ハロウィン&ハンマーフォール欧州ツアーから、独ボーフム公演をレポート! 2023.5.5

ハロウィン&ハンマーフォール欧州ツアーから、独ボーフム公演をレポート! 2023.5.5

’22年5月4日の英マンチェスター公演を皮切りに、ヨーロッパ全土で展開されたハロウィンとハンマーフォールによるカップリング・ツアー“UNITED FORCES”。各地で熱狂を繰り広げた豪華共演は、今年に入ってもまだまだ続いており、先日──5月5日にドイツはボーフムでのショウを観てきた。

ボーフム公演フライヤー

今年、ドイツで行なわれる公演は、この日のボーフムと翌日のハンブルクのみ。早い時間からボーフム入りしていたのだが、中央駅ではこの日を楽しみにしていたであろうファンと何度もすれ違い、その中の何人かと話したところ、遠方からやって来ている人や、リピーターが少なくなかった。チケットは事前にソールドアウトに。18時半の開場時間が近付くと、ビール片手に入場を待つ長蛇の列が出来上がっていく。観客の年齢層は幅広く、家族総出でやってきたと思しきファンもチラホラおり、様々な年代のツアーTシャツを眺めているだけでも楽しい。

中央駅

会場に入ると、そこにもマーチャンダイズを求める長蛇の列が。チルアウト・スペースでは、食事を摂りながら賑やかに時間を過ごす人々がみられた。ビール大国らしく、かなりの勢いでサーバーに取り付けられた大樽が交換されていく。そうそう、日本とは違って飴やグミなどスイーツの出店もあって、そちらも人気だったのが少々驚きだった。

勇壮なパフォーマンスを見せつけたハンマーフォール!

しばらく場内を散策してからカメラのセッティングをしていると、開演時間の20時が迫ってくる。先に登場するのはハンマーフォール。場内BGMはHR/HMの名曲揃いで、マノウォーで大合唱となるのが何ともドイツらしい。曲がアイアン・メイデンの「2 Minutes To Midnight」になると、もはや出来上がった感すらある会場内に、本番さながらの大歓声が上がる。時計を見ると19時58分……こういったコダワリと遊びもファンをアツくさせる。

程なく、場内暗転から勢いよくハンマーフォールのメンバーがそれぞれのポジションに散っていくと、既にテンションの高いフロアからのリアクションが返される。最新作『HAMMER OF DAWN』(’22年)のオープニングを飾る「Brotherhood」でショウは始まり、続いて過去ナンバー「Any Means Necessary」「The Metal Age」と畳みかけてくる。「調子はどうだい、ボーフム?」と軽く煽って、新作から勇壮な「Hammer Of Dawn」が始まると、幾つものメロイック・サインが突き上げられ、ステージから伸びた幾筋ものライトがそれを舐める。

オスカー・ドロニャックとポンタス・ノルグレンの両アクスマンは、テクニック的に突出した印象はないが、“ヘヴィ・メタルが好きなら、こういったのが好きだろ?”と、ファンのツボを突いてくるプレイといった様相。プレイ重視のポンタス、アクション重視のオスカーと、2人の役割分担がキッチリ分けられていた。息もピッタリなプレイは好感が持て、両名ともステージを駆けまくり、そこかしこでフォーメーションを決めてくる。

オスカー・ドロニャック
HAMMERFALL / Oscar Dronjak (g)

ポンタス&フレドリック
HAMMERFALL / Pontus Norgren (g) and Fredrik Larsson (b)

バイクのエキゾースト音を合図に始まったスピード感溢れる「Renegade」では、メンバーもファンも大きく首を振り、大ヘッドバンギング大会に。オスカーはこの曲から巨大ハンマーを模したカスタム・ギターを手にし、スモーク溢れるステージから高々とそれを突き上げてファンにアピールする。ヨアキム・カンスの調子も良さそうで、艶と伸びのある声でオーディエンスをグイグイと引っ張っていく。「ドイツでのショウを終えたら、次は北米を攻めてくるぜ!」というMCには、エールとも思える大歓声がフロアから上がり、それを受けて「Venerate Me」が炸裂すると、会場一体の大合唱となり、感動的な場面を作り上げた「Last Man Standing」へと続く。ファンの好リアクションに、心強いといった風に胸を叩くヨアキムの笑顔が印象的だった。

ヨアキム・カンス
HAMMERFALL / Joachim Cans (vo)

