ディジュリドゥが鳴り始めると、みんなステージに注目してくれる
YG:そして、ライク・ア・ストームの一番の個性というと、やはりディジュリドゥですね?
CB:祖父母がオーストラリアに住んでいて、休みの時に遊びに行くと、ストリート・ミュージシャンがディジュリドゥを吹いているのをよく見かけていたんだ。それで、あの響きが何か気になってね。とてもユニークで、同じ音を出す楽器は他にない。催眠効果もあるし、何かに取り憑かれるような雰囲気もある。ただ元々は、ライク・ア・ストームのためじゃなくて、個人的に面白いと思って独学で練習し始めたのさ。そういう意味では、他の楽器と同じだよ。でも──ある時、ディジュリドゥの演奏からライヴを始めたらカッコ良いんじゃないかという話になって…。誰も俺達のことを知らなくても、ディジュリドゥが鳴り始めると、みんな話をやめてステージに注目してくれる。それがそもそものキッカケで、やがて楽曲にも組み入れることになったんだ。その出来には大いに満足したよ。それに、こんなことは誰もやっていなかったから、それも良かった。少なくとも、俺達と同じやり方でプレイしているヤツらはいない。はるか昔に出来た楽器なのに、ヘヴィな音楽ととてもよく合っているのが凄いよね。
YG:ライヴでは実際に生で演奏していますか? ステージに並べられたディジュリドゥは、まるでオブジェかセットの一部という感じですが…?
CB:ちゃんと(生で)演奏しているよ! あのディジュリドゥにはピエゾ・ピックアップが付いていて、今日は4本のうち2本を吹いた。単独公演をやる時は、4本すべてを吹くんだ。それぞれチューニングが異なっていて、曲(のkey)に応じて使い分けるのさ。以前はヴォーカル・マイクに向かって吹くことで音を拾っていたけど、ある時から底面の辺りにマイクをくっつけるようになった。でも、ステージ上のモニター・スピーカーとの間でフィードバックを起こしてしまうんで、クラリネットやサキソフォンに使われるピエゾ・ピックアップを調達し、ディジュリドゥに取り付けることで、その問題を解決したのさ。
MB:それって、エレクトリック・ディジュリドゥだな!(笑)
CB:ああ。こんな使い方は他で見たことがないけど、とてもウマくいってるよ。
YG:あの4本は金属製なのですか?
CB:いや、PVCという樹脂製なんだ。勿論、伝統的なディジュリドゥは木製で、蜜蝋仕上げになっている。それだと、ツアーに持ち出したら、マウスピースが割れたり(蝋が)溶けたりすることがあって、他にも色々と調整が大変だからね。PVC製だと丈夫な上に、チューニングも安定するんで、それ以来、レコーディングでも使うようになったよ。サウンドも、よりブライトでシャープになり、ロック・バンドのアンサンブルでも音抜けが良い。木製も素晴らしい音がするけど、ちょっと鈍く柔らかい音だから、今は曲に合わせた演奏が完璧に行なえるPVC製を使っているんだ。
YG:しかし、かなり大きいのでツアーで運ぶのが大変そうですね?
CB:そう、確かにデカい。ちょうど、スウェーデンのショウから帰ってきたところなんだけど、ずっと巨大な袋を抱えていたよ(苦笑)。でも、それだけの価値はある。オーディエンスの殆どが、ディジュリドゥの生演奏を初めて体験する人ばかりだし、その機会を与えられるという点でも楽しいから。
MB:俺は今朝、演奏前にステージ袖から観客の様子を窺っていたんだけど──ステージの写真を撮っている人が沢山いた。ディジュリドゥと、あれを置くスタンド代わりにしているガイコツのオブジェの組み合わせに興味を持ってくれたのかな?
YG:ガイコツと一体化しているので、アレが楽器だと気付かない人もいるかもしれませんね?
CB:実はそれも狙いなんだ。ステージ・アートの一部としても機能させたい。観客にもそういう認識を持ってもらえたら最高だね。そして、俺がステージに出ていき、それらを手にとって実際に吹いてみせる──そこで本物のディジュリドゥだとみんな気付き、良い反応と共にこちらを観てくれる。そうやって、俺達のショウは構築されていくのさ。
バリトン・ギターのサイズ感がノーマルなんだ
YG:さて、ギターについても訊かないとですね。
MB:アレっ…? これって『ヤング・ディジュリドゥ』のインタビューじゃなかったっけ?(笑)
YG:(笑) それぞれ持参したギターを教えてください。
CB:アメリカにJericho Guitarsというハイエンド・ギター工房があって、そこで作ってもらったシグネチュア・モデルを使っているよ。“CB Raven”といって、俺のイニシャルを使った、自分でデザインしたモデルなんだ。これまでに沢山のギターを弾いてきて、見た目が気に入ったモノもあれば、弾き心地が好かったモノもあったけど、両方が合わさったモデルはなかった。そこで──Jericho Guitarsを興した友人と話してみたところ、「君がデザインをやってくれるなら、そのギターを販売するよ」と言ってくれてね。おかげで、パーツ1つ1つに至るまでデザインを手掛けることが出来て、最高のギターに仕上がった。どこに行く時もこのギターだけは忘れないよ!
