バンドのマネージャーがシグネチュア・ペダルを作ってくれた
YG:それでは、本日のライヴで使用する機材について教えてください。
MH:つい最近、シャーベルとエンドースしたんだ。今日のライヴではジェイク・E・リーのシグネチュア・モデル(編註:おそらく“Jake E Lee Signature PRO-MOD SO-CAL Style 1 HSS HT RW”/上写真を参照)を使うよ。あと、よく似たルックスだけどフェルナンデスのギターも使う予定だ。
EM:フェルナンデスは、日本のブランドなんだよね。
MH:そう、1986年製だったかな。アームのついていないモデルで、いわゆるスーパー・ストラト的なタイプだよ。ハムバッカーとシングルコイルが載っている。詳しいモデル名については、あまりわからないんだけど…(苦笑)。
EM:eBayで日本の出品者から買ったんだって?
MH:そう、東京から送られてきたんだよ。それが今、東京に帰ってきていることになるね(笑)。
EM:僕のギターはグレッチ“G6136 White Falcon”だ。これも日本製だよ。あとは、ギブソン・レスポール・カスタム。こっちは今晩使うかはわからないけど、多分グレッチの方になるだろう。フルアコだけど、ハード・ロックに合うプレイができるからね。
YG:以前から使用されていますが、そのモデルを使い始めたきっかけは何だったのでしょう?
EM:それは、マルコム・ヤングが『BACK IN BLACK』(1980年)のツアーで弾いていたからだ。彼のサウンドが好きだから選んだというわけ。それにとっても綺麗でカッコよくて、ボディーもチェロみたいに大きい!(笑) 白と金のカラーリングも良いし、音も弾き心地も最高だ。すごく気に入っているよ。
YG:グレッチ“White Falcon”といえば、他にブライアン・セッツァーでも知られていますが、そちらからの影響ということではないのですね?
EM:そう、マルコムからだ。
YG:ところでマグナスは、以前のMVなどでクレイマーのモデルも使っていたようですが…?
MH:いや、もうライヴで弾くことはないんだ。アームの搭載されたモデルをスタジオでは使うことがあるけどね。
EM:僕も、スタジオでクレイマーを使っている。素晴らしいギターだ。でも、ライヴにはグレッチだね。こっちの方が楽しいし、見た目もちょっと変わっているし。
YG:エフェクト関係ですが…バンドのインスタグラム動画によると、マグナスのペダルボードにはJäger MUSIKAPPARATURの“Wired Drive”、MXRのディレイ“Carbon Copy”、同社のコーラス“ZW-38 Black Label Chorus”とフェイザー“Phase 95”、ホライゾン・ディヴァイス“Flux Echo”、TCエレクトロニック“Polytune 3 Mini”、Line 6“HX Stomp”が組み込まれているようですね。
MH:ああ、今晩のライヴでもこれらのペダルをすベて使うよ。
YG:“Wired Drive”というのは、エクリプスのシグネチュア・ペダルだそうですが…。
MH:そう。バンドのマネージャーがダニエル・ジャガー(Jäger)といって、俺たちのためにカスタムのオーヴァードライヴ・ペダルを作ってくれたんだ。
EM:基本的にはDOD“Overdrive Preamp 250”と同じ回路が元になっているけど、そのものではない。微調整を加えて、ハード・ロックに最適なサウンドが出るようにアップデートさせたんだ。マグナスが欲しいスペックのリクエストを出して、それを反映してもらった。僕も数値を変えたりといった開発には一緒に関わったよ。
MH:リズム弾きに向いたタイトなサウンドと、ソロに使える太いサウンドを切り替えられるスイッチがついている。
EM:バッキングの時に低域をすっきりまとまった音にすることができるし、リード用に切り替えればソロを弾く時に十分に太い音が得られるというわけ。
YG:2人ともこのペダルを使っているのですか?
MH:ああ、俺はライヴで使っているけど…。
EM:僕はスタジオで使っているよ。ちなみに僕のライヴ用の機材はとっても小規模にしてあって、飛行機移動の際も簡単に持ち運べるようにしている。
YG:具体的には何が入っていますか?