「ここで’02年へ戻ろう」とヨアキムが言って、ハジき出されたリフは同年発表の『CRIMSON THUNDER』から「Hero’s Return」。そのまま「On The Edge Of Honour」「Riders Of The Storm」「Crimson Thunder」とメドレー形式でつながっていく。彼らの熱情と同じく真っ赤に染まったステージでは、メンバーがまたもやフォーメーションを決め、リリースから20周年を経た『CRIMSON THUNDER』(’02年)を祝っているようにも見えた。

オスカーとポンタスのギター・チームが、一段前にせり出したステージ先端でソロ・バトルを繰り広げると、「これこそヘヴィ・メタルのコンサートだよな!」とヨアキムが声高らかに宣言。すると、「当たり前だろ!」と言わんばかりの雄々しい歓声がステージへと返される。重厚ナンバー「Let The Hammer Fall」では、多くのファンが巨大なハンマーをサビに合わせて高く突き上げるも、右肩上がりで盛り上がるその場をクール・ダウンさせるかのように、次にプレイされたのはバラード「Glory To The Brave」! 物悲しく美しいメロディーがオスカーのギターから奏でられると、それは会場の隅々まで染み入り、観客もスマートフォンのライトを大きくゆっくり揺らす。そしてサビでは、ファンの歓声を全身で受け止めるようにヨアキムが大きく手を広げる。曲終わりでは、オスカーが体を仰け反らせながらの歯弾きプレイも見せた。

デイヴィッド・ウォリンがドラム・キットから立ち上がり、彼のバスドラを合図にメンバー紹介が行なわれると、本編最後となるキャッチーな「(We Make)Sweden Rock」が、再び会場のヴォルテージを上げていく。オスカーとポンタスの抒情的なソロに合わせ、大観衆が大きく手を横に振り、多幸感いっぱいな中、ここでメンバーは一度ステージを後にする。

すぐさまバンドを呼び戻すアンコールがかかり、ゆっくりとデイヴィッドが自身のドラム・キットに着いて高々と拳を上げると、2016年『BUILT TO LAST』から新たなアンセムとも言える「Hammer High」の雄々しいメロディーが会場に響き渡った。ある者はビール・カップを、ある者は巨大なハンマーを高く突き上げ、サビを高らかに歌い上げるが、それでも「足りない!」とメンバーは何度も首を横に振る。ポンタス、そしてオスカーの順にギター・ソロを披露して、最後はファンの大歓声がメンバーを包み込んだ。「次はハロウィンだぜ! 用意はいいか?」「でも、俺達にもあと5分あるな…もう1曲やるぞ!!」と鉄板チューン「Hearts On Fire」がプレイ。サビでは当然、最後の大盛り上がりとなり、オスカーが高くギターを放り投げたのを合図に、ハンマーフォールのショウは終了。時計を見ると21時20分だった。

ハンマーフォール セットリスト 2023.5.5 @RUHRCONGRESS、ボーフム、ドイツ

1 .Brotherhood
2. Any Means Necessary
3. The Metal Age
4. Hammer Of Dawn
5. Blood Bound
6. Renegade
7. Venerate Me
8. Last Man Standing
9. Hero’s Return~On the Edge of Honour〜Riders Of The Storm〜Crimson Thunder
10. Let The Hammer Fall
11. Glory To The Brave
12. (We Make) Sweden Rock
[encore]
13. Hammer High
14. Hearts On Fire

陽気で贅沢なシーン満載のハロウィン!

ハロウィン開演前

転換の間、ステージでは忙しなくスタッフが動き、セットがハンマーフォールからハロウィン仕様へと変わっていく。もう先程のショウだけでもお腹一杯なのに、この後にハロウィンが控えているなんて…! 改めて、何とも贅沢なカップリング・ツアーだと再確認した。ステージの幕には、ハロウィンのロゴが大きく映し出されている。「わざわざ日本から来たのかい?」と足元フラフラな酔っ払いのファンからも声をかけられた。

