エクリプスのギター・チームにインタビュー:待望の来日と新作『WIRED』への思いを語る!

エクリプスのギター・チームにインタビュー:待望の来日と新作『WIRED』への思いを語る!

去る9月に大阪&東京の2日間で来日公演を行なった、スウェディッシュ・メロディアス・ハードのベテラン:エクリプス。2日目の東京公演は渋谷WWWにて行なわれ、大盛況となった。その模様は当ウェブのレポートをご覧いただくこととして、YGは当日、ショウを間近に控えたエリック・モーテンソン(vo, g)とマグナス・ヘンリクソン(g)にインタビューする機会を得た。今回のライヴについての話に加え、ギター・プレイヤーとしての2人の経歴やバンド結成の経緯、そして最新作『WIRED』(2021年)の制作秘話など色々と語り尽くしてくれた彼らからは、20年以上の長い付き合いゆえの確かな信頼と友情が垣間見られた。その熱いトークの数々を、最後までお楽しみあれ!

アルバム契約の話が来たけど、バンドを組んでいなくて…

エクリプス バンド

YG:昨日11日には大阪でのショウが行なわれましたが、いかがでしたか? 

エリック・モーテンソン(以下EM):良かったよ! ちょっと不思議な感じでもあったな…オーディエンスは拍手をしてくれるし、笑っている表情はマスク越しに何となく分かるんだけど、(感染予防対策で)一人ひとり距離を取ってフロアに立っているし、声を出して一緒に歌うことができないからね。以前のライヴとはとても違った感覚だった。

YG:当初、エクリプスは2020年に日本公演を予定していましたが、パンデミックの影響で2度も延期となってしまいました。それでも中止にすることなく、この度やっと実現しましたね。「何としてでも日本でライヴをしたい!」という強い想いが感じられましたが…? 

マグナス・ヘンリクソン(以下MH):その通り、決してあきらめたりなんかしないよ。

EM:日本に来られるチャンスがあるなら、絶対に手に入れる。ここにいるのが好きなんだ、素晴らしいところだから。日本のすべてが好きなんだよ。

YG:ファンの方々も来日を心から喜んでいるはずです。日本に到着した後、観光に行く機会はありましたか?  

MH:2日前の土曜の夜に着いたんだけど、その日は時間があったので、夕食に出かけて街を歩いたよ。

EM:昨日もサウンド・チェックの前や、ショウの後に大阪を見て回ることができた。前回は新幹線で来て、終演後にそのまま引き返してしまったからね。今回初めて、街をゆっくり見ることができたんだ。とても良かったよ。

MH:今日のショウが終わったら、あと3日間東京に滞在する。観光を楽しむつもりだよ。

YG:ぜひ楽しんでください! ──さて、ヤング・ギターでは初インタビューということですので、お2人のバイオグラフィについてもお聞きしたいと思います。まずは、ギターを始めた経緯について教えていただけますか? 

EM:10〜11歳ぐらいのことだったかな。AC/DCの『FLICK OF THE SWITCH』(1983年)というアルバムがきっかけでね。それまでにもハード・ロックは聴いていたんだけど、このアルバムを借りてレコード・プレイヤーに乗せて聴いた時、初めてギターという楽器の音をちゃんと認識できたんだ。おかげで、「ギターを弾きたい!」と本当に思わされて、それから弾くようになった。

YG:エリックは元々、ヴォーカルとギターのどちらを先に始めたのですか?  

EM:ギターだけだったよ。実は、歌は歌いたくなかったんだ。単にギタリストになりたかった。だけど…いろんなバンドに入るたび、メンバーで交互にヴォーカルを執っていた。それでも、自分が歌うとあまり良い感じでなかったのに、他の人が歌うともっと良くなくて…(苦笑)。だから僕は、どのバンドでもシンガーを務めてきたんだ。『BLEED & SCREAM』(2012年)を出すまでは、いつも「今度こそ、本物のシンガーを見つけよう。そしたら僕はギターだけ弾いていられる」と話していたよ。でも、今となっては自分がシンガーだという自覚があるから、もう大丈夫だ(笑)。

YG:ギタリストとしては、誰に影響を受けたのでしょうか? 

