匠/sukekiyo 『VITIUM』

匠/sukekiyo 『VITIUM』

タイプの全く違うギタリストの組み合わせが生み出す妙を、前作とはまた違った味わいで聴かせたい

sukekiyo-band-2015

YG:いくつかの収録曲について詳しく聞かせてください。「leather field」のイントロ・リフはクリーンなアルペジオを中央で聴かせながら、左でクランチのストローク、右で歪み強めの低音弦リフと、異なった音色が入り交じる構成が面白いですね。このアイデアはどういった経緯で形になったんですか?

匠:これはタイプの全く違うギタリストの組み合わせが生み出す妙を、前作とはまた違った味わいで聴かせたいという趣旨からですね。

YG:この曲のソロは2本のギターでハモるという、ちょっと様式美メタル的アプローチですね。

匠:曲にスパイスを加える目的で、あえて僕の好きなタイプのソロを入れさせてもらいました。

この曲の雰囲気で、まさかディミニッシュ・スケールなんて出てきそうにはなかったから(笑)。

YG:「dunes」のイントロ・リフで聴ける、左チャンネルの中域が潰れたような特徴的な音は、どうやって出しているのでしょうか? 

匠:これは、UTAさんのテイクですが、もうUTAさんの生き様そのものな音ですよ!

YG:「雨上がりの優詩」ではオクターヴァーをかましたような、機械的なトーンでのギター・ソロが印象的です。個人的にはレディオヘッドの「Paranoid Android」のソロのような、冷ややかさと激情が入り交じったソロだなと感じました。

匠:これもUTAさんのテイクなんですが、おっしゃる通りレディオヘッドの血は入っていると思いますよ(笑)。これは去年の欧州ツアー時に色々実験しながらアレンジしていった曲で、拍とか構成が日々変わっていった記憶があります(笑)。悩みながら根気よく考えて生み出したフレーズなので、まさに“冷静と激情”と言えますね。

YG:「maniera」は叫ぶようなワウ・サウンドが印象的な速弾きソロが登場しますね。ディミニッシュの上昇フレーズが出てきますが、その手の権化であるイングヴェイ・マルムスティーンを始めとしたネオ・クラシカル系からの影響はありますか?

匠:これは僕のテイクなんですが、イングヴェイからの影響は多少なりあると思います! 僕は彼のようには弾けないけど、正直…好きですよ(笑)。このソロは自分らしく弾けてとても気に入っているし、久しぶりにアームも使えたのも良かった! 「これぞギター・ソロ!」といえる“王道プレイ”が“変態”sukekiyoの中にあるので、逆にスパイスになっていて、それが面白いサウンドになっている……、僕はそう思っています。

YG:この曲の中間部には、低音弦の開放音を絡めたグルーヴィなリフが出てきますね。そこに入る前の静かなパートから曲調が一転する展開ですが、最初からこういう曲だったのですか? それとも色々なアイデアを合体させて1つの曲にしたのですか?

匠:これはYUCHI(b)君が原曲を持ってきて、こういった流れも原曲の時点でほとんどできていました。彼が作るベースのグルーヴで引っ張る感じの曲は、本当に素晴らしいですね。ギター・ソロだけは熟慮して僕が作ったけど、そういう創作バランスも時には良いんじゃないですかね。ほとんど自分が手を加えないというパターンも心地好かったです(苦笑)。ただ中間部のギター・ブレイクは僕の提案で設けました。単純にアンサンブルを引き算しただけの工程でしたが。

YG:「白露」は繊細なピアノの周りを、風が吹くようなギター・サウンドが飛び交っていますが、あの独特な音はどうやって生み出しているんですか?

匠:僕らのライヴでは即興演奏するブロックを設けているんですが、あそこで聴けるのはそのライヴ音源を編集して作ったものなんです。基本的に右チャンネルから聴こえてくるのが、昨年秋に行なった日本公演からの音源を、ほぼそのまま。左チャンネルはその少し前に行なった欧州公演の音源を、リヴァースしてタイム・ストレッチして歪ませて使用しています。どういったアルゴリズムで使用しているかは内緒にしておきます(笑)。