ハロウィン ドラム・キット

21時50分に場内が暗転すると、ステージを隠していた幕が落ち、オープニングSEとしてアコースティック・アルバム『UNARMED』(’09年)収録ヴァージョンの「Halloween」が流れ、怪しく眼が光る巨大カボチャのドラム・キットと共に、ステージ後ろに巨大スクリーンが姿を現す。そこに映し出される、お馴染みのローブをまとったキャラクターと7つの鍵。そのまま最新作『HELLOWEEN』(’21年)の「Orbit」が流れ、まず楽器隊がステージに登場。アルバムの流れと同じく壮大な大作「Skyfall」が始まると、ステージ下手からマイケル・キスク(vo)、ステージ上手からアンディ・デリス(vo)が現れる。まずはキスクとアンディの掛け合い、そして共にサビを歌ってメロウなパートに入ると、今度はカイ・ハンセン(g, vo)も歌に加わって、実に贅沢な時間が過ぎていく。個々の見せ場がふんだんにあるだけでなく、当のメンバー同士も楽しそうだ。撮影ピットの中ではカメラマン達がひしめきぶつかり合うも、バンドの陽気な雰囲気に引っ張られ、そこでもみんな楽しんでいる風に見える。マーカス・グロスコフ(b)が笑いながらそれをイジり、大きめのサングラスをかけ、クールな印象のサシャ・ゲルストナー(g)もベロを出し、おどけた様子を見せた。

マーカス・グロスコフ
HELLOWEEN / Markus Grosskopf (b)

3名のヴォーカリストの競演により、見事に「Skyfall」が締め括られるとアンディは一旦退場。そして「Eagle Fly Free」へと雪崩込む。キャノン砲によって打ち出されたテープの何百もの筋が、ヘッドバンギングしまくるファンを覆っていく。キスクはフェイクも少なく、喉の調子は良さそうだ。カイのギター・ソロからトリプル・ギターによる分厚いハーモニー、そしてマーカスのベース・ソロからヴァイキー(g:マイケル・ヴァイカート)によるギター・ソロ、シメはダニ・ルブレによるドラム・ソロと、それぞれ短めながら、それぞれの見せ場により場内の熱気が高まっていく。

続いて、ステージにはリズム隊とカイだけが残り、カイの煽りに、フロアからは大きな歓声が波のように打ち返す。カイがアンディを呼び込み、曲は「Mass Pollution」へ。アンディは高音部がややキツそうだが、何とか踏ん張り、楽曲の雰囲気は壊さない。その曲終わりで、スポットライトに包まれたカイの短めのギター・ソロへと流れ、定番であるペール・ギュントの「山の魔王の宮殿にて」を挟み、今度はキスクが再登場しての「Future World」へと続く。カイとヴァイキーによるツイン・ギター競演により、ソロ・パートはグッと厚みが増したアレンジとなっている。ここまで3人のギタリストのプレイを見ていると、カイが自由に弾き前面に出ている印象で、ヴァイキーは黙々と弾いていながらも、時にカイやサシャに絡んで分厚いギター・ハーモニーを聴かせ、サシャはコンポーザー的にサウンド全体をまとめる役をコナしつつ、巧者ぶりを如何なく発揮したプレイが耳を捉えて離さない。また、サシャがメインで使っている独特な形状のVIV Guitarsのカスタム・モデルが、否が応でも目を惹く。

カイ・ハンセン
HELLOWEEN / Kai Hansen (g)
マイケル・ヴァイカート
HELLOWEEN / Michael Weikath (g)
サシャ・ゲルストナー
HELLOWEEN / Sascha Gerstner (g)

「Power」はアンディの独壇場だが、高音部がかなりキツそうで、メロディーを追えていないパートもあったものの、やはり雰囲気は壊していない。そして、トリプル・ギターによる泣きのソロとハーモニーがフロアに拳を突き上げさせ、大きな歓声を呼び込む。そこからキスクによる「Save Us」へと続き、アンディが「カイ・ハンセン!」とコールすると、SE「Walls Of Jericho」が流れる中、カイはギターを置いてハンドマイクで現れ、シャウト一発から「Metal Invaders」が始まる。ここからは彼のヴォーカル期のメドレーで、ギターを持ち直しての「Victim Of Fate」から「Gorger」、さらに「Ride The Sky」からシメの「Heavy Metal(Is The Law)」へと続いていく。途中、スクリーンにはバンドの初期キャラクター:ファング・フェイスの姿が。勿論、「Ride The Sky」ではカイとヴァイキーによるツイン・ソロも飛び出し、初期からのファンには堪らないシーンも用意されていた。

