ビル・ハドソン「ノーステイルの2nd『ETERNAL FLAME』では、より自由に好きな曲が書けた」

ビル・ハドソン「ノーステイルの2nd『ETERNAL FLAME』では、より自由に好きな曲が書けた」

“Shape Your Reality”は俺自身へのウェイクアップ・コール

ビル・ハドソン

YG:では、『ETERNAL FLAME』のレコーディングにおけるギター周りの使用機材を教えてください。

BH:ギターはすべてESP製だ。ESPのスタッフには感謝しかないよ。もう10年近くの付き合いになる。今回一番よく使ったのは、E-IIの7弦“Horizon FR-7 QM”だったと思う。グリーンのヤツだよ(Black Turquoise Burst)。それから、E-II“ST-1”も使った。ブルーのギターだ。あとはLTDの’21年モデルの、赤い“Arrow-1001”とホライズンの“H-1001”。他には何があったかな…。そうだ、エクリプスのオールドスクールな黒いモデルも弾いたよ。それと、“SN-1000”もだ。

YG:’19年来日時に手に入れたESP“Vintage Plus”はどうでしょう?

BH:いや、あれは来日公演で弾いただけで、日本に置いてきたよ。

YG:アコースティック・ギターは?

BH:「The Land Of Mystic Rites」でナイロン弦のアコを使ったけど、ブランド名は憶えていない。

YG:リズムとリードでギターを変えましたか?

BH:うん。リードの殆どは7弦の“Horizon FR-7”で弾いた。あと、ガス G.がデザインしたセイモア・ダンカンのピックアップ“Fire Blackouts System”搭載の“Arrow 1001”は、ソロでよく使ったな。リズムの多くは、トレモロ・ユニットのないギターで弾いている。エクリプスみたいな、チューニングの安定度が高いギターだね。基本的に、ピックアップを基準にギターを選んでいったんだ。例えば「Ride The Storm」や「Future Calls」のような速いパワー・チューンではアクティヴ・ピックアップが載ったモデルを、よりトラディショナルなメタル曲だったらパッシヴのを…という風にね。とにかく色々なギターを試してみて、レコーディングしながらどれが良いかチェックしていったのさ。

YG:全曲のチューニングを教えてください。

BH:「Only Human」「Wings Of Salvation」「Future Calls」「Eternal Flame」は全弦1音下げで、「The Land Of Mystic Rites」はドロップC。「Ride The Storm」「Judas Be My Guide」はノーマル・チューニングで、「Midnight Bells」「In The Name Of God」「Nature’s Revenge」「King Of Your Illusion」はBスタンダード──つまり7弦だね。ノーステイルでは、6弦は基本的に全弦1音下げ、7弦はノーマルにチューニングしてある。あと、インストの「Ivy」はオーケストレーションだけで、ギターは入っていない。

YG:アンプは今回もケンパー“Profiling Amplifier”でしたか?

BH:いや、今回は本物のアンプを使ったよ。EVHの“5150 III”ヘッド──それも、50Wの小さいアンプを、12×2のキャビネットを通してレコーディングしたんだ。ただ、俺はそのアンプの音を聴いて録ったんだけど、DIボックスを使ってシグナルを分離させ、デニスにはクリーン・サウンドで送った。そして彼も、やはりEVH“5150”を使ってリアンプした…というワケさ。

YG:エフェクトは、昔ながらのコンパクト・ペダルも使いましたか?

BH:エフェクトは何も使わなかった。いや…俺自身は(アイバニーズ)“Tube Screamer”やディレイを使ったけど、さっきも言ったようにデニスにはクリーンなシグナルを送ったから、最終的には、デニスが後からエフェクトを加えたんだ。「Midnight Bells」のワウも、デニスが後から掛けたんだよ。

YG:ギター・ソロを録る際は、あらかじめ練り込みますか? インプロで弾いた曲もあるでしょうか? 

BH:曲によるね。「Wings Of Salvation」なんかは正確に弾かなくてはいけなかったから、前もって書いたよ。でも、「Eternal Flame」や「King Of Your Illusion」なんかはインプロヴァイズだ。俺はインプロするのが好きなんだ。その場で浮かんだモノを弾いて、後からさらにアイデアを足してみたりもして…ね。但し、このアルバムで演奏したソロは、元々インプロで弾いたモノも一度止めて覚え直してから弾いている。そして、すべてワン・テイクで録られているんだよ。だって、ワン・テイクで弾けないソロは、ライヴでちゃんと弾けないだろ? だから、継ぎ接ぎしたり、パート毎に弾いたりはしていない。聴こえるソロはどれも“ライヴ録音”みたいなもんだね。

YG:ジミー(・ピッツ:key)とのソロ振り分けはどのようにして?

BH:すべて俺が考えているよ。誰がソロを弾くかを考えて、各パートを書いていくんだ。

YG:YG読者に特に注目して欲しいソロを挙げるとすれば?

BH:どれも気に入っていて、選ぶのは難しいけど──「In The Name Of God」かな。かなりフュージョン寄りのソロだから。アルバムに入っているソロの多くは、(HR/HMの)伝統的な手法で弾いたけど、この曲だけはアラン・ホールズワース全開でやったんだ(笑)。あと、「Nature’s Revenge」にはクレイジーなアルペジオが入っているから、それも是非チェックして欲しいな。

YG:「Future Calls」には、カイとティムのハンセン親子がゲスト参加し、息子のティムがソロを弾いていますね?