EM:“HX Stomp”と、TCエレクトロニックのリヴァーブやディレイ、“Polytune”、それからムーアーのディレイだ。最小限の機材に留めているから、ライヴでは本物のアンプやキャビネットを使うのもやめているんだ。2人とも“HX Stomp”のアンプ機能を活用してPAに繋いでいる。セッティングとしては簡素なものだけど、音はすごく良いよ。スタジオで作った独自のIRデータも入れてあるから、僕らがいつも使っているキャビネットの音をそのまま出すことができる。本当は2人とも本物のアンプが好きだけど、この方が手軽なんだ(笑)。使う音自体はとてもシンプルで、歪みとクリーン、クランチの3種類を切り替えている。
MH:俺はリズム、リード、クリーンを使い分けているよ。
EM:ただ、スタジオでは常に本物のアンプを使っていて、こういったデジタル機材は決して使わない。
YG:ではスタジオでは、どのようなアンプを使っていますか?
EM:僕はウィザード。カナダのブランドで、“Modern Classic”というモデルだ。これまでに聴いたなかでベストな音を出してくれる。
MH:あれはすごく良いよね。
EM:他には改造済みのメサブギー“Triple Rectifier”とマーシャルが1台。スウェーデンにあるHermansson Amplificationという小さな工房でやってもらった。ヘヴィ・メタル用アンプの製作や改造も請け負ってくれる、最近評判の会社なんだ。素晴らしいサウンドにしてくれるよ。これまでに、メシュガーのために12台のアンプを手がけたりもしているそうだ。僕の家から車で1時間の距離にあるよ。
MH:スタジオでは、“5150”のアンプもよく使ったね。ソロは全部これで弾いている。それと、古いマーシャルもいくつかあった。“SL-X”のアニヴァーサリー・モデルとかね。アンプはたくさん持ってるよ。
EM:そうそう。でもやっぱりウィザードだな…あれは素晴らしい。本当に良いんだ。それに、マルコム・ヤングも使っていた。…ところで、音源ではマグナスのギター・パートは常にスピーカーの右チャンネルから聴こえてくるよ。それで僕は常に左。AC/DCでもアンガスは右チャンネルでマルコムが左でしょ? つまり彼がアンガスで、僕がマルコムってわけ(笑)。
YG:全部マルコムに繋がっているんですね(笑)。
MH:まあ、そういうことだね(笑)。
YG:ちなみに、お互いのことをギター・プレイヤーとしてどのように見ていますか?
MH:エリックは俺が知るなかで最高のリズム・ギタリストの1人だね。実に強固で安定したリズムを刻むことができる。俺の右手じゃ、同じようにはできないよ。スレイヤーのファストなリフだって彼は問題なく弾けるし、機械みたいに正確だ(笑)。
EM:(笑)マグナスはリード・ギタリストとして、とても素晴らしいよ。しかも新しいアルバムを出すたびに上達している。初めの頃はリズム・プレイで戸惑うこともあったみたいで、僕が2人分のバッキングをレコーディングしていたこともあったけど、今ではそんなことは起こらないよ。
MH:そうだな、昔はできなかったことができるようになった。
EM:それに、彼のリード・プレイはヴィブラートもフィールも、すべてが素晴らしい。僕が頭で思いついたフレーズを実現させられるんだ。「“タラララタラララ、ウィー♪”って弾いてみて!」というと、その通りにできる(笑)。僕はそこまで速弾きができないし、そういうものを弾けるフィールも持ち合わせていないけど、僕が思いついたものは彼が弾いてくれる。それが凄いよ。
YG:それでは、日本を出た後の予定について教えてください。
MH:次の土曜日(9月17日)にはライヴが1本控えていて、それが終わったら約1ヶ月間の休暇を取る。
EM:今年はたくさんのショウに出た。夏の間中、フェスティヴァルに出突っ張りだったからね、4週間くらいゆっくりするよ。家に帰って、子供や家族と過ごす時間が必要だ。
YG:お2人ともお忙しいなか、どうもありがとうございました。今晩のライヴも楽しみにしています。最後になりますが、YG読者やファンの皆さんにメッセージをいただけますか?
EM:もっとたくさんの人がギターを弾くようになってほしいね。世界にはロックンロールなギターが求められているんだ。ラップやエレクトロニカ、ダンス・ミュージックなどばかり聴いていないで、もっとギター・ミュージックに親しんでくれると良いな。
MH:初めてヤング・ギターの取材が受けられて光栄だよ。この雑誌のことは随分前から知っているからね。
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インタビュー&文●栁沢祐花 Yuuka Yanagisawa Pix●Takumi Nakajima