エセリアル・シン『TIME OF REQUIEM PART. II』ギター陣インタビュー!

エセリアル・シン『TIME OF REQUIEM PART. II』ギター陣インタビュー!

海外でも精力的にライヴ/ツアーを行なっている“Elegiac Black Metal Horde”エセリアル・シンが、コンセプト2部作の続編となる『TIME OF REQUIEM PART. II』を先頃リリース! 和の要素を散りばめたそのサウンドは、北欧由来のメロディック・ブラックを下敷きに、メロパワ、メロデスに加えてペイガン/ヴァイキング・メタル、ディプレッシヴ・ブラックまでをも呑み込み、さらに間口を広げるも、それでいて新作では随所に激烈&暴虐のルーツがしっかり刻印されているのも見逃せない。’20年以来となるギター・チーム:Kikka Schwarzfleet&Syngolet Nollruneに話を訊いた!

フランス公演でピカチュウを抱えた女の子が…(Syngolet)

YG:新作について訊く前に、今年1月に行なった、フレッシュゴッド・アポカリプスとの欧州ツアーのことから。Kikkaさんは参加出来なかったそうですが、どんなツアーになりましたか?

Kikka:最初に話がきたのは、2020年の正月頃だったかな? まだSyngoletが加入する前だよね?

Syngolet:そう、僕が加入する前からツアーは決まってました。元々は2020年の秋に予定されていたんですけど、コロナの影響で延期に次ぐ延期となり、ようやく実現したのが今年の1月だったんです。

2023年ツアー告知ポスター

Kikka:ところが僕は、2年前から耳の平衡機能がおかしくなってしまって、一時はスタジオにも行けないぐらい体調が悪くなって…。それで、ここ最近の海外遠征はやむを得ず欠席させてもらってました。

Syngolet:オランダ、ベルギー、イギリス、フランス、スイスで全6公演あったんですが、僕は海外ツアーが初めてだったので、どの国も印象に残ってます。特に…というとフランスかな? 客席最前列にピカチュウのぬいぐるみを抱えた女の子がいて、終演後に「Amazing Guitar…Arigato」と声を掛けられたんです。「アリガト」と日本語だったので、思わず日本語でそのまま「ありがとうございます」と返しちゃいました(笑)。

YG:そのツアーに出る前に、ドラマーが交代しましたね?

Syngolet:前任ドラマー(Gensui Fitzgerald)が(体調不良で)プレイ出来なくなり、SNS等で募集を掛けていたところ、応募してきたのがMeet(Schattenclown)でした。

Kikka:彼が加入したことによって、再びバンドが動き出しましたね。若くて才能のあるドラマーなので、これから経験を積むことで、さらにどんどん成長していくと思ってます。

エセリアル・シン
[from l.]Syngolet Nollrune(g)、Seth Maelstrom(b)、Yama Darkblaze(vo)、Meet Schattenclown(dr)、Hal Purprite(key)、Kikka Schwarzfleet(g)
海外公演

▲今年1月15日、英ロンドン公演終演後の1枚。尚、同ツアーにはKikkaとHalが不参加で、サポート・ギタリスト:Adam(写真左)が同行した。

YG:新作『TIME OF REQUIEM PART. II』は、当初’22年2月のリリースを目指していたそうですが、今年までズレ込んだのは、やはりコロナ禍の影響が大きかったのでしょうか?

Syngolet:コロナの影響というより、ドラマー交代の影響の方が大きいかな?

Kikka:まぁでも、エセリアル・シン(以下ES)のリリースが遅れるのはいつものことだからね(苦笑)。無論、制作に時間を費やした分、素晴らしい作品になりましたが。

YG:おっしゃる通り、『〜PART. II』は制作期間が長かったため、また、同『〜PART.I』(’21年)制作時にもうあった曲や、’20年リリースのEP『KOKUU』収録曲なども含まれていて、Syngoletさん加入前のテイクがかなりありますよね? Kikkaさんとしては、そういった数年前のテイクは「改めて録り直したい」という気持ちはありませんでしたか?

Kikka:スケジュールの関係もあり、録り直しが難しかったのもあるけど、当時のテイクが気に入っていたのでそのまま使っています。というか、ギターに限らずすべてのパートが当時のままで、ミックスだけ新しくなっているんです。当時は正規メンバーのギタリストが自分だけだったので、ギター・パートすべてをひとりで弾いていますが、コロナ禍の最中はスタジオに入ることもままならず、アレンジも含めレコーディングのやり取りすべてをZOOMで行なっていました。あれからもう3年も経つんですね〜。

YG:Syngoletさん加入後の楽曲は6曲ありますが、それらは全曲2人でレコーディングしていますか?