BH:カイとは’17年からの知り合いでね。俺がU.D.O.にいた時にツアーで出会って以来、連絡を取り合うようになった。実は、ノーステイルをスタートさせる際、デビュー作のプロデュースをカイに頼んだことがあってさ。でもそれは実現せず…本当は今回も頼みたかったんだけど、ハロウィンに復帰した今、カイは以前に増して忙しくしているだろうから、それはあきらめ、何をやって欲しいかは言わずに、とにかく「ゲスト参加してもらえませんか?」と言ってみたんだ。「歌ってくれても、ギターを弾いてくれてもイイです」「何でも好きなようにやってください」ってね(笑)。すると、「俺が少し歌って、息子がギターを弾くのはどう?」と提案してくれて、彼の言った通りにした。でも…ホントのことを言うと、俺は──カイの息子がギタリストだということを、全然知らなかったんだ(苦笑)。

YG:「Future Calls」のティムのソロはダブルになっていますが、彼がひとりで重ねたのですか?

BH:そうだよ。彼がオーヴァーダブも何もかも全部やって、それを送ってきてくれた。ティムにも自由にやってもらったんだ。

YG:日本盤にはボーナス・トラックとして(『WELCOME TO PARADISE』収録曲)「Shape Your Reality」のギルエルメ歌唱ヴァージョン「〜 ’21」が追加収録されていますが、前作からこの曲をピック・アップした理由は?

BH:俺にとって、最も重要な曲だからさ。そもそも、俺がノーステイルのために初めて書いた曲だったし、ある意味、これは俺についての曲でもあるんだよ。ノーステイルを組む前、俺は大きな仕事を山ほどやっていた。ドロ(・ペッシュ:DORO)やウド・ダークシュナイダー(U.D.O.)とプレイしていたし、サヴァタージやTRANS-SIBERIAN ORCHESTRAの一員にもなって、言ってみれば、やりたかったことは全部やった…という感じだったんだ。それでも、本音ではハッピーではなくてね…。何故なら、どれも“自分のバンド”ではなかったからさ。誰かの仕事をするのではなく、自分自身の活動をする──それが欠けていたんだ。

そこで、自分のバンド(ノーステイル)のために書いたのが「Shape Your Reality」で、これは俺自身へのウェイクアップ・コールでもあった。「お前がやりたいことをやりにいけ」…とね! そして今回、ギルエルメがオーディションでこの曲を歌っているのを見て、「みんなに聴いてもらいたい!」と思ったんだよ。ヴォーカルだけを差し替えていて、それ以外はファースト・アルバムのテイクだけどね。

ビル&ドロ・ペッシュ
ビル&ドロ・ペッシュ(vo:DORO)。’21年10月のUKツアーでの1枚。

YG:ギルエルメが歌うファーストの曲は、他にも「Bring Down The Mountain」の動画が公開されたり、「Follow Me」のシングルがリリースされていますが、その2曲もボーナス収録しようとは思いませんでしたか?

BH:思わなかったよ。だって、もう世界中が手に入れている音源だからね。日本のファンには、他の誰も持っていない特別なモノを提供したかったんだ!

YG:ありがとうございます!! ちなみに、ギルエルメ加入後、これまでにライヴを行なう機会はありましたか?

BH:まだないんだ。クリスティアンがいた時の日本での’19年のライヴ以来、俺たちはどこでもプレイ出来ていない。今頃(註:この取材が行なわれたのは’21年暮)は、ヨーロッパにいるハズだったんだけどね…。

YG:アンリーシュ・ジ・アーチャーズとの欧州ツアーが中止になってしまった件ですね?

BH:うん。これまたパンデミックのせいでね。でも、その前のDOROのツアーは行なったんだよ(註:10月下旬から11月末頃まで開催)。俺はオーストリアのショウ(10月23日のリンツ公演)には参加しなかったけど、それ以外の場所ではフル・タイムのメンバーとしてプレイした。イギリスではマイケル・シェンカーと一緒だったし、ドイツやスイスではヘッドライナーとして廻ったんだ。

YG:現場はどんな状況でしたか? 規制も色々とあったと思いますが…?

BH:場所によっては観客が全員マスクをしていたりもして、凄く奇妙な光景だったな…。当時はまるで、ツアーをしているのは俺たちだけ…という風にも感じられたし。ただ、多くのバンドがツアーをキャンセルしたり延期したりする中で、他のミュージシャン仲間よりも11本多くショウをやれたのは良かったと思う。

YG:今後、『ETERNAL FLAME』に伴うライヴ/ツアーの計画は立てていますか?

BH:今、新しいブッキング・エージェントが頑張ってくれているよ。俺たちとしては、早いこと日本に戻りたいんだけど…。まぁ、パンデミックの状況が許せば…という感じだな。でも、実現したら最高だ! 俺たちも期待しているから、みんなも楽しみに待っていて欲しいな…!!

NORTHTALE 2021 2