「マッティとダンの力が合わさることで、バンドのプレイ全体に良い相乗効果が加わるんだ」ゼブラヘッド2019 全員インタビュー

「マッティとダンの力が合わさることで、バンドのプレイ全体に良い相乗効果が加わるんだ」ゼブラヘッド2019 全員インタビュー

今回の曲順決めは全員の意見がすぐに一致した

YG:ここまでの収録曲を追うと、1曲目はメタリックでヘヴィな「When Both Sides~」、2曲目はエレクトロな「I Won’t Let You Down」、そしてパンキッシュな「All My Friends Are Nobody」と、アレンジが大きく異なる曲が並んでいますが、曲順にはかなりこだわっているのでしょうか?

エド:毎回、大喧嘩して決めるんだ。

ダン:闘うのさ。

アリ:正直、みんな意見が違うから、怒ったり喧嘩したりで大変なんだよ。曲順を決める日は気が重い。ところが今回はちょっと違っていて…。打ち合わせ場所のレストランへ向かう途中、ずっと「嫌だなあ」と思い続けていたのに、全員が席に着いて話が始まると、過去のどのアルバムよりもスムーズに決まったんだ。

ベン:ただ曲を足していくだけで済んだよね。

アリ:今回は全員の意見がすぐに一致した。ビールを片手に昼食をとりながら、あっという間に完成だよ。

ダン:普段は作曲も含めた全行程の中でも、ここが1番議論が白熱するんだけどな。

ベン:それぞれに好みがあるから当然だけどね。今回なんか、25もの楽曲をマスタリングまでした状態で準備してあった。で、もともと10曲収録する予定だったのが11曲、12曲…と増えていって14曲になり、最終的に日本盤はボーナス・トラックを含めて15曲になった。それだけさ。

マッティ:俺は2枚組にすることに1票入れたけどね。

アリ:そうだったな(笑)。

YG:なるほど…。基本となる音楽性はありますが、こうして様々なジャンルがうまい具合に入り交じっているのがゼブラヘッドの魅力ですよね。

ダン:俺達はみんな、あらゆるタイプの音楽が大好きだからね。様々な音楽を聴いて、全部曲の中に入れてしまうんだ。何か限界に縛られてやっているわけでもない。「この曲はパンクでなきゃ」「こっちはメタルらしく」…そうじゃなく、ただ全部好きなようにプレイしているだけだよ。それがバンドを楽しくしてくれる。

YG:近年の音楽シーンでは、キャッチーなメロディーが出尽くしたように感じ、あえてテクニカルで複雑な音楽性になっていくバンドも珍しくありませんが、例えば「We’re Not Alright」のイントロ・フレーズは凄くシンプルでユニークですよね。

エド:その曲はかなり前からあったんだ。ギター・パートを何度もやり直し、みんなが気に入ったら今度はビートのパターンを30種類くらい試したよ。

ダン:他にもそういう曲があったな。どこかのリフを100パターンくらい考え直したり。ちょっと頑張ってみて「まだまだだな」と思ったら、一旦離れてまた戻って来ることにするんだ。だから作曲には時間がかかったけど。

YG:そういった試行錯誤から、既視感のないフレーズが出てくるんですね。音作りに関しても、例えば6曲目の「Chasing The Sun」もそうですが、歪みサウンド1つでも曲ごとにトーンをこまめに変えているようですが…?

ダン:ああ、全部の曲にそれぞれ異なるギター・トーンが欲しいんだよ。ヘヴィな曲ではアンプ・ヘッドにEVHの“5150 III”を使ったり、メサブギーの“Dual Rectifier”にしたり、メロウな曲ではマーシャルの“JMP”やフェンダー“Twin Reverb”を使ったり…ていう具合にね。

ダン:そうやって、クレイジーな歪みペダルをかけなくても音作りができるように、スタジオにはアンプを山ほど積んでいるんだ。

マッティ:1曲1曲が全然違うから、それぞれに異なるトーンが必要とされる。こんなにヴァラエティ豊かな音が得られるのは嬉しいね。そして、俺達2人のギター・サウンドも少し違ったものになった。

ダン:メロディーや曲のアレンジはもちろんだけど、トーンの質そのものも曲を構成する大事な要素だからね。

YG:「Party On The Dance Floor」のイントロはフラメンコを意識しているように感じましたが、その辺りはどうですか?

ダン:ああ、まさに俺はパコ・デ・ルシアが大好きでね。大学でクラシック・ギターを習っていたこともあって、いつかこっそり曲に忍び込ませられないかと思っていたんだ。プレイの方はなかなか難しいから苦労したよ…。

YG:ギター・ソロはテクニカルなツイン・リードですが、これはお2人で弾いているのでしょうか?

マッティ:いや、ハモりのパートはどちらも同じヤツがレコーディングしているよ。そっちの方が同じフィーリングで弾けると思ったからね。

YG:では、この曲はどちらが?

ダン:憶えてないなあ…。ハハハ!(笑)

ベン:(歌って聴かせる)

ダン:あ、多分俺だ。

YG:ライヴではどのような感じで再現するのでしょうか?

ダン:2人でハモるよ。だから一緒に練習するさ。パートを振り分ける際も、誰がどこを弾くかにはこだわっていない。「君がこっちを憶えたんなら、ぜひ弾いてくれ」という感じだね。

マッティ:俺が書いたソロでも、俺が他のパートで忙しい時や、ただ彼の方が上手く弾けるからというような理由でお任せするね。全然気にしてないよ。

YG:上手く協力し合っているんですね。

ダン:みんなが一緒にやっているのが楽しいんだよ。反発はしない。俺達はバンドであり、グループであり、チームだからね。

YG:お2人のギター・フレーズに、他のメンバーが「それはちょっとないんじゃない?」というような意見を出すことはあるのでしょうか?

