間もなく3度目の来日を果たすフィンランドのメロデス軍団:カルマ。その再来日を記念し、’18年11月に来日した際の未発表インタビューをここにお届け! 取材に応じてくれたのは、アンティ(g)とペッカ(vo, g)のコッコ兄弟。前者は’16年の初来日時、不在だったため、この時が日本のファンの前でプレイする初めての機会となった。兄弟揃って寡黙なタイプなため、取材中はどちらも終始かなり言葉少なだったが、2人の仲の良さはあちこちから伝わってくるだろう!
『PALO』のアートワークは炎が燃え尽きた“その後の状態”
YG:今回の日本公演はいかがでしょう?
ペッカ・コッコ:素晴らしいよ。オーディエンスも最高だし。
YG:アンティ、初めて日本のオーディエンスの前でプレイしてみていかがでしたか?
アンティ・コッコ:凄いね。今のところ、フィンランドなどのオーディエンスと大きな違いは見つけられていないけど、とにかく日本人は親切な人ばかりだ。
YG:ペッカは前回来日時と比べて、何か違いを感じましたか?
ペッカ:前回のことは何も憶えていないんだ(苦笑)。ずっと呑み続けていて、常に酔っ払っていたから…。
YG:それはそれは…(笑)。今日も既に呑んでいるのですか?
ペッカ:いや。最近は呑まないようにしている。
YG:アンティは来日前に、ペッカや他のメンバーから、日本のことについて何か聞いていましたか?
アンティ:ああ。良い話を色々と聞いていたよ。昨日(’18年11月22日)の大阪公演もとても良かった。だから、今日(同23日)もきっと良いに決まっているよね。
YG:今回は演奏時間が70分ほどだそうですが、ニュー・アルバム『PALO』(’18年)も出たので、セットリストを組むのがさらに大変だったのでは?
アンティ:そんなに大変じゃないよ。自分達が弾きたい曲、各アルバムから良い曲を選んで加えていくだけだから、かなり簡単だ。前回と同じ曲もプレイするしね。
ペッカ:ああ。俺達のヒット曲だから外せないんだ。
YG:フィンランド本国でプレイする時は、もっと長いセットの場合もあるのでしょうか?
ペッカ:当然、ヘッドライナーの時は長くすることが出来るけど──ヘヴィ・メタルのショウを1時間半もやり続けるなんて、そんなの長過ぎるよ。75分が限界かな。
YG:ドリーム・シアターは3時間のショウをやりますが…?(笑)
ペッカ:う〜ん、長過ぎるな。オーディエンスも自分達も3時間ずっと立ちっ放しだということを考えてみてくれよ。
アンティ:でも、彼等は3時間ひたすらヘッドバンギングし続けているワケじゃないから…。
YG:これまでに行なったショウで一番長かったのは?
アンティ:1時間半だな。
ペッカ:うん。90分のショウは何度かやったことがある。でも、俺はやっぱり長いと思う。
YG:ところで、『PALO』というアルバム・タイトルは、フィンランド語で“炎”とか“熱情”とかそういう意味だそうですね? ところが、アートワークは凄く寒々しくて…。
ペッカ:これは燃え尽きた“その後の状態”を表しているんだ。
アンティ:木の上に描かれている顔は、かつてあった森を見て泣いている。しかしまた草木が生えてきて、森の生命は新たに続いていく…というメッセージが込められているんだ。
YG:なるほど。『PALO』に封じ込められたサウンドは安定の“KALMAH節”という感じで、ファンの反応も上々のようですね?
ペッカ:俺達は他のことが出来ないからね(笑)。
アンティ:過去のアルバムでも、常に自分の直感を信じてきたんだ。自分が気に入ればカルマの素材になるし、気に入らなかったら、そんなの使わなければイイ。それぐらい簡単なことだよ。自分が良いと思ったモノは、大抵の場合、他のみんなとも意見が合うから。
ペッカ:その通りだね。
アンティ:他のどんな要素があっても、俺はカルマの曲調が好きだ。そういうことだよ(笑)。
YG:曲を書く時は、兄弟で共作することもありますか?
アンティ:時々やるよ。昔は一緒に住んでいたから、毎晩のように何かしら弾いていたし。今はそれほどでもないけど、ちょくちょくやっているね。
YG:『PALO』には共作曲はありませんよね?
アンティ:いや、なくはないよ。
YG:では、クレジットがペッカになっていても、2人で書いた曲もある…と?
アンティ:曲の90%を書いたヤツがクレジットされるんだ。リフやメロディーだけを作った時は、特に名前は入れない。アレンジは全員で行なうからね。
YG:それぞれが書く曲のイメージはありますか?
アンティ:あるよ。
ペッカ:当然だな。
YG:例えば?
アンティ:ペッカはペッカらしい曲の書き方をするし、僕はそれとはちょっと違う。キーボード奏者が作ってくる曲は、これまた全く違う。
YG:具体的に特徴などを挙げてもらえませんか?(笑)
アンティ:ペッカはブラスト・ビートのメタル・スタイルが多いかな。キーボード奏者が書いた曲は…え〜と、アレは何て言ったらイイんだ?
ペッカ:ハハハ…お前が名前を付けてみろよ。
アンティ:雰囲気があるというのかなぁ…。まぁ、そういうことだ。
YG:ペッカはアンティの曲作りについてどう思いますか?
ペッカ:それは分からない。
YG:(苦笑)
ペッカ:カルマっぽい…としか言えないな。ずっと同じだから、説明が難しいよ。
YG:ピアノから始まる曲もありますが、ギターで書いた曲でも、「ここはピアノ」「ここはユニソンで」といったことは最初から決まっているのでしょうか?
アンティ:そうしたアイデアがあることもあるし、ないこともある。キーボードのヤツがアイデアを出してくれることもあるよ。俺自身は普段から、ギターだけじゃなくて、キーボードやドラムのパートも考えている。それをみんなに聴かせて、「こんな風にやってくれないか」と提案するんだ。でも、例えばキーボード奏者は、彼がやりたいようにやっているよ。基本的には、「ここにピアノを入れる」というのは作曲したヤツが決めるんだ。
ペッカ:そして、(キーボード奏者の演奏が)全然良い感じにならないなら、「やり直してくれ」と言う(笑)。でも、俺はピアノ・パートなんて考えたことがないよ。いつもギターのラインだけだから。ピアノは難し過ぎる(苦笑)。
アンティ:俺だって、弾けると言えるほどの腕はないよ。でも最近、KORGのシンセ“microKORG”を買ったんだ。だから次のアルバムには、’90年代のユーロビート風が加わるかも(笑)。
ペッカ:そりゃ最高だな。
YG:『PALO』の日本盤ボーナス・トラック「Lovers On The Sun」は非メタル曲のカヴァーでしたね?
アンティ:ああ、そうだ。
ペッカ:アレをテクノっぽくアレンジしたのは、ただそうすべきだと思ったからだよ。
YG:テクノ系も聴かれるんですか?
アンティ:いやいや。でも、この曲は好きなんだ。
ペッカ:ガキの頃に聴いた大ヒット曲だからな。
アンティ:曲としても、凄く良く出来ている。それに、最近のフィンランドでは、’90年代に流行った音楽が盛り返しているんだ。
ペッカ:ユーロ・ディスコだ。
YG:そうなんですか? フィンランドといえば、メタルの国というイメージですが…。
アンティ:前はそうだったけど、今や10年前のような人気はない。
ペッカ:本当だよ。
アンティ:これからはアンダーグラウンドな活動に戻っていくんだろうな…。