YG:細かな仕様を教えてもらえますか?
CB:スペックについてはちゃんと憶えていないんだ。ああ〜、作ってくれた友人にシメられるな…(苦笑)。バリトンとレギュラーの2タイプがあって、俺が弾いているのはバリトン・スケール。チューニングを下げてもブルージーなリードが安定して弾けるように、可能な限り小さいサイズのバリトンを目指したよ。だから、ネックも極太じゃない。ボディーは1ピースで、EMG製のピックアップが搭載されていたと思う。
MB:俺はPRSギターズを使っている。ガキの頃から、俺が好きになったギタリストはみんなPRSを弾いていたから。それで、1stアルバムを作ることになった時も、是非PRSが弾きたいと思ったのさ。但し、俺のもバリトン・ギターだ。それ以前からPRSのレギュラー・スケールのモデルを弾いていて、そのすべてにフローティング状態のブリッジが搭載されていたんで、「フロイドローズ・トレモロ付きのバリトン・ギターを作ってくれたら、とっても嬉しいんだけど…」とPRSにずっと相談し続けていたんだ。数年かかったけど、ついに実現したよ。フロイドローズが搭載されているこのバリトン・ギターは、世界に3本しか存在しないんだぜ! 俺はそのうち2本を所有している。そして『CATACOMBS』のギター・パートは、今日ステージで弾いた白いモデルで弾いたんだ。普段なら、アルバムではパート毎に色んなギターを使い分けるけど、あのギターなら持ち替える必要がなくてさ。凄く音がイイから1本ですべてのパートを弾いてしまったよ。
YG:その白いバリトン・ギターのベースとなったモデルは?
MB:(元ステインドの)マイク・マショックのバリトン・ギターだね。それを基に、ピックアップを入れ替え、フロイドローズのトレモロ・ユニットを付けたのさ。ところが、最初に完成したギターは、PRSのカスタム・ショップで働いている俺の友人があまりに気に入ってしまい、自分のモノにしてしまってね…。俺がもらったのは2本目なんだ(苦笑)。その後に3本目も作ってくれたけど。
YG:ピックアップは何に入れ替えましたか?
MB:PRS製の“\m/”というメタル系のモデルだ。パッシヴ・タイプながら、とても出力が高い。
YG:それぞれの弦のゲージを教えてください。
MB:めちゃくちゃ太いよ。俺はここ2〜3年、色んなゲージを試してきた。ソロもガッツリ弾くし、低音でのリフも多い上、フロイドローズだから、弦のテンション感を適切にセッティングすることが大事なんだ。低音側が[.075]から始まるセットを使っているけど、バランスを取るために高音弦はわりと細めにしているよ。
CB:俺の低音弦は、さらに太くて[.084]からかな。
YG:まるでベースですね?
CB:そうそう(笑)。高音弦はマットと同じで細いけど、低音弦はチューニングを下げても分厚くてタイトな音が出せるようにしたかった。ドロップG♯にする時だってあるから、KORNより低いよ。でも、タイトなサウンドを目指したかった。ロー・チューニングでもメロディックかつリズミックなプレイが出来るようにね。
YG:お2人は7弦ギターにはあまり興味がないのでしょうか?
MB:いや──俺達はガキの頃からKORNの大ファンだし、他にも7弦ギターを使うバンドを沢山聴いてきたよ。でも、7弦を弾くとどうしても「弦が多いな〜」という感覚があってさ(苦笑)。それに俺達は、キャリアを積んでいくにしたがって、どんどん低くチューニングしていく方向に進んだ。よりヘヴィな音楽に魅了され、そうしたメタルに入れ込んでいった結果、(ギター・サウンドが)ベースよりもヘヴィになっていったのさ。でも、俺達は2人とも背が高くて手も大きいから、バリトン・ギターだって普通の6弦ギターのように馴染んで弾けるんだよ。
CB:ああ。低音弦のリフは問題ないし、ハイ・ポジションのリードだって楽々だ。
MB:ここ数年、色んなメーカーのバリトン・ギターを弾いてきたけど、どれも、まるでベースを弾いているような感覚だった。でも、PRSとJericho Guitarsのバリトン・モデルは、通常のギター並みに弾き易くてね。俺達にとって、今じゃこのサイズ感がもうノーマルなんだ。レスポールを持つと、ちょっとウクレレみたいな感じがしてくるね…!(笑)