(前編)ブライアン・ティッシー:ランディ・ローズ没後40年インタビュー「どのソロでも違うことをやっているけど、ちゃんとランディっぽさが感じられる」

(前編)ブライアン・ティッシー:ランディ・ローズ没後40年インタビュー「どのソロでも違うことをやっているけど、ちゃんとランディっぽさが感じられる」

ヤング・ギター2022年4月号では、没後40年となるギター・ヒーロー:ランディ・ローズの大特集を展開している。誌面にはランディを知るバンド・メンバーや友人、オジー・バンドの歴代ギタリスト、後続のギター・ヒーローたちがランディについて語る独占インタビューを掲載しているが、YGウェブでは誌面未掲載となる3名のインタビューをお届けしよう! 

ビリー・アイドルやホワイトスネイク、ザック・ワイルドが率いたプライド&グローリーや日本が誇るロック・ユニットB’zなどなど、数々のトップ・アーティストのバンド・メンバーやサポートとしてスティックを振るってきたドラマーのブライアン・ティッシー。「なぜドラマーがランディ・ローズに関するインタビューを…?」と不思議に思う方もいるかと思うが、彼は子供の頃にランディのギターに衝撃を受けた「ギターが大好きなドラマー」であり、2014年から開催されているトリビュート・コンサート“Randy Rhoads Remembered”の主宰者の1人でもあるのだ(このトリビュート・ライヴでブライアンはドラマー兼バンド・マスターであり、曲によってはギターもプレイする)。そんなブライアンに、ランディの魅力についてたっぷりと語ってもらった!

どのソロでも違うことをやっているけど、ちゃんとランディっぽさが感じられる

YG:そもそも、ランディ・ローズの存在をどのようにして知りましたか?

ブライアン・ティッシー(以下BT):俺が7年生(中学1年生)の時に『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)がリリースされたんだけど、その頃、ラジオでオジー(オズボーン)のインタビューを聴いたんだ。オジーはランディのことを話していたけど、俺はそれが誰なのかまったく知らなかった。でも、そのラジオから「I Don’t Know」が流れてきた途端…、一気に夢中になったよ! オジーのヴォーカル、ランディのリフやリード、ベース、ドラム…すべての音にすっかり圧倒されてしまったんだ。そのラジオからは、またオジーのインタビューを挟んで今度は「Crazy Train」が流れたんだけど、これまたたまげた!(笑) それで、すぐにレコードを買いに行ったよ。あのアルバムは、ミュージシャンとしての俺にとってとても重要な1枚なんだ。7年生だった1人の少年がドラマーを目指すきっかけとなり、さらにもっとギターを弾けるようになりたいと思わせてくれたんだから。当時、俺はすでにギターの基本的な知識や技術は持っていたけど、あのアルバムを聴いてもっと練習をするようになった。自分でランディのギターを必死にコピーして、たぶん間違いまくっていただろうけど(笑)、それでも凄く楽しかったね。

あのアルバムのおかげで、俺は“ギターが大好きなドラマー”になったんだ。

YG:それは面白い話ですね。オジーのアルバムについて、より詳しく聞かせてください。まず、ブライアンは『BLIZZARD OF OZZ』におけるランディのギターについて、どんな感想を持っていますか?

BT:『BLIZZARD OF OZZ』は、ランディがただのメタル・ギタリストじゃないってことを示していると思う。その昔、“King Biscuit Flower Hour”というラジオ番組があってね、毎週バンドのライヴ音源を流していて、例えば俺はラッシュなんかもそこで初めて聴いたんだ。そしてある週末、オジー・オズボーンのライヴ音源が放送されて、ランディが1人でギター・ソロを弾いているパートがあったんだけど、これがまた驚異的でね! ラジオだったけど、ランディがスポットライトを浴びてプレイしている姿が見えるような最高にクールなソロで、それまで俺はそんなプレイをしているギタリストを聴いたことがなかった。その頃、ランディがディミニッシュについて話しているインタビューか何かを読んだことがあって、「トライトーン」だとか「ディミニッシュ」だとか、当時の俺には何のことだかさっぱりで、「彼は何を言っているんだ? クレイジーなのか、天才なのか…きっと普通のギタリストとは思考が違うんだろう!」とビビったね。彼のやっていることは根底を覆すようなものに思えた。ディミニッシュについては、後になって友達が弾いてみせてくれたよ。「3フレットずつ、こうやって上昇しながら弾いていくんだ。ランディはこれを使っているんだよ」なんてね。確かにランディっぽい音だった。そしてそれは、イングヴェイ(マルムスティーン)登場以前の話だよ。もちろん、イングヴェイが出てきた時も凄かったし、ぶっ飛ばされたよ。だけど、俺はすでにその手のスタイルをランディのプレイで耳にしていたことになるわけだ。ランディは、それを上手く使って素晴らしい曲を書き、アルバムは大成功を収めた。「Crazy Train」とか、凄い曲ばかりさ。それらによって、多くの人にギターという楽器が向かう新しい方向や概念を示してくれていたと思う。テクニカルで派手なプレイもあれば、「Mr. Crowley」のような素晴らしいメロディーのソロもある。ランディはとにかく全方位的に素晴らしいギタリスト/ミュージシャンであることが聴けば分かる。情熱が感じられるし、攻撃的になったり、アコースティックでメロウな側面を見せたり…。俺は、ランディの持つ要素の何から何まで夢中になったよ。