EM:AC/DCのアンガス・ヤングとマルコム・ヤングだ。ロックンロールなギターが好きでね。でも、イングヴェイみたいなシュレッドも好きだよ。それに、クラシックなスラッシュ・メタルもたくさん聴いて育った。昔のメタリカやスレイヤーの曲は全部弾けるくらいだ。

エリック インタビュー中
Erik Mårtensson

YG:ちなみにヴォーカリストでは、どのような方が好きですか?  

EM:うーん、色々いるね。子供の頃はヨーロッパのジョーイ・テンペストが大好きだったよ。あとは、MR.BIGのエリック・マーティンやマイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイ、ザ・キラーズのブランドン・フラワーズも好きだな。デイヴィッド・カヴァデールや、ポール・スタンレーも。素晴らしいシンガーはたくさんいる。

YG:マグナスは、いつ頃ギターを始めましたか? 

MH:9歳の時だ。親父が弾き方を教えてくれたよ。主に’60年代の音楽…エルヴィス・プレスリーやザ・ビートルズを弾いていたな。その頃はスペイン製のアコースティック・ギターを使っていて、16歳になってからエレクトリック・ギターを手に入れた。そこからはシュレッドの練習をしたよ。イングヴェイ・マルムスティーンやリッチー・ブラックモアなんかを聴いていた。

YG:彼らに大きな影響を受けたのでしょうか? 

MH:ギタリストとしては、もちろんそうだね。

EM:マグナスはソロをやるタイプのギター・プレイヤーでね。僕はどっちかというと、リズム・ギタリストなんだ。

MH:良いコンビだね。

YG:エクリプスを結成した経緯についてもお聞かせいただけますか?  

MH:俺とエリックは、ストックホルムにある同じ音楽学校に通っていたんだ。入学して2週間後だったかな…ほとんどの生徒はジャズなんかが好きだった一方で、俺たちは音楽の好みが似ていることにすぐ気づいた。それから、エリックは在学中にアルバム契約の話が来たんで、レーベルに送るためのデモ音源を4曲レコーディングしていたんだけど、バンドを組んでいなくてね。「これらの曲でソロを弾いてくれないか? それと、曲作りを手伝ってほしいんだけど」と俺に頼んできたんだ。それで、俺は「良いよ、もちろんだ!」と応えた。そうして、エクリプスは始まったんだ。アルバムを作ることが先決だったから、バンド名は後から思いついた。

マグナス インタビュー中
Magnus Henriksson

ケルティックなサウンドはスウェーデンのフォークに似ている

YG:昨年エクリプスは結成20周年を迎え、ニュー・アルバム『WIRED』がリリースされました。今回のツアーのメインとなる本作ですが、とてもエネルギッシュかつエキサイティングな作品に仕上がっていますね。聴くとポジティヴな気分になれるような楽曲が目白押しですが、実際はどのようなコンセプトで制作したのでしょう? 

EM:パンデミックが大流行していた間、世の中には落ち込んでいる人がたくさんいた…特にミュージシャンは仕事を失った人も多く、作る曲もダークで憂鬱なものが多かったんだ。だから、僕らはその逆を行こうと思った。パーティー・アルバムを作って、パンデミックが終わったらこのアルバムをライヴでプレイしていっぱい楽しもうぜ、というつもりでね。だからどの曲も、ファストで楽しくロックンロール的で、ポジティヴなヴァイブがたくさん詰まっている。良い仕上がりになったと思っているよ。

YG:エリックは本作のプロデュースもしていますが、ギター・パートはどのようにディレクションしているのでしょう? ソロはマグナスにお任せしているのですか? 

EM:いや、ギター・パートはすベて一緒に作っているよ。バッキングもソロも、同じ部屋で膝を突き合わせて話し合っては試していくんだ。だいたい僕が1週間前から先に準備を始めていて、アンプなどをテストして「今回はこういうサウンドで行こう」という方向性を考えてから、それをマグナスに提示する。

MH:ああ、そうだね。

EM:君(マグナス)はあまり、マイキングとかには興味がないしね。

MH:そうなんだ。それに、君が何をやろうとも、良い仕事をしてくれることはわかっているから。…というわけで、ギター・サウンドに関してはエリックを信じているんだよ。ソロに関するインプットも彼からもらっている。

