました。
奥村:ルカは今回もガンガン動き回って、大仰なポーズでソロを執って、ギター・ヒーロー然としていましたよ。昔は棒立ち…とは言わないものの、通称“ルカソディー”──ルカ・トウリッリズ・ラプソディーを始めて以降、急にアクティヴになったという印象で、今やすっかりその線で定着しましたね。
斎藤:このトゥリッリ/リオーネ〜も、出音が小さかったんですよね?
奥村:そうそう。〜オブ・ファイアと同じく…でした。あと、何故か「Emerald Sword」をやらなくて。
Yama:“エメソ”なかったんですか!
奥村:初日はやらなくて、翌日はメドレーみたいな感じでやったのかな? もしかして、ルカもファビオも飽き飽きしてたんでしょうか?(苦笑)
斎藤:そして、10月はフィドラーズ・グリーンとイン・エクストレモのカップリング来日も、一部マニアの間で騒然となりました。
Yama:まさに奇跡の来日でしたねぇ…。
斎藤:初めてそのアナウンスがあった時、正直「えっ…?」とたじろぎました(笑)。
Yama:イン・エクストレモはやはり、あのハープが圧巻ですね。
奥村:ハープというと、麗しい女性が弾くイメージですけど、何故かおデブのゴツいオッサン(ドクトル・ピモンテ)が弾いていて。
Yama:彼も含めて、メンバーの殆どが複数の楽器(古楽器含む)を担当してましたけど、笛(シャルマイ)に持ち替える時、ハープをかなり慎重に置く姿に萌えました(笑)。
奥村:繊細な楽器ですからね〜。ただ、古楽器に関しては、フル装備じゃなかったのが残念で。そもそもバグパイプがひとつ足りなかったし、ダルシマーとかトロンバ・マリーナはともかく、ハーディ・ガーディとニッケルハルパを持ってきてなかったのも…。
Yama:まぁ、ハープを持ってきてくれただけでも。
奥村:確かに。それに、ダルシマーのパートをハープに置き換えたりして、レアなヴァージョンが観られた…というのもありました。でも、バグパイプ3本揃い踏みは観たかったな〜。
Yama:ただ、あの(小会場の)距離で彼等の演奏を細かいところまでジックリ観られたこと自体、相当レアな機会だったんだなぁとは思います。
奥村:ギター誌的な視点では、ファン・ランゲことゼバスティアン(g)が、やたら太い音でザクザク鳴らしてたのも特筆ポイントかと。
斎藤:どんなギターを使ってました?
奥村:レスポールだったと思うんですけど、もしかしたら、ピックアップを交換してたのかも。以前はESPの“Eclipse”を弾いていたように記憶しています。
斎藤:フィドラーズ・グリーンはどうでしたか?
奥村:相変わらず、観客の乗せ方がウマいですね〜。イン・エクストレモが予想以上に盛り上がって、どう勝負するのか…と思ったら、いつも通りの“fun”なノリで、グイグイ観客を惹き込んでいきました。ギターのパット(プルツィヴァラ)は、全くもってテク云々というタイプではないですけど、パンキッシュなカッティングとか実に見事なんですよ。
Yama:フィドラーは、前回初来日時もメチャクチャ盛り上がって、基本アイリッシュ・パンクのバンドですが、対バン目当てで来場したメタル・ファンにも大好評でした。前回ハマって、今回も来てくれたお客さんが多かったみたいです。
奥村:集客的には最高とは言えなかったようですが、流石に両バンドとも再来日は難しい?
Yama:それは何とも…。少なくともバンドは、「また(日本に)行く!」と張り切ってましたが。
斎藤:続いて、サーカス・マキシマス。
奥村:これは斎藤クンも、ヤマさんも観てますよね?
Yama:伺いました。驚くほどの人気でしたね〜。
奥村:東京公演は2日間ともソールドアウト。
斎藤:ラウパで来た時も「結構、人気あるな」と思いましたが、正直ここまでとは…。
奥村:3rd(’12年『NINE』)の全曲再現をやってましたが、メンバー全員がスキル・アップしていて、バンドとしてのまとまりも格段に増してたかと。
斎藤:ギターのマッツ(ハウゲン)も、以前に増して涼しい顔で技巧パートを弾きコナしてました。
奥村:ドリーム・シアター的なインスト・パートですよね? 確かに、余裕ありました。
斎藤:かなり集中して(マッツを)観ていたのですが、彼の成長が一番印象的でしたね。
いよいよ11月です。まずは、“JAPANESE ASSAULT FEST”。ちょうど本誌の校了と“モーターヘッド本”(『極悪列伝』)の取材などで、2日間とも行けませんでした…。エキサイターとかクリシクスとか、自分好みのバンドばかりだったんですが。
奥村:エキサイターは、若いギタリストが新加入してました。
斎藤:あのバンドは、ジョン・リッチ(前g)もダン・ビーラー(dr, vo)も出たり入ったりで、なかなか一緒にやれない運命にありますね…。集まってはまた別れる…の繰り返しで。
奥村:前回来日時はオリジナルの3人が揃ってたのに。でも、新たに迎えられたダニエル・ディケイが、スラッシュ・メタルの伝統に対するリスペクトを感じさせて、いいギター弾いてました。再現度も高かったし。
斎藤:ダンは前回来日時、絶好調だったらしいですが、今回はどうでしたか?
