長らく続いた当奏法講座もこれで最終回。最後は、より実戦的なソロ・プレイにおいて、今までに紹介してきたリックがどのように用いられているかをチェックしてみよう。では、ニックの言葉から 。
Nick’s Comment
今回紹介するのは、僕がPOLYPHIAというバンドの“Champagne”(’14年『MUSE』収録)という曲にゲスト参加して弾いたソロで使ったアプローチだ。まず弾き始めは、ちょっとスウィングっぽいフィールを試みた。他のギター・パートのほとんどは、フィーリング的には結構ストレートに感じたんでね。僕の演奏は良いコントラストを加えることになったんじゃないかな。また、全体を通してクロマティック・ノートをかなり入れている。やはり他のギター・パートに対してコントラストを付けるためだ。
実は結構リズムにもこだわっているんだよ。いつも通り、自分が弾きやすいアルペジオのシェイプを使っているけど、もっと実験的なアイデアをリンクさせるようにもしてみた。僕のスタイルとしてよく知られているものを組み合わせた形だね。チョーキング、アルペジオ、3連符…どれもたくさん入ってる。
あらかじめ、こんなソロに仕上げたいという大まかなアイデアを持っていたけど、実際は大半がインプロヴァイズになった。バックのコード進行はすべてダイアトニックだから、コード・チェンジへの対応は深く考えずに済んだね。ただ思うままに弾いていったよ!
Ex-1
の出だしのフレーズは、第5回(’14年12月号)で紹介したメジャー9th(maj9)のアルペジオをそのまま使用したもの(図1
)。4〜5小節目のプレイは、AmとDmのアルペジオの組み合わせとなるが(図2
)、[Dm+Am=Dm9]と考えると、実は第6回(’15年1月号)で取り上げたマイナー9th(m9)のアルペジオと、ほぼ同じものになる。14小節目のAm7のアルペジオ(図3
)に関しては、単純にコード・フォームと照らし合わせた方が分かりやすいか? スペースの都合上、詳しくは書けないが…、それぞれのフレーズを“どこで、どのように終わらせているか?”という点に注目しながら譜例にトライしてみると、ニックの言う「リズムへのこだわり」が見えてくるはずだ。
Ex-1 「Champagne」風ニック流ソロ・アプローチ
各音符をスタッカート気味に弾くことを意識したい。2弦10fのピッキング音は、アタック音だけになってしまってもOKだ。(譜面は前後半の2分割で掲載)
図1■Cmaj9のアルペジオ・ポジション
図2■AmとDmのアルペジオ・ポジション
図3■Am7のアルペジオ・ポジション
プロフィール
ニック・ジョンストンはカナダ出身のギタリスト。フル・シュレッドから繊細なニュアンスまで網羅する卓越した演奏テクニックと抜群のメロディー・センスで動画サイトなどを中心に話題を集め、2011年の『PUBLIC DISPLAY OF INFECTION』をはじめ、4作のオール・インスト・ソロ作品を発表した後、2016年9月発売の『REMARKABLY HUMAN』で正式に日本デビューを果たした。本作には、ガスリー・ゴーヴァンやポール・ギルバートがゲスト・ソロを弾いた楽曲もボーナス・トラックとして収録。2017年2月にはアニマルズ・アズ・リーダーズのツアーに帯同して初来日を果たした。ライヴやギター・クリニックを行なうなど、国内でのさらなる活躍が期待されている急進中のロック・ギタリストだ。
インフォメーション
公式ウェブサイト:www.nickjohnstonmusic.com
フェイスブック:www.facebook.com/NickjohnstonOfficial
最新リリース情報
輸入盤|CD|2019年4月19日発売