スウェーデンの熱血激走パワー・メタラー、パースエーダーが実に7年振りとなる新作『NECROMANCY』をリリース! 前作『THE FICTION MAZE』(’13年)から長らく待たされたが、まるでブラインド・ガーディアンがスラッシュ化したかのアグレッシヴ&ドラマティックなサウンドは不変で、ニュー・メンバーとしてノクターナル・ライツのフレドリック・マンベリ(g)が迎えられているのも話題だ。気になるそのメンバー・チェンジについて、またファン感涙の仕上がりとなった『NECROMANCY』について、リード・ギタリストでメイン・ソングライターのエミル・ノーベリに語ってもらった…!!
アルバム全体を通して一貫した感覚を持っている
YG:『THE FICTION MAZE』から7年振りとなるニュー・アルバムが遂にリリースされますね!
エミル・ノーベリ(以下EN):ああ。新作を作り上げた時はいつも最高の気分だ。作曲やレコーディングなど、その背後には多くの作業が伴うから、肩から重荷が下りたようにも感じているよ。ただ、アルバムが仕上がって、レコード会社に最終マスター音源を送るということは、良くも悪くも“もう何も変えることが出来ない”ということでもある。長いインターヴァルについては、『THE FICTION MAZE』とその前の『WHEN EDEN BURNS』(’06年)までの期間と比べれば、1年も短くなってるんだから、その意味では、僕たちは進歩したと言えるんじゃないかな?(笑)
僕としては『NECROMANCY』に、アルバム全体を通して一貫した感覚を持っている。『THE FICTION MAZE』には何曲かキラー・トラックが入っていたけど、ところどころ少しちぐはぐな感覚もあったからね。それに、今回はプロダクションもより良くなっていて、その点については、次のアルバムでもまた高めていきたいと思っているよ。
YG:『THE FICTION MAZE』リリース後には、あまり大規模なライヴ/ツアーを行なわなかったようですね?
EN:幾つかフェスに出演したけど、ツアーに関しては、何故だかプロモーターの関心をあまり惹くことが出来なくてさ…。昨今、レーベルからの支援は望めないし、バンドの主な収入源はツアーだから、なかなか厳しい状況だね。悲しいかな、大金を支払ってツアーに組み込んでもらうことも、今では当たり前になっている。でも、それには大きなリスクが伴うから…。
でも、’15年には“Sabaton Open Air”に出演することが出来て、あれは凄く楽しかった。それがフレドリック・マンベリと一緒にやった最初のギグで、沢山のオーディエンスの前でプレイし、昔の友達にも会うことが出来たんだ。最高のスウェーデンの夏空の下、とても素晴らしい週末になったよ。
YG:おっしゃる通り、その“Sabaton Open Air”に出演した際、当時あなたのギター・パートナーだったダニエル・スンドボムが不在で、その後、彼は’16年に脱退してしまいましたね? 何が原因だったのでしょう?
EN:彼は「家族を大切にしたい」という理由で、前々から辞めること考えていたようだ。でも、僕たちはそれほどギグをやらないし、アルバムのリリース間隔も長いから、何とかダニエルを説得してとどまらせていたのさ。結果的に、彼は脱退してしまったけど、僕たちの間に悪感情とかそういったモノは一切ない。あれは誰しもが経験する、人生におけるひとつの決断だった──それだけだよ。
YG:ノクターナル・ライツのフレドリックに声を掛けたのは?
EN:フレドリックはずっと前からの友人で、当時はノクターナル・ライツの活動も止まっていたからさ。ともかく、僕たちにはギタリストが必要で、その穴を埋めてもらえてハッピーだったし、彼もステージでプレイする機会を得て楽しんだようだ。
YG:その後、’19年にはベースのフレドリック・ヘッドストレムが脱退してしまいましたね?
EN:正直、どうして彼が辞めてしまったのか分からないんだ。’00年からずっと一緒にプレイしてきたから、本当にショックな出来事だったよ。ただ「バンドを離れる」とだけメッセージが送られてきて、それ以来、ほぼ音信不通の状態が続いているんだ…。
YG:その後、後任は迎えず、ヴォーカルのイェンス・カールソンがベースを兼任することにしたのはどうしてですか?
EN:新作については、誰かをわざわざ連れてくるまでもないし、自分たちでベース・パートをコナすことにしたんだ。但し、今後どうなるかはまだ分からない。(新任ベーシストが)必要になった場合、頭の中に何人か候補はいるしね。
YG:’19年3月にウメオで行なわれたフェス“House Of Metal”に出演した際は、イェンスがベースを弾きながら歌ったんですよね?