Kikka:勿論です。リズム・パートは基本的に2人で1本ずつ弾いていて、リード系は曲によって担当パートを振り分けています。

Syngolet:デモの段階でギターの振り分けがされていたので、それに沿って録っていった感じですね。

Syngolet Nollrune
Syngolet Nollrune

YG:ギター・パートは今回もドライで録って、あとからリアンプしたのでしょうか?

Kikka:ESのレコーディングは、すべてリアンプ形式で録っています。

Syngolet:前作と同じで、エンジニアにお任せです。

Kikka:ただ、さっきも話にも出た通り、新しくレコーディングした曲と前作などから持ち越された楽曲が共存しているので、両者の音を揃える必要があり、エンジニアには「前作と同じセッティングで」とリクエストしました。

激しいだけがブラック・メタルではない(Kikka)

エセリアル・シン ライヴ

YG:今回のレコーディングでの使用ギターをそれぞれ教えてください。

Kikka:ESのレコーディングはどれも、ジャクソン・スターズの“Soloist”1本だけです。ブラック・メタルらしい音圧を出すために、ブリッジ・ピックアップをセイモア・ダンカンのアクティヴ・タイプ“AHB-1”に載せ替えています。ただ今回は「Blizzard Forest」のクリーン・ギターだけ、例外的にフェンダー・ストラトキャスターで録りました。あのセクションには、どうしてもシングルコイルの音が欲しかったので。

Syngolet:僕が弾いたのは、エドワーズの大村孝佳さんプロデュース・モデルの7弦“E-SN7-210TO”を、自分でカスタマイズしたギターです。ライヴもレコーディングもコレ1本ですね。

YG:今回も全曲全弦1音下げチューニングでしょうか?

Kikka:ESの楽曲はすべて全弦1音下げです。Syngoletは7弦なので、これまでのES作品にはない重低音が出てきますよね(笑)。

YG:今回も殆どの楽曲をヴォーカルのYama(Darkblaze)さんが手掛けていますが、彼からお2人に曲が渡される時点でギター・パートはどの程度固まっているのですか?

Kikka:デモの段階だと、大体のコード進行やリフが決まっている程度かな。だから、わりと自由にアレンジが出来るんです。細かいフレーズの調整やハーモニーの追加などは、主に自分が担当しています。

Syngolet:流れを見て、部分的にコードを変えたりとか。あと「Nightmare Never Muted」は、「今イチなところがあるので、(2人で)何か考えて」と(Yamaに)言われたので、僕のアイデアも入ってます。

YG:『〜PART. II』にはクリーン・ギターが印象的な曲が幾つかありますが、ああいったアレンジもYamaさんがあらかじめ決めているのでしょうか?

Kikka:ああ、前作あたりからクリーン・ギターの登場頻度が増えましたね。勿論、Yamaの意向なのですが、激しいだけがブラック・メタルではない…ということで。

Kikka Schwarzfleet
Kikka Schwarzfleet

YG:「Dawn, Nightfall, and the Earth」のタッピングを使ったメイン・リフはどうでしょう?

Kikka:ある時、「実はタッピングって、あまり得意じゃないんですよね」と、うっかりYamaの前で話してしまって(笑)。そしたら…その数ヵ月後「しめしめ…」とばかりに送られてきたデモが、この曲でした(笑)。

YG:デモの段階でパート振り分けはもう決まっているとのことですが、ソロも同じくYamaさんがパート分けを決めてしまうのですか?

Kikka:そこは2人で決めています。リハスタで決めることもあるし、レコーディングに入る前に2人で打ち合わせることもありますね。ツイン・リード系は両方で分担することが多いけど、細かいニュアンスまでキッチリ揃えたい時は、どちらか一方がまとめて弾くことも。一例を挙げると、「Blizzard Forest」のBメロは2人で分担して弾いていますが、その後のツイン・ギター・ソロは自分ひとりで弾いています。

Syngolet:一応、リードはKikka、バッキングは僕…という大まかな役割は決まってるんです。ただ今回、「999 Swords」だけは「ソロお願い〜」と(Kikkaに)言われたので(笑)、僕が弾きました。あと、「Appiyehi Dukkha」のソロだけは、デモの段階でそれぞれ前半・後半に分かれていましたね。

YG:『TIME OF REQUIEM』2部作は、様々に“死”へ向き合う…というコンセプトがありますが、それはギター・パートのフレーズ作りやメロ決めにおいて、また、実際にプレイする時やレコーディング時に意識しましたか?

Syngolet:特に意識はしてなかったけど、影響はあると思います。

YG:各曲の歌詞のテーマがギター・パートに与える影響についてはいかがでしょう? ESは具体的に情景が浮かぶ楽曲が多いですが、リフやソロを弾く際、それを意識したり、実際にイメージを浮かべるといったことはありますか?