ステージが暗転し、次にライトが灯ると、アンディとキスクの2人がステージ中央に立ち、何やらドイツ語でやり取りしたあと、サシャが出てきて「Forever And One (Neverland)」のメロディーを奏でる。甘い声質のアンディと低音に味わいのあるキスクによるバラード競演はグッとくるものがあり、この手の曲では特に表現力が映えることを改めて痛感させられた。先ほどまでヒート・アップしていた場内は静まり、しっとりとした雰囲気に。曲に合わせて観客は静かに身体を揺らし、スマホのライトが徐々に会場全体に広がっていく。そこからどんどん盛り上がっていくと、カイ以外の他メンバーも演奏に加わり、そのままクライマックスへ…! その余韻を引っ張るような、サシャによる情緒豊かなギター・ソロも素晴らしく、時折速弾きを織り交ぜつつも、一音々々の粒が揃った美しく淡いメロディーを奏でる彼は、ここでも巧者ぶりを発揮。短めなソロではあったが、彼のギターが今のハロウィンの“キー”となっていることを十二分に知らしめたのは間違いない。

キスク&アンディ
HELLOWEEN / Michael Kiske and Andi Deris (vo)

再びメンバーが全員揃い、最新作『HELLOWEEN』収録の「Best Time」を披露したあと、キスクが「1988年に戻るぜ!」と叫ぶと、スピーカーから流れてきたのは「Dr.Stein」のキャッチーなメロディー。メンバー同士で陽気に絡み本当に楽しそうだ。中でもマーカスが一番楽しんでいた様子で、カイにモンスターのようなアクションで迫っていくと、最後には2人で爆笑していた。メンバー全員で、この7人体制のハロウィンに心血を注ぎ、そこから生まれるマジックを楽しんでいるのがひしひしと伝わってくる。

本編ラストは初期の名曲「How Many Tears」で、トリプル・ヴォーカル、トリプル・ギターによって見せ場を度々作り上げ、アンディが何度も手を振り上げて、ショウは大団円へ。照明の落ちたステージには、眼が緑に不気味に光るカボチャのドラム・キットが浮かび上がり、しばらくすると、フロアからのアンコールを鎮めるように、コミカルさと哀愁が溶け合う「Perfect Gentleman」のメロディーが流される。山高帽を被り、赤いスパンコールをあしらったタキシード着用のアンディが、おどけるようなアクションも見せると、サシャのギターに導かれ、続いては名曲「Keeper Of The Seven Keys」がスタート! もう開演からかなりの時間が経過しているが、フロアはまだまだ疲れを知らぬかのように大歓声に包まれ、依然として大きな盛り上がりを見せる。それと同時に、もうこの楽しいショウも終わりなのだな…と感じさせられもした。

この曲がが終盤に近付くと、アンディによるメンバー紹介が始まり、名前を呼ばれた者がひとり…またひとりとステージから去っていく。アンディの役目はカイ、そしてサシャに引き継がれ、最後ステージ残ったサシャが最後のメロディーを弾くと、消えゆくその音と反比例して、場内の歓声と拍手が大きくなる。そして、暗転したステージのスクリーンに大きくバンド・ロゴが映し出されるとさらに歓声が増し、それをかき消すように「I Want Out」が始まった! フロア上空には、いくつものカボチャのバルーン・ボールが舞い、数えきれないメロイック・サインの上へ紙吹雪が降り注ぎ、この大人気曲でショウは終焉を迎える。

ハロウィン会場

ハロウィン単体でも長時間のパフォーマンスでかなりの満足感だったが、キャリアの長いバンド故にもっとやって欲しい曲も多く、個人的には「Pumpkins United」が聴きたかった…というのが本音。ただ、この日を体験して言えるのは、ハロウィン史上初となる武道館公演を含めた9月の来日公演は“かなり期待して良いだろう!”ということだ。時計を見れば23時50分。日本とは違う、海外ならではの終演時間であった…。

ハロウィン セットリスト 2023.5.5 @RUHRCONGRESS ボーフム、ドイツ

1. Skyfall
2. Eagle Fly Free
3. Mass Pollution
4. Kai Hansen’s Guitar Solo〜Future World
5. Power
6. Save Us
7. Wall Of Jericho (SE)〜Metal Invaders〜Victim Of Fate〜Gorgar〜Ride The Sky〜Heavy Metal (Is The Law)
8. Forever And One (Neverland)〜Sascha Gerstner’s Guitar Solo
9. Best Time
10. Dr. Stein
11. How Many Tears

[encore 1]
12. Perfect Gentleman
13. Keeper Of The Seven Keys

[encore 2]
14. I Want Out
 
ハロウィン&ハンマーフォール2023ツアー日程