EN:うん。彼が「やってみよう」と言ったからね。でも、凄く大変だったみたいだ。みんなも知っての通り、彼は以前、ギターを弾きながら歌っていたけど、僕たちの音楽は『WHEN EDEN BURNS』以降、ちょっと複雑になっているから…。きっと、もう二度とやらないんじゃないかな。やっぱり、ファンにベストな音楽を届けるためには専任メンバーが必要なんだよ。
YG:ニュー・アルバム『NECROMANCY』の制作は、フレドリック・ヘッドストレムの脱退前から進められていたようですが、彼はレコーディングで全く弾いていないのですか?
EN:彼はアルバムに参加していないよ。ベース・パートはイェンスと僕が担当し、テクニカルなパートは僕が引き受けたんだ。
YG:『NECROMANCY』には、早速フレドリック・マンベリと共作した曲も収められていますね?
EN:彼は正に“リフ製造機”さ。沢山のリフを引き出しにしまい込んでいる。その彼のアイディアをふるいに掛け、幾つかのリフを僕が書いた曲に組み込んだところ、とても上手くいったんだ。フレドリックが書いた攻撃的かつスラッシーなリフは、ニュー・アルバムにとても見事にハマった。僕たちとしても、これまでとは違ったスタイルを(楽曲に)ブレンドするのは楽しかったよ。
YG:『NECROMANCY』は当初、’17年のリリースを目指していて、その計画は延期されたものの、’19年春の時点で、もうレコーディング作業は終わっていたようですね? そこからリリースまで、さらに1年半以上を要したのはどうしてですか?
EN:リリースが遅れた理由のひとつには、所属レーベルの問題があった。前のレーベル(Inner Wound Recordings)がタオルを投げ入れることになり、そのあと始末をしなくちゃならなかったし、それから新しいレーベルを探したんだけど、交渉などに時間を取られてしまったんだ。あとは勿論、新型コロナウイルスの感染拡大などにより、新しいレーベル(Frontiers Music)のスケジューリングが狂ったというのもある。色々と酷いことが続いたけど、今ようやく正しい道筋に乗ったと感じているよ。
YG:『NECROMANCY』のサウンドは、これまでの延長線上でありながら、これまでで最もアグレッシヴでダークな仕上がりとも言えますね? これにはフレドリック・マンベリの影響もあると思いますか?
EN:勿論さ。彼は凄くスラッシーなリフを提供してくれたし、僕自身も、これまでのアルバムよりもややダークな曲を書いたんだ。その結果、よりファストで、少し暗いサウンドになったけど、僕たちとしてはこの仕上がりにとても満足しているよ。
YG:今回、ギター・パートのレコーディングは2人で行ないましたか?
EN:いや、僕が加わって以降、どのアルバムも僕がすべてのギター・パートを録音してきたよ。自分が一番タイトだとか、そういう理由ではなくて、そもそもすべてをまとめ上げるのは僕なんだから、レコーディングもひとりでやってしまった方が効率的なのさ。
YG:では、『NECROMANCY』のレコーディング使用機材を教えてください。
EN:僕は’00年代の前半からアイバニーズの“1077XL”を弾いている。7弦ギターで、27フレット仕様。アグレッシヴな演奏に向いているんだ。リズム・ギターはすべてドライで録ったけど、どんなソフトを使ったのかは憶えていない。ソロとリードはランドール“RM100”を使った。これはモジュラー・ヘッドで、好みに合わせてプリアンプ部を交換出来るから、今回は主に“UltraXL”、それから“Plexx”を使ったよ。
YG:『NECROMANCY』の中で、最も気に入っているギター・ソロというと?
EN:どのソロにも満足しているけど、敢えて選ぶとしたら「The Curse Unbound」かな。この曲にはクセのあるブロークン・コードが使われていて、それもプレイをクールにしている。
YG:では最後に、今後の予定を教えてください。今はコロナ禍によりライヴ/ツアーを行なうのが難しいと思いますが、例えば配信ライヴなどの計画はありますか?
EN:今はとりあえず、新作がプレスやファンからどう受け入れられるのかを確かめてみよう。可能であれば、来年(’21年)は何回かライヴが出来るとイイんだけど…。スウェーデン国外でも是非やりたいね。日本にも行けたら最高だ! 僕とイェンスは、かつてサヴェージ・サーカスで日本に行ってプレイしたことがあり、素晴らしい思い出になっているからね…!!
INFO
PERSUADER
CD | マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン | 2020年12月4日発売
PERSUADER
CD | マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン | 2013年
PERSUADER
CD | マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン | 2006年