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「CDとは違ったアドリブをしなければロックとして意味がない」梶山 章/GOLDBRICK 2019年ツアーのライヴ映像作品リリース

「CDとは違ったアドリブをしなければロックとして意味がない」梶山 章/GOLDBRICK 2019年ツアーのライヴ映像作品リリース
インタビュー●斎藤新吉 Shinkichi Saito 写真●Yuki Kuroyanagi

梶山 章(g)が新鋭の藤井重樹(vo)とのタッグを組み、約14年ぶりに発表したゴールドブリックのスタジオ・アルバム『THE BOUNDARY』。それから約半年以上が経過した’19年の5月、彼らは実質的に復活ライヴと言える一夜限りのステージに立っており、その模様が『Akira Kajiyama 怒りのギター炸裂 伝説のライヴ 〜Resurrection Tour 2019〜』という凄まじいタイトルで映像リリースされている。スタジオ盤の時点でその生々しいギターの鳴りと唸り具合は凄まじかったが、生のパフォーマンスではそれがさらに増強。彼の本質を捉えた貴重な映像と言えるだろう。

爆音の中でアンサンブルを成立させるのがハード・ロック

YG:’19年5月に行なわれたライヴの模様が作品になったということで、新生ゴールドブリックとしては1つの節目になったかと思いますが、まずライヴ自体の手応えはいかがでしたか?

梶山 章:まず実現するまでの道のりが大変だったんですね。メンバーがそもそもヴォーカルとギターの2人しかいない。当然ライヴをやってくれるリズム隊が必要になるわけですが、一番大きかったのはベーシスト選びでしたね。レコーディングでは僕がベースをゴリゴリとピックで弾いていたので(笑)、その方向性を引き継いでくれる人が欲しかった。

YG:アルバム発表の時も梶山さんはベースについて強いこだわりを語られていましたよね。

梶山:そうなんですよね。誰にやってもらおうかということで、圧倒的にピック弾きのベーシストが少ないんですよ。そこで人に恵まれて、たまたま宇都宮“LEO”(清志)さんとの出会いがあって。ただ大阪の方なので、リハーサルをするには関西方面で出来た方が楽なのかと。ドラマーは前から決めていたんですが、彼も大阪の人なので、だったら僕が大阪に行って、楽器隊のリハーサルをしっかりやるのが一番良いかなと。永川(敏郎/key)さんや藤井は今までに何度も一緒にやってますからね。…という発想だったんですが、途中でドラマーが体調を崩してしまって。そうなると関西でリハーサルできるドラマーを探さないといけなかったんですよ。なんとか村中(暁生)くんを見つけて、それがライヴの1ヵ月前だったんです。

YG:突貫だったんですね。

梶山:ええ。しかも、ライヴの企画から会場の選定とか、すべてレコード会社と一緒にやりながらも大半は僕が管理しているので、その時点で精神的にはかなり参っていましたね。こういうコンセプトで、こういう風にやろうというのは自分の中でアイデアがあったんですよ。でもやっぱり、実際の演奏以外の部分に時間を取られちゃって。

YG:ゴールドブリックの復活自体が紆余曲折を経ての実現だっただけに、ライヴをやるだけでも産みの苦しみがあったわけですね。選曲は『THE BOUNDARY』の曲で本編を構成しつつ、アンコールで森川之雄さん時代の曲をやるという形になりましたが、最初からそういう形で行くことは見えていたのでしょうか?

梶山:ヴォーカルの藤井と僕が組んだ当初というのは、僕の過去の曲をライヴでやるという目的があったんですね。藤井が非常に僕の作品、特にジョー・リン・ターナーの曲を器用に歌いこなすヴォーカリストだったので、そういう曲と新曲を組み合わせたアルバムを作ろうということになったわけで。そういう経緯があったので、ライヴも最新作が中心になったわけです。そこはごく自然でした。ジョーとのコラボ曲を埋もれさせたくないという思いがあったので、ライヴでもそれをやる意味は非常に大きかった。

YG:「End Of The Line」は『FIRE WITHOUT FLAME』(’05年)の曲ですが、『THE BOUNDARY』では取り上げていなかったですよね。

梶山:そうですね。ただ、ミュージシャンとしては基本的に次の作品での新しい表現をどうするかしか考えてないというか、過去の曲のことは忘れてしまうんですよ。でも僕にとってジョーとの作品はキャリアにおいて非常に重要ですから。自分が色々悩んで来たことをジョーとの出会いが解消してくれたし、自分の理想通りの作品が作れたし。あの頃の曲には非常に思い入れがある。曲に対する思い入れというより、ジョーへの感謝という気持ちが強いかな。それを表現できるなら曲を選ぶのはどれでも良かったんです。その中でも「End Of The Line」だったんですね。

YG:森川さん時代の2曲に関してはどうやって選んだのですか?

梶山:名前がゴールドブリックだからという単純な理由ですね。この2曲は一番ファン・サービスになるかなと思った曲です。

YG:アルバム頭の曲を優先したとか?