EM:ギター・パートはもちろん、曲作りにおけるすベてがチームワークなんだ。僕は一応プロデューサーではあるけど、最善を尽くすためにバンド全員が一丸となって作っている。

エリック&マグナス インタビュー中

YG:では、本作の収録曲についてもいくつかお伺いします。まず、4曲目の「Run For Cover」や10曲目の「Things We Love」では、ゲイリー・ムーアの「Wild Frontier」(1987年『WILD FRONTIER』収録)におけるケルティックな要素にも通じるような、民謡的なギター・フレーズが強く印象に残りました。これはスウェーデン特有のものなのか、わからなかったのですが…親しみのあるものなのでしょうか? 

MH:ケルティックなサウンドというのは、スウェーデンのフォーク・ミュージックによく似ているところがある。だから、ゲイリーの音楽にあるような要素が聴こえてくるんだ。アイルランドとスウェーデンのフォーク音楽は、それほど遠い関係のものではないんだよ。

EM:歴史を遡れば、アイルランドは僕らと同じルーツを持っている。ヴァイキングの時代に、1つの民族がそれぞれの国に移動していったから。だから、ああいったアイリッシュな音楽は僕らにとっても弾きやすいし、馴染みやすいんだ。それと同時に、僕たちがスウェーデン風の音楽を弾くと、「アイリッシュだな」と受け取る人も多い。

YG:興味深いお話ですね…。また、マグナスのギター・プレイについてですが、非常にパワフルでヴィブラートも幅が広いですし、1音1音に魂が込められていると感じました。

MH:ありがとう。

マグナス ギター

YG:アルバム全体でそういった点は意識していましたか? もしくは、ただ自然に出てきたものなのでしょうか? 

MH:それは常に心がけていることなんだ。なぜなら、ソロはトーンとヴィブラートで決まるものだから。これがなければ、聴く価値のないソロになってしまうと自分では思っている。俺は、良い音で良いタイミングで、しっかりとしたヴィブラートをかけるギタリストが好きでね。お手本はマイケル・シェンカーやゲイリー、それにジョン・ノーラム。彼らにこの手のプレイをさせたら最高なんだ。たとえ弾く音を間違えたとしても、音色がとても美しくゴージャスなヴィブラートができるから、どんな音を弾いたって良いプレイになる。…ちなみにそれが理由で、俺はフロイドローズのトレモロ・ユニットがついたギターを使わなくなったんだ。ヴィブラートが綺麗に決まらなくなるし、サウンドが失われてしまうと感じたんでね。それで他のギターを使い始めたら、本来のヴィブラートの感覚が戻ってきて「ああ、これだったのか! 俺らしいサウンドが出せるようになった」と思ったよ。

EM:チューニングを安定させるためにフロイドローズはとても有効だけど、弦を強くヒットするとユニットが揺れて、音が不安定になってしまうんだよね。

MH:エリックも自分のヴォーカルが音を取りづらくなるという理由で、フロイドローズ付きから別のギターに持ち替えたんだ。ユニット部分が常に震えている感じだからね。

YG:なるほど。また、8曲目の「Bite The Bullet」ですが、ソロ・パートが他の曲とはサウンドも雰囲気もかなり異なり、ロカビリーやサーフ・ミュージックのような要素も感じられました。もしや、これはエリックが弾いているのですか? 

EM:全くその通り、僕の唯一のソロだ。ザ・シャドウズみたいな雰囲気だよ。僕もマグナスもああいう音楽が好きだからね。ちょっとおふざけでやってみることにしたんだけど…何で入れたんだっけ? 

MH:覚えてないな。

EM:とにかく、他の曲とは違うトゥワンギーなサウンドにしたんだ。とてもクールになったね。

エリック ギター

YG:『WIRED』のなかで、特にお2人がお気に入りの曲を挙げるとすれば? 

MH:俺は「Run For Cover」だな。メロディーが好きなんだ。サウンドやグルーヴもちょっと変わっていて、ヨーロッパの「The Final Countdown」(1986年『THE FINAL COUNTDOWN』収録)を思わせるところもある。弾くのがとっても好きな曲だよ。

EM:僕の好きな曲はたくさんあるけど、「Twilight」を挙げておこうか。ファストで、良い意味で強烈だし、超楽しい。気に入っているよ。