ビル・ハドソン「ノーステイルの2nd『ETERNAL FLAME』では、より自由に好きな曲が書けた」

ビル・ハドソン「ノーステイルの2nd『ETERNAL FLAME』では、より自由に好きな曲が書けた」

ビル“日本大好き”ハドソン(g)率いる多国籍メロディック・メタラー:ノーステイルのセカンド・アルバム『ETERNAL FLAME』が遂に日本リリース! 海外では’21年11月に発売済みだったが、それから数ヵ月を経て、ボーナス・トラック2曲を追加した日本盤がつい先ごろリリースされたのだ。前作『WELCOME TO PARADISE』(’19年)から約2年半──その間にはメンバー・チェンジもあった。しかし、トラウマーのギルエルメ(ギリェルミ)・ヒロセ(vo)を新たに迎え、ノーステイルはさらに劇的に、パワフルに、ファストに進化を遂げ、正に期待以上の超強力作を届けてくれた。では早速、その『ETERNAL FLAME』について、そして、シンガー交代の経緯などについても、ビルに語ってもらうことにしよう…!!

INFO

NORTHTALE - ETERNAL FLAME

ETERNAL FLAME / NORTHTALE

CD|キングレコード | 2022年1月26日発表(海外では2021年11月に発表済み/日本盤にはボーナス・トラック2曲を収録)

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「どうしても聴いて欲しい」と音源が送られてきて…

YG:新作について訊く前に、まずはヴォーカルの交代のことから話してください。クリスティアン・エリクソンはいつ、どんな理由でバンドを離れたのですか?

ビル・ハドソン(以下BH):実は、クリスティアンと俺は’20年の早い段階で折り合いが悪くなってしまってね…。パンデミックが始まる直前だったから、’20年の2月だったかな? その時、彼はもう(ノーステイルに)相応しいシンガーではない…と判断し、それで袂を分かったんだ。

YG:後任のギルエルメ・ヒロセとは、以前から面識があったのですか? 彼もブラジル出身ですが…?

BH:いや、彼のことは全然知らなかった。それにギルエルメは、誰よりも後から連絡してきたんだよ。事前に俺たちは、スウェーデン、イタリア、アメリカ、カナダなど、11ヵ国のシンガーを30~35人ほどオーディションしていてね。その中にも、ブラジル出身のシンガーは何人かいたよ。でも、誰ひとりとして完璧な選択とは言えなくてさ。ただ、そうこうしているうちに、(新作の)レコーディング時期が近付いてきたんで、俺は何とかして誰かに決めようと考え始めた。そんな時、Facebook経由でギルエルメの「トライアウトを受けたい」というメッセージを受け取ったのさ。

そこで俺は、「もう新しいシンガーは決定した」と彼に伝えたんだけど、「どうしても聴いて欲しい」と音源が送られてきてね。それを聴いたら、彼の声が凄く気に入ってしまったんだ。彼はまさに、俺が求めていたパーフェクトなトーン、パーフェクトなサウンドの持ち主だった。でも…もしかしたら、彼がブラジル人だということもあったのかもしれない。アンドレ・マトス(ANGRAの初代シンガー:故人)の影響という点でね。ただ、ギルエルメがノーステイルにぴったりのシンガーだったのは間違いなかったよ。

YG:ギルエルメ個人についてはともかく、トラウマーというバンドのこともご存知なかったのでしょうか?

BH:うん。ギルエルメから話を聞くまで、あのバンドのことは知らなかった。でも、彼が音源を送ってきて、「パーフェクトだ!」と思ったね。特に、彼のハイ・トーンが気に入った。クリスティアンを思わせるところもあったけど、ティモ・コティペルト(ストラトヴァリウス)やマイケル・キスク(ハロウィン)といった、俺が好きなシンガーたちも想起させてくれたからね。

NORTHTALE 2019
’19年当時のノーステイル。中央が初代シンガー:クリスティアン・エリクソン。
ノーステイル2021年ラインナップ
ノーステイル現ラインナップ(l.to r.)Mikael Planefeldt(b), Bill Hudson(g), Guilherme Hirose(vo), Patrick Johansson(dr), Jimmy Pitts(Key)

YG:新作『ETERNAL FLAME』の曲作りを開始したのはいつでしたか? 収録曲の中には、クリスティアン在籍時に書かれたモノも含まれていますか?

BH:『ETERNAL FLAME』のために最初に出てきたアイデアは、「In The Name Of God」のイントロだった。それは(’19年夏に)東京にいた時、(ライヴ・イベント)“Evoken Fest”のバックステージで思い付いたんだよ。あの時のことは今でも憶えている。俺はベーシストのマイケル(ミカエル・プラーネフェルト)を呼び、「こっちへ来て、俺の頭の中で聴こえているモノを弾いてくれ」と頼んだこともね。

一方、「King Of Your Illusion」のように、まだセラドールにいた頃の’07年に書いた曲もある。この曲は(セラドール時代)一度もレコーディングされることがなかったんだけど、こうして今回、ノーステイルで使われることになった。それ以外は全体として、曲作りには1年ほどかけたかな? そして、そのスタートは日本だったんだよ。

YG:「King Of Your Illusion」の作曲クレジットに“Michael Gremio”とありますが、これは当時のセラドールのシンガー:マイケル・グレミオのことですよね?