奥村:正直、ドラミングにはちょっと衰えを感じさせることも…。ただ、気合いは凄かった。漢気がビシビシ伝わってきたし。
斎藤:ゼントリックスは初来日。「Balance Of Power」を2曲目にプレイしたとか。最初の方にやるのはイイですね。
奥村:2日目のトリを務めましたが、地味ながら妙に貫禄ありました。殆ど動きがないし、かなり淡々と演奏してたけど、どっしり重みがあったというか。
斎藤:ガマ・ボムはどうでした? ミュニシパル・ウェイストみたいなライヴをやると勝手に想像していたのですが?
奥村:意外に地味でした。大人しい…と言ってもイイぐらい。それとは対照的に、インサニティ・アラートとクリシクスはバンドもオーディエンスも大暴れ。インサニティ〜はおバカなノリがいかにもクロスオーヴァー系で、大ウケしてました。クリシクスは日本のアニメが好きなようで、『ドラゴンボール』のコスプレをやっている観客がいたりもして。
斎藤:クリシクスは「観ておいた方がイイよ」と、やたら言われたんですが──う〜ん、観たかった…。
続いてはソイルワーク。この時も行けませんでした…。
奥村:3月来日のハズが、延期になってたんですよね?
Yama:仕切り直しの11月も、直前のシンガポール公演がキャンセルになって、ちょっとした騒ぎになりましたが、ちゃんと来てくれました。
奥村:残念ながら、集客がちょっと寂しかったですね…。
Yama:日本では人気が急降下していきましたから。新譜(『VERKLIGHETEN』)とかも、曲自体はイイと思うんですけど。
奥村:日本で人気が高かった初期曲が、もう数曲しか演奏されていないのも、やはり客足に響きましたかね?
斎藤:今のセットの中心は、大体この10年ぐらいの曲でしょうか。
奥村:約10年前にリリースされたのが『THE PANIC BROADCAST』(’09年)で、初期からのファンの中には、それすら“最近のアルバム”という感覚なのかも。まぁ、今のメンバーにしてみれば、メンツがまるで違う初期レパートリーは、かなり古いという認識なんでしょうけど。一方、古くからのファンは「ビョーン(ストリッド:vo)以外に、いま誰が残ってんの?」状態では?
Yama:でも、ビョーンの存在感は勿論ですが、他のメンバーも光ってましたよ。
奥村:デイヴィッド・アンダーソン(g)の巧さには、何度も釘付けになりました。相棒のシルヴァン・コードレーもそれなりなんですが、デイヴィッドは安定感がズバ抜けていて。とはいえ、改めて彼を「巧いな〜!」と思ったのは、ザ・ナイト・フライト・オーケストラのショウを観た時だったんですけど。
斎藤:次はアンヴィル。
奥村:オッチャン達は元気モリモリでした。映画バブルもすっかりハジけて、集客もそこそこながら、しぶとさ世界最強!
斎藤:相変わらずバカ炸裂──褒めてます!(笑)──というか…。
奥村:リップス(g,vo)もロブ(ライナー:dr)も、2人とも還暦越えてるのに、ちゃんとバカになれるのが凄い。根強いファンも多いですね〜。
斎藤:ただセトリは、前半でキメ曲を殆どやっちゃったので、その後は大丈夫なのか…と心配になりました(苦笑)。
奥村:リップスは最近、機材を替えた? 相変わらず、セミ・ホロウのギターを使ってましたね?
斎藤:多分、ギターはOKTOBERで、フェンダーのアンプを積んでいたので、機材に変更はなかったかと。
奥村:少なくともギターは’80年代と違っているのに、音が変わりませんよね?
斎藤:確かに。プレイ自体は、前よりさらにメチャクチャになってたけど(苦笑)、出音は前よりしっかりしていた感じがあって、不思議でした。
11月はまだまだあります。カルマは3度目の来日でしたね?
Yama:そうです。ただ、前回来日が去年(’18年)の11月で、あまり期間が空いていないので、マネージャーと「何か特別なことをやろう」と話し合って、それで2公演のうち初日は、初期3作からの曲のみプレイすることになったんです。
奥村:彼等も初来日の時は奇跡と言われたのに、それ以降、コンスタントに来日しているのが凄い。しかも、今回も集客は両日ともバッチリで。
斎藤:僕は初日を観て、初期曲を堪能したんですけど、それ以上に──あれだけの名曲が並ぶ中で、常にしょうもないMCが挟まるというギャップを堪能しました(笑)。
奥村:今回、またアンティ(コッコ:g)が来日しませんでしたね?
