ファズをかけた音を頭の中で思い描きながらアコで書いている
YG:今作は軽やかな曲調が多い一方、ファズをヘヴィに効かせたトーンや、ブルー・チアーやジミ・ヘンドリックスを思わせるようなフィードバック・サウンドは影を潜めていますね。もう、ああいう荒々しいギター・サウンドには飽きたということ? それとも今回のみの方向性?
GN:ヘヴィな音を使っているところもあるよ。「Kyoto」がそうだし、「Windmill」では、昔ながらのビッグなフィーダー・サウンドを効かせている。でも、キミが言いたいことは分かるよ。ギターに、いつもよりも、もっとメロディーがあるからね。コーラスが映えているし、クリーン・サウンドのギターが多い。でもさ、初期のフィーダーだって単にヘヴィなだけだったわけじゃない。「Insomnia」だってそこまでヘヴィじゃないよ。勘違いしないでほしいのは、僕はヘヴィなものが好きだってことだ! でも全部そうである必要はないし、やり過ぎないようにしたいんだ。
YG:ちなみにグラントが曲を書く時は、ギターを持って書いているんですか?
GN:ああ、大抵アコースティック・ギターで書いているよ。
YG:グラントと言えば“Jazzmaster”がメイン・ギターですが、あのエレクトリック・ギターを持って曲を書くということはないんですか?
GN:うん、“Jazzmaster”のこともある。スタジオに行ったら、小さなアンプにプラグインして使うけど、でも普段はアコだね。そして今回は、98%でアコを使った。今回のアルバムで言えば、7曲がリフ主体の曲になっているけど、ファズをかけた音を頭の中で思い描きながらアコで書いているんだよ。
YG:それをエレクトリックに変換するんですか?
GN:そう。だけど、ほとんどの曲はアコでデモまで録っているよ。歌も入れて、ドラム・マシンを入れてね。アコだと埋もれてしまうと言う人がいたけど、僕は昔からずっとアコで書いてきたんだ。「アコで成り立つ曲は大体上手くいく」というのが僕の中の通例なのさ。
YG:じゃあ、今作にはギター・リフから作っていった曲っていうのは…?
GN:う〜ん、あるかもしれないけど、やっぱり大抵は、アコースティック・ギターをかき鳴らして作っているからね。僕のアコはギブソンの古い“J-45”で、弦高がとても低いんで、エレクトリックのパートも問題なく弾けるんだよ。アコによってはとても弦高が高くて難しいよね。まあ、時にはファズなんかをかけた音を確かめるためにエレクトリックを持つこともあるけど。
YG:確かグラントがギターを始めた頃って、ブラック・サバスの「Paranoid」を練習していたんですよね?
GN:うん、学校のバンドでやってたよ。
YG:今でもそういうリフものやヘヴィなものは、グラントの根幹にあるものなんでしょうか? 今や、アコースティックでほとんどの曲を作っているわけですが。
GN:もちろんあるよ。若い頃、ああいった曲を必死になって弾けるように頑張っていたからね。家でアルバムを聴きながら、弾き方を研究して。だけどブラック・サバスからの影響はかなり大きかったなあ…。パンク・ロックもあったし、’70年代はみんな好きだった。ブラック・サバス、セックス・ピストルズ、レッド・ツェッペリン。デヴィッド・ボウイやポリスも好きだったよ。学校のバンドではそういったバンドの曲を皆コピーしていた。その頃の僕は主にギターを弾いていて、歌うようになったのはもうちょっと年を取ってからだった。(歌うことに)自信が持てなくてね。誰かにヴォーカルをやってくれと頼まれて、それで、たまたまヴォーカルをやることになったんだ(笑)。
YG:前作の話で恐縮ですが、前作『ALL BRIGHT ELECTRIC』に収録されていた「Geezer」は、ブラック・サバスのギーザー・バトラー(b)と関係します? サバスのエッセンスが効いた興味深い曲でしたね。
GN:そうそう、そうなんだよ! 僕からのリスペクトだ。10代の頃に大きな影響を受けたからね。ブラック・サバスは、フィーダーだけじゃなく多くのバンドに影響を与えてきたじゃないか。スマッシング・パンプキンズだってそうだしね。非常に重要なバンドだと思う。特にギタリストにとってはね。トニー・アイオミのリフはかなりシンプルだけど、とても良くできている。「N.I.B.」「Paranoid」「War Pigs」「Iron Man」…、彼は上手いギタリストだけど、僕は彼のリフが凄く好きなんだ。
YG:今回のニュー・アルバムで使った機材を教えてもらえますか?
