橘高文彦「俺は普遍的なヘヴィ・メタルを作りたかった!」デビュー40周年記念ライヴ、完遂 2025.11.20 東京・渋谷音楽堂

橘高文彦「俺は普遍的なヘヴィ・メタルを作りたかった!」デビュー40周年記念ライヴ、完遂 2025.11.20 東京・渋谷音楽堂

完全な形でのソロ・アルバム再現

橘高文彦がデビュー40周年を記念したライヴ「Never Ending Story + 40 Years Of History Live」を、11月20日に東京・渋谷音楽堂で開催した。

橘高がデビューしたのは1984年11月21日のことで、日本でもヘヴィ・メタル・ムーヴメントが起こり始めたその当時、AROUGE(アルージュ)のギタリストとしてシーンに登場。18歳のときだ。そして1989年には筋肉少女帯に加入。これまでに何度も日本武道館公演を成功させてきた。また1994年にはソロ・プロジェクト:Euphoria(ユーフォリア)を始動させ、様式美を貫くギター・プレイで高い評価も得た。さらに1999年にはX.Y.Z.→A(エックス・ワイ・ズィー・トゥ・エー)を結成。日本国内に留まらない活動を展開している。そして現在、橘高は筋肉少女帯とX.Y.Z.→Aなどで活躍中だ。

橘高がデビュー20周年を迎えた2005年、キャリアを共にした4人のヴォーカリスト(AROUGEの山田晃士、筋肉少女帯の大槻ケンヂ、Euphoriaのtezya、X.Y.Z.→Aの二井原 実)らと新曲を作って、ソロ・アルバム『NEVER ENDING STORY』を発表。当時、リリース記念ライヴも行なったが、筋肉少女帯はバンドとして凍結期間だったことも影響し、大槻は不参加。完全な形でのソロ・アルバム再現ライヴを行なうことはできなかった(しかしその翌年、2006年には筋肉少女帯が復活し、以降は安定した活動を続けることになる)。

あれから20年──橘高のデビュー40周年の最終日である2025年11月20日に、完全な形でのソロ・アルバム再現ライヴがようやく実現することになった。

ブルーの照明が橘高愛用のマーシャル・アンプを浮かび上がらせるステージ。アコギのアルペジオ・フレーズと教会の鐘の音が印象的な「Euphoria」がSEで流れ始め、バンド・メンバーである内田雄一郎(b)、秦野猛行(key)、長谷川浩二(dr)が登場。最後にステージに現れた橘高の合図で、SEを受け継ぐようにギター・ソロからバンド・サウンドを響かせ始めた。切ない泣きメロでたちまちオーディエンスを酔わせ、全員を恍惚の表情へと変えていく。そして次の瞬間だった。

激しいリフを刻み、すぐにブレイクし、橘高は両腕を広げてオーディエンスを歓迎。みんなからのどデカい歓声を浴び、そして再びリフを刻みながら突入したのはインスト「FALCON」。自分自身をここまで連れてきてくれた勇者の剣=ギブソンの’67年製フライングVで、ギターとヘヴィ・メタルに傾け続ける情熱と愛情を、エモーショナルに、そして誇らしく響かせ続ける橘高。そのプレイやフレーズは、みんなの心をつかんで魅了し、頼もしく引っ張っていくばかり。

「橘高文彦デビュー40周年記念公演にようこそ! 俺の一番大好きな言葉は“ソールドアウト”です。大事な記念日にソールドアウトでみなさんが出迎えてくれて。今日は、いつも応援してくださるみなさんとのセレブレーション・デイ。祝祭の日ですよ。お互いをお祝いし合って最高の夜にしたいと思います」

橘高文彦

「生きているパワーを、俺はロックからもらっている」

そしてここからは、ヴォーカリストを呼び込みながら繰り広げる『NEVER ENDING STORY』と、各バンドの楽曲を披露。山田晃士と披露した曲のひとつ、AROUGEの「Play a Game」で橘高は、AROUGE時代に使っていたフロイドローズ搭載の赤いVシェイプ・ギターを使用。アメリカンなキャッチーさも振りまきながら、ギター・ソロでは大胆なアーミングや派手なタッピングも繰り出した。現在の橘高とはひと味違ったギター・プレイに、シャンソン歌手として培った美声を響かせる山田晃士も「アーム、良かった。シビれたなぁ」と大絶賛。

続いて登場したのはEuphoriaで一緒だったtezya。30年前、二人は13日の金曜日に初めて出会ったそうで、Euphoriaではデカダントでグラマラスな様式美ヘヴィ・メタルを目指したという。

山田晃士、橘高
山田晃士(AROUGE)
tezya(Euphoria)
tezya(Euphoria)

「俺の作る音楽は、時間が経っても新鮮味は変わらない自信がある。なぜなら時代を追っていないから。俺は普遍的なヘヴィ・メタルを作りたかった。今でも新曲として聴けると思うぜ!」

橘高はそう高らかに叫びながら、tezyaとEuphoriaや『NEVER ENDING STORY』からのナンバーで攻め立てた。そこから単独ギター・ソロに繋げ、フライングVを叫ばせ、歌わせ、喜ばせるように弾きまくる。さらにアコースティック・ギターで切なくも優美な調べを聴かせたかと思えば、抒情的な世界へとみんなを誘い込み、インスト「Justice Of Black」へ続くというドラマも作り上げた。その起承転結のある構成と流麗なフレージングは、このセレブレーション・デイをさらに感動的に彩っていった。

橘高文彦 ギター・ソロ(Justice of Black)