BH:そうだよ。俺たちはあの曲をセラドールのために書いたんだ。(ノーステイルの)最初のアルバム(『WELCOME TO PARADISE』)に入っていた「Follow Me」もそうだったようにね。どちらも当時、セラドールの新作用に書いたんだけど、そのアルバムに取り掛かる前に、マイケルも俺もバンドを去ってしまった。あと…そういえば、(『ETERNAL FLAME』収録の)「Ride The Storm」のコーラスも、元々はセラドールのために書いたんだった。あの曲も当時、デモは作ったんだよ。

YG:『ETERNAL FLAME』の制作に当たっては、事前にどんなアルバムにしたいか、サウンドの方向性は決めていましたか?

BH:いや、ただ曲をどんどん書いていくだけだったよ。でもまぁ、幾つか見えていたことはあったな。ハッピーなメロディーを持った、ファースト・アルバムと同じサウンドのパワー・メタル・チューンが欲しい…とは思っていたし。あとは、「ブラジルの音楽を探究したい!」ということも。それでも、具体的なヴィジョンというのはなくて、とにかく曲を書き続けた。そしてある時点で、「よし、これでアルバムは完成したな!」と感じたんだ(笑)。

YG:『ETERNAL FLAME』を聴いて、『WELCOME TO PARADISE』よりもシンフォニックな要素が増し、パワー・メタリックな面も強化されたと思いました。

BH:それは意識したよ。凄く意図的だった。『ETERNAL FLAME』にある新しい要素の中には、俺としては、前作でもやりたかったことが含まれている。当時は、クリスティアンがその手のモノを書かなかったから、俺としても、伝統的な路線に留めておかなくてはならなかったのさ。シンガーに合わせるためにね。だからそういう意味では、今回の方がより自由に好きな曲が書けた…と言えるよ。

YG:『WELCOME TO PARADISE』には、ノーステイルというバンド名に相応しく、日本人がイメージする北欧らしいテイストが感じられました。一方、新作『ETERNAL FLAME』からは、ANGRAに近いヴァイブが感じられます。これはギルエルメ効果もあったでしょうか? あなた自身もブラジル出身で、先程「ブラジルの音楽を探究したい」ともおっしゃってもいましたが…?

BH:アンドレ・マトスが亡くなった時──あれは’19年のことだったと思うけど(註:’19年6月8日)、俺にとっては本当に大きな衝撃だった。当時、ANGRAのアルバムを遡って全部聴き返したぐらいさ。『ANGELS CRY』(’93年)も『HOLY LAND』(’96年)も、『FIREWORKS』(’98年)も、EP『FREEDOM CALL』(’96年)までも…ね。そうすることで、俺は自然にインスパイアされたんだ。

YG:ブラジルといえば、「The Land Of Mystic Rites」はなかなかエスニックな仕上がりですね? そして、ANGRAの同系の楽曲を思い出させます。

BH:ああ、その通りだよ。『HOLY LAND』は素晴らしいアルバムだからね!

YG:レコーディングはパート毎にそれぞれで行なったようですね? やはり、コロナ禍による移動制限が影響しましたか? 

BH:うん。でも、レコーディングは個別に行なわれたけど、プロデューサーのデニス・ワードが全面的に立ち会っていたんだ。“Audiomovers”というリモート録音用ソフトウェアの助けを借りて…ね! まぁ、パンデミックだったから仕方がない。レコーディングを始めた’20年の10月頃は、コロナ禍の状況が本当に酷かっただろ? 誰も移動出来ず、デニスはドイツにいて、メンバーは世界中に散らばっていた。だから、そうするしかなかったのさ。

でもね、正直言うと、俺はこのやり方も悪くない…と思ったんだ。元々、俺たちはみんなバラバラに離れたところに住んでいるんだからさ。勿論、次のアルバムでは──可能であれば、全員で集まりたいと思っているよ。少なくともリハーサルは一緒に行ないたい。今回は、全員では何もやれなかったんでね。リハらしいリハは、俺とドラマー(パトリック・ヨハンソン)とでやっただけだったし…。

YG:プロデュースをデニスに依頼したキッカケというと?

BH:だって、彼はハロウィンの新しいアルバム(’21年『HELLOWEEN』)を手掛けたんだよ! あれは、俺にとって’21年のベスト・アルバムなんだ。それに俺は、デニスを凄く尊敬している。彼は以前、ANGRAとも仕事をしていたんだからね。さっきも話した通り、俺は今回、ブラジルからの影響を取り入れようと考えていた。それなら、(ANGRAの’01年作『REBIRTH』や’04年作『TEMPLE OF SHADOWS』などを手掛けた)デニスこそ最適じゃないか! それから、俺は(デニスがかつてベースを務めた)ピンク・クリーム69の大ファンでもある。だから、彼にプロデュースしてもらえて、本当に光栄だったよ。

彼は今回、俺と一緒にプリ・プロダクションも行なったし、リモートで制作全体の指揮を執り、ミックスとマスタリングも手掛けた。それだけじゃなく、ライターとしてもクレジットされているんだ。彼とはSkypeで話しながら一緒に全曲を確認していったんだけど、そこには彼が書いたパートもあるからね。