YG:次作の『DIARY OF A MADMAN』(1981年)についてはいかがですか?

BT:『DIARY OF A MADMAN』は、『BLIZZARD OF OZZ』という素晴らしいアルバムの完璧なフォロー・アップ作品だと思う。アルバムをかけると、いきなり印象的なドラム・パートが始まる。それがヘヴィなギター・リフに繋がり、クールなメロディーのヴォーカルが流れてくる──「Over The Mountain」だ。もちろん、ギター・ソロも凄い。聴いているこっちはもう床にひれ伏したよ!(笑) 「なんてこった! 凄まじい曲だ!!」って。そして、続く曲への期待感が高まっていくんだ。「Flying High Again」「You Can’t Kill Rock ‘N’ Roll」、そして「Believer」──このA面の素晴らしさ! B面は「Little Dolls」から「S.A.T.O.」「Tonight」、そして「Diary Of A Madman」という巨大なエピックでフィニッシュを迎える。『BLIZZARD OF OZZ』にも「Revelation(Mother Earth)」のような大曲があったわけで、「Diary Of A Madman」はその続編だと俺は捉えているよ。「Revelation(Mother Earth)」という凄い曲があったんだから、きっと今回もああいうのを聴かせてくれるだろうと期待していたんだ。そして、「Diary Of A Madman」は俺の期待を遥かに越えるものだった。

YG:ランディ逝去後の1987年にリリースされたライヴ・アルバム『TRIBUTE』はどうでしょう?

BT:俺は他にもオジーのライヴ音源のブートレッグを持っていてね。“King Biscuit Flower Hour”で放送されたライヴをカセットに録音してあったし、友達の1人が別に出回っていたブートレッグを持ってたり…。で、クールだったのが、例えば『TRIBUTE』と“King Biscuit Flower Hour”では同じ曲でもギター・ソロが微妙に違っていたりするんだ。ランディはすべてのソロを“作曲”していて、ライヴでも1音も違わずにプレイするはずだ…と思っていたけど、即興的にプレイすることもしょっちゅうあったんだよ。アルバムとまったく同じではなく、ちょっと自由に弾いているところがとてもエキサイティングだった。単に同じことを繰り返すだけでなく、スタジオ盤ではやらなかったことをやって、自分自身のギター・プレイをさらに上のレベルに引き上げていたんだ。そんなところにも、俺はとても感銘を受けたよ。

あと、「Dee」のアウトテイクもこのアルバムの聴きどころだ。ちょっと間違えたようなところがあったり、やり直すところがあったり──当時、そんな音源が外に出るなんてことはめったになかったからね。ただ、唯一残念だったのは──あのアルバムがリリースされた1987年当時、ギタリストは注目の的だった。エディ(ヴァン・ヘイレン)、ランディ、イングヴェイの後継が出てきて、誰も彼もがシュレッドしまくっていた。ジェイク・E・リーにヴィヴィアン・キャンベル、スティーヴ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニ…そんな時代だったから、『TRIBUTE』のランディのギター・ソロはテープ・スピードが速められているんだ。そうすることで、より速く聴こえるようにね。でもそれは、俺の耳にはふさわしく聴こえなかった。チューニングが狂っているように聴こえるんだ(註:「Suicide Solution(With Guitar Solo)」におけるランディのギター・ソロ・パートは元々別の公演で録音されたものだが、前後の部分とのピッチのズレから編集時にスピードが速められているとも言われている)。あの時代ゆえの競争意識が働いたみたいだけど、俺はそんなことする必要はなかったと思うな。「ランディのプレイをそのままにしておいてくれよ!」ってね。