GN:前の『ALL BRIGHT ELECTRIC』とほとんど一緒だよ。僕の小さなスタジオにある、VOXの青いスピーカーが入った“AC30”とフェンダー“Deville”の2×12”キャビネットのホット・ロッド・モデル。スピーカー・シミュレーターも使っている。自宅のスタジオだから、あまり音がデカ過ぎると近所から苦情がきそうなんだけどね(笑)。…とはいえ、みんな理解を示してくれてはいるよ。それからマーシャルの’70年代の50Wヘッドを大音量にして使った。1stアルバムからずっと、ほとんどすべてのアルバムでプレイしているよ。メインのギター・サウンドは“Deville”とVOXで出している。VOXのモデルは“JMI”(JMI AC-30)で、ハンドワイアード製なんだ。凄く良質なモデルだよ。この2台は基本的にフルタイムで稼働しているね。それからリズムはマーシャルで録ってる。ギターはハムバッカーを搭載したものだ。メイン・サウンドはシングルコイルの“Jazzmaster”。ブリッジにはセイモア・ダンカンの“Quarter-Pound Flat”。ライヴ用のギターはほとんどそれだけど、レコーディングでは主に’59年製の“Jazzmaster”を使ってる。これはピックアップの出力がもの凄く低いんだけど、レコーディングにはとても適している。それから、こんなことを言うと変なヤツだな思うかもしれないけど、あの“Jazzmaster”はほとんど弦を換えていないんだ。そのサウンドが好きだから。古い弦の音だよ。でも、それで録ってる。
YG:それだと音がヨレヨレにならないんですか?
GN:ならないよ、掃除はしてるから(笑)。随分長いこと換えてないけど、それが気に入ってるんだ。他にもテレキャスターなどがあって、もっと明るくてキラキラしたサウンドがほしい時はそっちを使う。だけどメインの“Jazzmaster”は、あの弦の音が最高にクールだ。何でだろうね!(笑) 僕は新品の弦を張ったギターと、古い弦を張ったギターを使っているというわけだよ。
YG:こういう話を伺っていると、遥か昔の『ECHO PARK』(2001年)時に、「自分の個性が出たサウンドを見出すことが、技術的に優れたギター・プレイヤーになることより、ずっと大事」とあなたが本誌に語ってくれたことにも繋がっている気がしてきますね。
GN:うん、そうそう(笑)。
YG:このポリシーは、20年近く経っても揺るがないものですか?
GN:僕は基本的にソングライターだ。最初からギターを弾いていたし…その前にトランペットがあったけど、初めて情熱を注いだのはギターなんだ。独学で、レッスンは受けていないよ。僕にとってギターは曲作りのためのもので、強い繋がりがある。ギターを弾くことが大好きなんだ。自分のことは歌うギタリストだと思っている。リード・シンガーでいるのは心地よくないんだよね(笑)。なぜか分からないけど、歌いながらギターを弾くことが自然に感じる。だから、僕はギターのサウンドに情熱を持っているし、弾き方にも興味があるよ。だけど、どこにでもギター・ソロを入れるようなタイプじゃない。ちょっとしたソロが入っていればもちろんプレイするけど、それが必ずしも僕らしいというわけじゃないんだ(笑)。
YG:最後に、フィーダーのファンに向けて、メッセージをもらえますか?
GN:僕達の過去作を気に入ってくれた人なら、きっと今回のアルバムも何か気に入るものが見つかると思う。面白いものにしようと頑張ったからね! フィーダーのファンには間違いなくオススメの1枚だし、たくさんギターが入っていて、メロディーもある音楽が好きな人なら、きっとこのアルバムを好きになってくれると思う。フィーダーはライヴがヘヴィになる傾向があるから、今作でも、ステージではよりパワフルに聴かせられる曲が出てくるだろうね。ぜひツアーを観にきてくれよ!
INFO
CD | ビクター|2019年8月9日発売
来日情報
大阪公演
日程:2019年9月17日(火)
開演:19:30
開場:18:30
会場:大阪・梅田クラブクアトロ
名古屋公演
日程:2019年9月19日(木)
開演:19:30
開場:18:30
会場:名古屋クラブクアトロ
東京公演
日程:2019年9月20日(金)
開演:19:30
開場:18:30
会場:東京・渋谷クラブクアトロ
チケット料金:全席立ち見/7,000円(税込)(+1ドリンク)
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