そして大槻ケンヂは、この日、間違いなくステージに現れた。出てきて早々、「今のギター・ソロはすごく良かったので、筋肉少女帯でもおやりなさいよ」と激推し。それに対して「あなたの心の内が透けて見えたよ」と笑う橘高。すかさず「休めると思って。だから好きなだけ、おやりなさいよ」と畳み掛ける大槻。二人の日常会話は漫談のような面白さだ。曲に入っても、その阿吽の呼吸は意識せずともにじみ出て、互いに笑顔をこぼしながら演奏する様からは絶対的な信頼感も伝わってくる。筋肉少女帯のナンバーからは、橘高が同バンドにおける自分のスタイルを確立したという「詩人オウムの世界」を披露。さらに『NEVER ENDING STORY』からは、当時、活動凍結中だった筋肉少女帯が復活するように、橘高が願を掛けて作ったというプログレッシヴな「影法師」をプレイ。願いが叶って筋肉少女帯が復活して早20年近く、橘高の弾きまくる飛翔感あるフレーズには喜びが溢れていた。

内田雄一郎、大槻ケンヂ、橘高文彦
大槻ケンヂ(筋肉少女帯)

最後に呼び込まれたヴォーカリストは二井原 実。今回のライヴのために改めて『NEVER ENDING STORY』を聴いたという二井原は、「よく出来ているアルバム。でも、まさかステージで演奏するとは思わなかったから、無茶な歌を入れてる」と告白。そんなナンバー「DREAM CASTLE」をはじめ、速さも難易度もハンパじゃない曲を連発する。さらに続けて、自身を鼓舞させるために20年前に書いた曲のひとつ「AMBITION」をポジティヴに響かせていく橘高。オーディエンスからは自然にハンドクラップが起こり、その愛情を浴びながら笑顔でギターを弾き続ける橘高がステージにはいた。

二井原 実
二井原 実(X.Y.Z.→A)

「もともと俺、お医者さんになりたかったの。それでガムシャラに勉強して、大阪で一番の進学校に入学しまして。でも合わなくて不登校になっちゃって、生きていく気力もなくなって、もう、終わったなと。でも、そんなときでも家でロック聴いてギターを持つと、ポジティヴな気持ちとエネルギーをもらってね。生きているパワーを、俺はロックからもらっているなと。学校はやめようと思った。それで親と相談して、環境を変えようってことで、中2の終わりぐらいに東京に出てきたの。東京は希望に溢れているし、夢の出会いをいっぱいした。出会いが自分の人生を救ってくれて、素晴らしいミュージシャンや友達とも出会えた。それで楽しく音楽をやってきたら、こうやっていろんな人の笑顔とも出会えてさ。なんて最高な人生なんだろうって。このステージが最後になってもいいつもりで、みんなを徹底的に喜ばせたい、自分も後悔ないように終わりたいと思って、全力で毎ステージやってきた。そして気づいたら40年経っていてね。毎回、今日が最後でもいいという思いが、みんなに伝わって、40年に繋がったんだなって。やってきたことに間違いはなかったんだなって。すごくポジティヴな40年の最終日を迎えられました。どうも、ありがとうございます」

時折、目を潤ませながら、そしてオーディエンスの一人ひとりを優しく見つめながら、そう語った橘高。また、客席には引きこもりになっていた中2の自分自身がいつもいるように感じているという。そして今日、その中2の橘高は「頑張っているな」と言っているように感じるとも。デビューして40年、ギターを始めて半世紀、ここまでの人生で出会ったすべての人や出来事に感謝して、本編ラストに橘高が歌いながら弾くのはバラード「THANK YOU」だった。

またアンコールでは二井原を再び呼び込み、橘高にとってギタリスト人生のテーマソングと言える「NEVER ENDING STORY」を激烈にプレイ。さらに全ヴォーカリストと一緒に「夢のあとさき」も15年ぶりに披露。オーディエンスもコーラスに自然に加わり、想いがこもった力強い歌と演奏が会場にいる全員の心を揺さぶり続けた。NEVER ENDING STORY…、この素敵な物語に終わりはない。そんな幸せな気持ちに包まれた橘高メタルの一夜だった。

全員フィナーレ

橘高文彦 Never Ending Story + 40 Years Of History Live 2025.11.20 渋谷音楽堂セットリスト

1. Euphoria [橘高文彦&フレンズ]
2. Falcon [橘高文彦&フレンズ]
3. 傀儡のワルツ [橘高文彦&フレンズ]
4. Play a Game [AROUGE]
5. 指 [橘高文彦&フレンズ]
6. Find My Life [橘高文彦&フレンズ]
7. 絶望という名の… [Euphoria]
8. Gone Crazy [橘高文彦&フレンズ]
9. Guitar Solo ~Justice Of Black [Euphoria]
10. Destinyをぶん殴れ [橘高文彦&フレンズ]
11. 詩人オウムの世界 [筋肉少女帯]
12. 影法師 [橘高文彦&フレンズ]
13. Dream Castle [橘高文彦&フレンズ]
14. Patriot’s Dream [X.Y.Z.→A]
15. Ambition [橘高文彦&フレンズ]
16. Thank You [橘高文彦&フレンズ]

[encore]
17. Never Ending Story [橘高文彦&フレンズ]
18. 夢のあとさき [橘高文彦&25th Anniversary All Stars]

公式インフォメーション
公式ウェブサイト:橘高文彦オフィシャルサイト (筋肉少女帯・X.Y.Z.→A)
X:橘高文彦 & STAFF