梶山:そうです。その中でも「Striking My Heart」(’03年『GOLDBRICK』収録)という曲は、当時僕の周囲にいたミュージシャンに「この曲を売ってくれ」とまで言われた曲なんですよ(笑)。そんなこともあってファン・サービスになるかなって。

YG:森川さんの曲を藤井さんがどう歌うのかということもファンにとっては注目点だったと思います。森川さんの野太いテイストは違うんですが、藤井さんのパワー感が曲にハマっていますよね。

梶山:そう言っていただけるとありがたいですね。色々な意見が出て来るだろうということは想定していましたけど、「合う」と思っていただけたなら、やって良かったと思います。全然タイプが違うから。

ゴールドブリック:藤井重樹&梶山 章

YG:1曲目の「Cast In The Air」の時点で、梶山さんはバッキングを弾きまくっていて、アルバムとはフレージングがまったく違いますよね。もうバッキングの時点で凄まじいインプロヴァイズで弾き倒していて…。

梶山:ライヴをいかに自分の楽しみにするか、コンセプトはまさしくそれなんですよ。僕個人の意見としては…もちろんすべてのバンドじゃないけど、HR/HMにおいてキャッチーな曲を出しているバンドというのは歌モノとして成立しているじゃないですか。イントロのリフがあって、歌があって、ギター・ソロがあって。アルバムはアルバムでそういう形は踏襲する。だけどライヴになると違うんですよ。僕は’60〜’70年代のロックに影響を受けていて、何に一番興奮したのかということ。一言でいうと、ギターが主役だったこと。ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン。ジェイムズ・ギャングだとか。多くのバンドは聴きどころがギターなんですよ。オールマン・ブラザーズ・バンドもウィッシュボーン・アッシュも。ギターはヴォーカルのバックではないんですよ。

YG:ヴォーカルと同等かそれ以上。

梶山:そう。しかも爆音のギターです。ギターに埋もれて聴こえないヴォーカルのバランスをいじって成立させるような音楽じゃない。爆音の中でいかにアンサンブルを成立させるかというのが、ハード・ロックなんじゃないかと。歌モノのギターはこういうものなんだっていう今時の固定観念とは違って、ギターが自由に弾きまくるというのが僕のロックですから。

あともう1つ大事なのは…ロックが好きな方とロック談義になる時って、大抵こういう話になるんです。僕は’70年代のハード・ロックが凄く好きで、僕より3歳ぐらい年下の’80年代のロックに影響されたミュージシャンとは重なる部分が少ない。その時代はマイケル・シェンカーやランディ・ローズとか、僕が影響を受けたギタリストとは全然違うんですよ。ヴァン・ヘイレンぐらいしか被ってない。そういう年下の人たちが何を言うかというと、’70年代のミュージシャンのライヴに行ったら、レコードと全然違うからガッカリしたっていうんです。それだったらレコードを聴けばいいと。僕には理解できなかったんです。それがリッチー・ブラックモアやジミー・ペイジのかっこよさだったじゃないですか。僕はライヴなんだったら、CDとは違ったアドリブをしなければロックとして意味がないと考えている。じゃあ今回のゴールドブリックのライヴはどうかというと、両方やろうと。ソロのキメとかの部分は極力CD通り…完全に同じようには弾けないけど。それ以外は全部アドリブ。一番の楽しみは何かというと、スタジオでのリハーサル、ライヴでの本番、これ以外は一切自分の曲を練習、弾いたりしないようにしたんです。一度たりとも。間違えないように何度も練習して、それを忠実に弾けるようにするというやり方だけは絶対にしたくない。CDのレコーディング、リハーサル、本番、これ以外はなし。それをやると弾くことを準備しちゃうから。それを今回の自分なりのコンセプトにしました。

YG:そうなるとメンバーの皆さんも梶山さんの演奏が読めないわけですよね。

梶山:そうです。森川さん時代にもいくつかライヴ盤は出しましたけど、あれはCD通りだったから。当時はそれがあるべき形だと思っていたけど、今回は違うことをやるのが、お客さんにとってもニーズになると考えていました。

YG:アドリブだけに、リズム的に危ういところがあると思うんです。音が外れそうになったりとか。

梶山:絶対にスケール・アウトしてやろうと思っていました。ギターがメロディアスじゃなきゃいけない、正確じゃなきゃいけないとか。そこに重点は置いていなくて、自分がその瞬間に思っていた通りのトーンが出ているか、そしてそれがグルーヴしているか。そこだけなんです。自分が納得できるフレーズであるかどうか。それにリズムだって、人間なんだからズレて当たり前なんですよ。完璧にズレない音楽が聴きたいならMIDIで打ち込めばいいわけですから。正確無比な演奏が必要ならそういうギタリストの方がやればいい。

YG:そういったアドリブのフレーズは、かなりリッチー・ブラックモアしている部分が多いですよね。

梶山:ありがとうございます、そうなんですよ(笑)。子供の頃に弾いていたようなフレーズが出て来るのは当然なんです。リッチーにしても、ウィッシュボーン・アッシュにしても。リッチーは弾いている時にこういう景色を見て、こういうイメージを頭の中に思い描いていたのではないかと、そういう感覚を覚えたいんです。

ゴールドブリック:バンド