Yama:その件は、ビザ申請の時点で判明しました。
奥村:代役で来たのはハリ・フテネンという、よく知らないギタリストでしたが、なかなかイイ仕事してましたね。
斎藤:「前からいた人だっけ?」と思うぐらい上手かったです。
奥村:単純に演奏スキルもそうですけど、カルマのことをよく分かってるのも良かった。初来日時のヘルパーだったミッコ(サロヴァーラ)は、ほぼ全編アドリブで通してたので。
斎藤:キャンドルマスも11月来日ですね。ラウパ(“LOUD PARK 16”出演)を見逃したので、今回は死ぬ気で行きました。
奥村:これまた満員でしたね〜。キャンドルマスといえば、未だメサイア(マーコリン:前vo)のイメージが強い日本で、ヨハン(レングクヴィスト)が復帰して初の単独公演を。
斎藤:マッペ(マッツ・ビョルクマン:g)が神でした。
奥村:そうそう。リズム・ギターというか、文字通り“リフが要”だと痛感させられました。リード担当のサウスポー:ラーズ・ヨハンソンはどうでした? 昔ながらの北欧らしいギタリストとの印象でしたが。
斎藤:あれだけきっちりリードを弾いてくれてたのに申し訳ないんですが、どうしてもリフとバッキングに耳が…。
奥村:確かに(笑)。ヴォーカルのヨハンは、メサイア期の曲も思ったほど違和感なくて、これはこれで大アリと思いました。そもそもKeyが違ってたのに。
斎藤:いや〜、堪能しました。
で、12月は他にも色々と来日していましたが、ここでは“PAGAN METAL HORDE VOL.4”でおしまいです。PAGAN REIGN(ペイガン・レイン)、EINHERJER(アインヘリヤル)、ティアが来日しました。どのバンドも初来日ですね?
Yama:はい。公演発表と同時に、「無茶しやがって!」とあちこちから言われました(苦笑)。
斎藤:観に行けなかったのですが、ティアが気になってました…。
奥村:ティアは貫禄あったし、演奏もメチャ巧。ギターは7弦×2で、ペイガン・メタラーにしてはかなりテクニカル。変わったリズムの曲も多いし。
Yama:ティアの2人は、アンプどころかPAコンソールすら使わず。ドラム横に置いたステージボックスを経由させPCで処理、iPadでコントロールして、スピーカーに直送…という過去例のないセッティングでした。でも、デジタルの冷たい音ではなかったですね。
奥村:やっぱり、ギター・サウンドは弾き手の指が鍵になるんでしょう。
斎藤:PAGAN REIGNはどうでした?
奥村:ハッキリ言って、かなりアマバンっぽかったです。
Yama:PAGAN REIGNは、メインのギタリスト2人の本業が医者という変わり種でして。確かに、色々と素人臭かったけど、熱狂的マニアがついていて、みんな大喜び!
奥村:各種アコ楽器を操る女子メンバーが謎でしたね? 棒立ちでマンドリン、フルート、それから、ロシアの民族楽器:ジャレイカを演奏してましたが、正直かなり浮いていて…。
Yama:え〜と、彼女は来日公演終了後、クビになったそうです…。
奥村:あらら…そうなんですね。
Yama:確かにまぁ…色々浮いていたので。
奥村: EINHERJERはヴァイキングじゃなくて、すっかりロケンローのノリが強くなってましたね?
Yama:音源は昔から地味だったんですけど、かなりライヴ映えするバンドという印象を持ちました。
奥村:何か…随所からモーターヘッド愛が透けて見えてきて(笑)。ベース&ヴォーカルはリッケンバッカーを使ってたし。ロケンロー的な部分は、最近のサテリコンを思い出したりも。
Yama:リハではメタリカを弾いたりしてましたが。
斎藤:では、来日座談会は以上になりますが──最後にみなさんの今年のベスト・ライヴを。
Yama:私はイン・エクストレモですね。但し、それはファン目線での話で、呼び屋目線では、あの集客では絶対にベストではなかった…(苦笑)。
奥村:私もイン・エクストレモ来日には涙チョチョ切れましたけど──海外ライヴが反則じゃなければ、“Wacken Open Air”で観たサバトンですね。2つのステージを使って、新旧メンバーが同時に演奏…ってのにはド肝を抜かれました。
斎藤:僕は、パッと思い出したのはヨーロッパです。ジョン・ノーラムのギターが絶品過ぎて、正直泣きました。
奥村:ヨーロッパは3日連続公演でしたっけ?
斎藤:そうです。そのうち、セカンド(’84年『WINGS OF TOMORROW』)の曲が中心の日を観ました。あ〜でも、反則中の反則を言ってしまえば、“Wacken Open Air”のネット中継で観たサクソンかも…(笑)。
奥村:ところでYamaさん、来年(’20年)の興行でまだ未発表の来日アーティストを少し“お漏らし”してもらえませんか?
Yama:“SUOMI FEAST”を5/22〜24あたりに行なう予定です。今年はヴァラエティに富んだ組み合わせになる…予感?!(笑)
奥村:5月以降は?
Yama:しばらく事業中断となるので、メインでは動きませんが、請負興行を幾つか行なう可能性があります。その前に、1月のトワイライト・フォース、2〜3月のコルピクラーニもお楽しみに!
斎藤:コルピは共演のスカイクラッドが楽しみです!
奥村:スカイクラッド! 遂に来日ですね〜!!