しかしこんな話をするのなら、俺の仲間にも聞いてやってほしかったな。デレク・シェリニアン──彼は素晴らしいキーボーディストだけど、ハードコアな“ギタリスト”でもあるからね(笑)。俺とデレクが顔を合わせたら、ランディ・ローズとエディ・ヴァン・ヘイレンとイングヴェイの話しかしない!(笑) 数日前にも彼とは「ランディのギター・ソロはどれがベストか?」なんてテキスト・メールのヤリトリをしていたところだよ。デレクは「“Tonight”のアウトロでフェイド・アウトしていくところ」なんて言っていたけど、確かにあそこはカッコいい(笑)。でも俺がランディの特徴が一番よく出ていると思うソロは、「Mr. Crowley」のアウトロだな。あれが最も強力だと思う。クラシカルでヘヴィだし、テクニックがあり、メロディックで、とても強力なソロだ。あのソロこそが、ランディを最も象徴するソロだと思うね。

でも…難しいな。「Over The Mountain」を聴いた時はブッ飛ばされたし──あの曲をライヴで聴くとソロはかなりアルバムに忠実だ。本当によく考えられていて、しっかり構築されているからね。その一方で、「Mr. Crowley」をライヴで聴くと、ランディは即興的なプレイを加えたりもしているんだ。「Mr. Crowley」にはインプロの余地があったんだろうな。だからやっぱり「Mr. Crowley」…いやいや、「Revelation (Mother Earth)」も凄いし、「S.A.T.O.」も凄い! 「Flying High Again」もよく練られて構成されているソロだ。とてもメロディックだよ。だから全部が…。

YG:(笑)。

BT:今のが上位だ(笑)。あっ、「I Don’t Know」を忘れてた! あれも上位に入る。あれも凄く力がみなぎったソロだよ。

YG:つまり、すべてのソロが最高…ということですね(笑)。

BT:そこがランディの素晴らしいところだよ! どのソロでも違うことをやっているけど、ちゃんとランディっぽさが感じられる。どれもみんなランディという枠組みの中にありながら、それぞれがそれぞれのスタイルにおいて突出しているんだ。

YG:そうしたギター・ソロのみならず、ランディはリフ・メイカー/リズム・プレイヤーとしても優れていましたよね?

BT:ああ、まったくその通り! 最初にも言ったけど、そもそも俺は「I Don’t Know」のリフを聴いてぶっ飛ばされたんだからね。実にシンプルかつパワフルなリフで、「こんなサウンドを出すギタリストは他にいない!」って思ったよ。でも、それは同時に親しみやすいサウンドでもあった。「まさにこういう音が聴きたかった!」という感じ。ランディはそういうものを全部持っていたんだ。彼はメタルなリフも、クラシカルなリフも、「Flying High Again」や「No Bone Movies」のようなハード・ロックのリフも身に付けていたんだよ。

『BLIZZARD OF OZZ』が出てきた頃、俺にギターの弾き方を教えてくれた友達がいた。彼はリフを弾く時にパーム(ブリッジ)・ミュートのやり方を教えてくれたんだけど、まさにこれを知らなければ「I Don’t Know」のリフは弾けない。“ジャーン・ダカダカダカダカ…♪”の“ダカダカダカダカ…”の部分は手のひらの側面で弦に触れて、サステインをなくすんだ。凄くパーカッシヴで、「なんてカッコいいサウンドなんだ!」と思ったね。メタルのジャンルにおいてはとても重要なテクニックだ。でも当時は、今ほど重要視されていたとは思わない。いつ頃からパーム・ミュートが使われるようになったのかは知らないけど…少なくとも当時ギターを習いたてだった俺にとって、あのテクニックはランディと結びついているんだ。

INFO

ヤング・ギター2022年4月号には、ランディ・ローズ没後40年を偲んで総勢13名のギタリストや関係者へ行なった最新インタビューを掲載。WEB限定記事の3名(随時更新)と合わせてチェックを!

ランディ・ローズ没後40年特集インタビュー扉