ベン:あるある!

アリ:それはどのパートにも言える公平な話なんだ。俺が変なものを作って来ると「おい、それはないよ」と言われる(笑)。でも、そしたら「分かった、もう1回やるよ」ってなるだけだよ。

YG:そこで喧嘩に発展しないのは良いですね。

ベン:昔はあったけどね。でもそれは、自分で考えたものに慢心していたからだ。今はみんなの様子を見ていると、どんなプレイを聴かせれば彼らが笑顔になるのか、なぜ下を向いたままなのか…といったことが分かるようになった。

アリ:演奏しながらみんなの顔色を伺っては「ダメか…」と自分で気づくこともあるよね。

YG:日本語タイトルの「Ichi Ni San Shi」。日本を意識したロックやポップス寄りの曲かと思いきや、聴いてみるととてもヘヴィな曲で、このギャップが面白いですね。

ベン:タイトルは単に、アリの歌詞にそう書いてあったからだ。それが頭に残ったままだったので「これは曲名にするしかない」と思ったのさ。この曲のリフもやっぱり「ちょっとヘヴィ過ぎやしないか?」と問題になったんだよ。でも「いや、待て待て。全員がプレイしたらきっとゼブラヘッドの音楽になるはずだ」ということで、実際にやってみたら…1stアルバムの『ZEBRAHEAD』(’98年)に入っている「All I Need」みたいになったんだ。なんか懐かしかったね。内容は全然違うけどあれを彷彿させるんだよ。

YG:ラストはなんと、アイドル・グループ:E-Girlsのカヴァー曲「Follow Me」ですが、マッティの日本語ヴォーカルがとても上手ですね。

ベン:マッティ、よくやった!

マッティ:アリガトウゴザイマス。(小声で)歌詞の意味は全然わからないんだけどね…。

YG:(笑)。

ベン:俺達はずっと、英語に直した歌詞が出来るのを待っていたんだ。ところが最後になってマッティが「(日本語で)できる」と言った上、実際にやってくれたんだよ。

アリ:ヴォーカル・ブースに入って1人で練習してるのを部屋の外で待ちながら、俺達は内心「あーあ、誰かマッティにダメだって言ってやれよ」と思っていたんだ。それが見事に歌い出すものだから、こっちはお互いに顔を見合わせて「何これ、上手いじゃん!」。

マッティ:ヴォーカル・テイクとしては上手くいったと思うけど、今度はライヴで歌わなきゃならないんだろ? それを思うと改めて怖くなってきたよ…。

YG:コーラスはみなさんが参加したんですか?

ベン:“ウォーウォー♪”の所はみんなでやったよ。日本語かどうかなんて関係ないからね。

ダン:だからライヴでも、日本語で“ウォーウォー♪”って歌ってあげるよ!(笑)

YG:では、レコーディングで使ったギターを教えてください。

マッティ:俺が使ったのはEVH製のストライプ柄のヤツだ。ヴァン・ヘイレンが本当に大好きだし、音も凄く気に入っているよ。同じくEVHの“Wolfgang”も使ったよ。

ダン:俺はイエローの“Wolfgang”を使っているんだけど、本当に最高のギターだよ。あとは’72年製のレスポール・カスタムだな。

マッティ:フェンダーのストラトキャスターも使ってたよね?

ダン:ああ。USA製のやつだな。エフェクトに関しては、「Follow Me」のリフでデジテックの“Whammy”を使っている。フレーズのオクターヴが変わる箇所があるけど、あそこは可変域を1オクターヴ下から1オクターヴ上に設定して弾いたんだ。あとはモーリーのワウと、フィードバック音を得るためにフェルナンデスのサスティナーを搭載したギターを使ったり…。でも基本的にエフェクター周りはシンプルにしているな。

マッティ:音に太さを求めるために、バッキングの幾つかに“Big Muff”を使った所もあったね。クレイジーなエフェクトはワーミー・ペダルくらいかな。

YG:ライヴでも機材はシンプルにしているのでしょうか?

ダン:ああ、常にシンプルに務めているよ。俺がステージで使うペダルは、チューナーとディレイ、ワウ、ワーミー、ノイズ・サプレッサー。エフェクトをあれこれいじらなきゃいけないとなると、不具合が起きた時にショウの流れを壊す可能性があるからね。だから、機材はシンプルに留めるんだ。演奏にとにかく力を注ぎたいからね。

マッティ:俺はオーヴァードライヴやディストーションすらも置かないつもりだ!

YG:最後にファンや読者にメッセージをお願いします。

ダン:『BRAIN INVADERS』はとても楽しんで作ったアルバムだから、ぜひチェックしてもらえると嬉しいな。俺達はギターを弾くのが大好きだし、いろんなギター・スタイルに挑戦しているよ。YGはアメリカでも外国のものを扱っている書店で見かけることもあり、ギター誌の中でも大きな存在だ。だからフィーチュアされることはとても嬉しいよ。どうもありがとう。

マッティ:本当にありがとう。ギターを弾き続けて、ずっとクリエイティヴに頑張ろう。

ダン:TVゲームを辞めてギターを手に取るんだ。

アリ:いいね!(笑) 

マッティ:ゲームは架空のものだ。現実がいいよ!(笑) 

マッティ&ダン