Kikka:実は各曲の歌詞が完成するのって、楽器隊のレコーディングが終わったあとになることが多いので(笑)、それ故に、曲タイトルやデモ音源から情景を思い浮かべることが多いんです。

YG:『〜PART. II』は、メロデスやペイガン、また和のテイストなど、色々な要素が散りばめられているものの、アルバム全体としてブラック・メタルのルーツへ立ち返ったような印象を受けました。

Syngolet:そうなんですか? どうなんでしょう…? 僕はブラック・メタルをあまり聴かないので、ちょっとよく分からないです〜(笑)。

Kikka:元々、ESには多種多様な楽曲が多いんだけど、確かに今作には、「Setsuna」とか自分で書いた「Blizzard Forest」とか、直球なブラック・メタル系統の楽曲が多いですね。個人的には、こっちの方向性のほうが好みなんですよ(笑)。

YG:ブラックといえば、「After a Thousand Years」はバンド史上最速曲だそうですね? レコーディングで何か苦労はありましたか?

Kikka:これは、爆速ドラマーのMeetが加入したからこそ生まれた楽曲ですね。確か、BPM=240だったかな? 速さに対して右腕が追いつかないので、3日くらいトレーニングが必要でした(笑)。

Syngolet:フレーズ的には難しくないんですが、やっぱりテンポが速いというのは大変でしたね。

YG:「After a Thousand Years」に限らず、高速のトレモロ・リフなどは2本で合わせるのが大変だと思いますが、どんなことに気を付けて2人で弾いていますか?

Kikka:大前提は、お互いのプレイを聴きつつリズムに対して忠実に弾くこと。それからトレモロ系のバッキングは、一音々々の粒立ちが良くなるよう意識して弾かないと、悪い意味で音の壁みたいになってしまうから、気をつけていますね。

Syngolet:Kikkaはピッキングがメチャメチャ正確なので、クリックに合っていれば、必然的に合う…というか。なので、ライヴでもそうですが、なるべくKikkaのギターをよく聴くようにしています。

YG:『〜PART. II』収録曲の中で、お2人が特に気に入っている曲、ヤング・ギター読者に注目して欲しいギター・プレイというと?

Kikka:「Blizzard Forest」のギター・ソロは、ぜひ聴いて欲しいですね。全体的にシュレッド系で、難易度が高いのですが、特に後半は、プリングを多様してトリッキーになっているので、この速さでキッチリ弾くのはかなり難しい…。その後のツイン・ギター・ソロも、テクニック的には大したことないんだけど、ブラック・メタルらしからぬ哀愁のあるメロディーなので(笑)、こちらもぜひ聴いてみてください。

Syngolet:僕は、自分でソロを弾いてる「999 Swords」と「Appiyehi Dukkha」を挙げておこうかな? あと、「Nightmare Never Muted」と「Setsuna」は7弦をよく使っているので、それも。今どき7弦なんて全然珍しくないですけど、一応、ESでは“初”だと思うので。

YG:それぞれ、相方のプレイで特に気に入っている曲も挙げてください。

Syngolet:それはもう、Kikka作曲の「Blizzard Forest」ですよね。曲は勿論ですけど、フレーズもプレイも、すべて「これぞKikka!!!!!」て感じで好きです。

Kikka:自分のイチオシは「999 Swords」のギター・ソロ。こういう流暢なフレーズって、Syngoletのお得意ですよね!

YG:この3月にはBATUSHKA来日公演でサポート・アクトを務めましたが──では最後に、今後のライヴ予定を教えてください。

2023年3月国内ライヴ告知

Syngolet:幾つか決まってるモノもあるけど、まだ発表出来ないので…。

Kikka:国内外で幾つか話が進んでいて、これからも活発に動いていけそうです。じきに発表されると思うので、SNSなど公式情報を要チェックですね…!!

INFO

エセリアル・シン - TIME REQUIEM PART 2

TIME OF REQUIEM PART. II / ETHEREAL SIN

CD|キングレコード | 2023年月15日発表

アルバム詳細

収録曲

01. Blizzard Forest
02. Shiden
03. 999 Swords
04. The Empire’s Fate
05. Dawn, Nightfall and the Earth
06. After a Thousand Years
07. Nightmare Never Muted
08. Face the Light in the Abyss
09. Setsuna
10. Appiyehi Dukkha

エセリアル・シン - TIME REQUIEM 1

TIME OF REQUIEM PART.1 / ETHEREAL SIN

CD|キングレコード | 2021年8月発表

アルバム詳細

エセリアル・シン - KOKUU

KOKUU / ETHEREAL SIN

デジタル配信 | 2020年4月発表

アルバム詳細