疾風の如き音圧と華麗なる旋律! イリュージョン・フォース3周年ワンマン・ライヴ @吉祥寺クレッシェンド 2021.12.4

疾風の如き音圧と華麗なる旋律! イリュージョン・フォース3周年ワンマン・ライヴ @吉祥寺クレッシェンド 2021.12.4

四郎丸裕也と四郎丸丈二の兄弟ギタリスト率いる多国籍メロディック・メタル・バンド:イリュージョン・フォース。”21年12月で活動3周年を迎えたことを記念し、同月4日に吉祥寺クレッシェンドでワンマン・ライヴが行なわれた。出演ラインナップはオリジナル・メンバーである四郎丸兄弟、韓国出身のJinn(vo)、アメリカ出身のオリー・バーンスティーンという正式メンバーの他、活動休止中の元帥(dr)に代わって同年8月よりサポートを務めている秋田浩樹(兀突骨、GAUNTLET)という顔ぶれだ(なお、本公演終了後の”21年12月20日には、元帥のバンド正式脱退が発表された)。今回は周年ライヴということもあり、これまでにリリースされた全3作品…1stアルバム『THE WORLD SOUL』、1stシングル『ALIVE』(共に”19年)、最新作の2ndアルバム『ILLUSION PARADISE』(”21年)から、それぞれの楽曲を程よく混ぜたセットリストで行なわれ、白熱のライヴとなった。その模様をここにお届けしよう。

この日の会場は、人数制限の緩和や“普通程度の声援OK”という比較的緩やかな規制が取られており、観客もそれほど精神的な窮屈さを感じることなく開演を心待ちにしている様子であった。いよいよ場内が暗転すると、デビュー作『THE WORLD SOUL』より荘厳な雅楽をフィーチュアしたSE「Eastern Wisdom」が流れ、眩いライトに照らされてメンバーが登場。そしてドラムのカウントと共に、裕也と丈二の力強いオリエンタルなギター・フレーズで「Glorious March」がスタートする。Jinnによる強烈なハイトーン・シャウトが放たれると、会場は一気にヒート・アップ! オーディエンスはノリノリで頭を振りながら、思い切り拳を突き上げた。続けざまに2nd収録の「Unlimited Power」へ移ると、曲調はクラシック・スタイルにガラリと変化。ギター・チームは疾走感溢れるツイン・フレーズを聴かせ、怒涛スピードのドラムは圧倒的音圧で多彩なリズムを刻んでいく。お次は、EDM風のシンセ・サウンドで始まる異色ナンバー「N.E.O」。まだ3曲目であるが、バンドの音楽スタイルの幅広さがよく分かる。四郎丸兄弟は連獅子さながらに頭をグルグルと回すパフォーマンスを見せ、中盤のギター・ソロでは、複雑なフレーズを軽やかに弾きコナす丈二に対して裕也が挑戦的な表情を浮かべながら力強い高速ピッキングで応酬するなど、圧巻のバトルが展開された。

イリュージョン・フォース:Jinn 1
イリュージョン・フォース:四郎丸丈裕也 1
イリュージョン・フォース:四郎丸丈二 1
イリュージョン・フォース 1

その後は1st『THE WORLD SOUL』をメインとした楽曲が続く。「I’ll Be Your Hero」ではオリーが超絶ベース・ソロを披露したが、彼はギタリストとしてのスキルも豊富であり、そのプレイ・スタイルにはマシンガン・ピッキングなどのギター的テクニックが巧みに組み込まれている。また、秋田によるドラム・ソロのコーナーも設けられており、リズム隊2人の息を呑むようなテクニカル・プレイが存分に楽しめた。

イリュージョン・フォース:オリー・バーンスティーン 1
イリュージョン・フォース:秋田浩樹 1

さて、ここからは2nd『ILLUSION PARADISE』中心の選曲にシフト。バラード曲「Our Reason」では、Jinnが豊かな中・低音域を活かした歌声をゆったりと聴かせてくれた。ハイトーン・ヴォイスという強力な武器の裏に隠されていた、彼の真の強みが垣間見えた瞬間である。そして本作最大の見せ場と言えるのが「Sazareishi, Pt. Ⅰ:Inochi no Ibuki」〜「Sazareishi, Pt. Ⅳ:Taoyaka ni」。全4曲から成るアジアン・テイストの大長編、通称“さざれ石組曲”が披露された。導入部となるインスト「〜Pt. Ⅰ:Inochi no Ibuki」では、裕也が躍動感たっぷりに“泣きのソロ”をキメる。オリエンタルなメロディーが肝の「〜Pt. Ⅱ:From Within」ではコブシを効かせたJinnの歌唱が炸裂。そして「〜Pt. Ⅲ:Infernal Chimera, Rabager Of Life」ではブラック・メタルばりのツーバス高速連打に切り刻むような激重リフの嵐…起伏に富んだ多彩なパフォーマンスが次々繰り広げられる。

筆者はこれまでにも何度か彼らのショウに足を運んでいるが、このような演奏を目の当たりにすると、イリュージョン・フォースは圧倒的に“ライヴ化け”するバンドであるということを痛感せずにはいられない。というのは、ただでさえ緻密に構築されている楽曲の音像を、ライヴでしか味わえないパフォーマンスや音の臨場感でこれでもかというほどに表現し、アルバムで聴くのとは違った楽しみを十分に与えてくれるからだ。視覚的に派手な演出もさることながら、聴覚的な部分では“迫ってくる”と形容すれば良いだろうか、とにかく音圧が強烈な風のように真っ直ぐ直撃してくるといった印象。気迫に満ちたメンバーの表情からも凄まじいオーラが漂っていた。

イリュージョン・フォース:四郎丸丈裕也 2
イリュージョン・フォース:四郎丸丈二 2
イリュージョン・フォース 2

その余韻を残すかのように、最終章「〜Pt. Ⅳ :Taoyaka ni-」がSEで流れると、そのままアルバムと同じ曲順で「Cosmos」へ。こちらは既にライヴでの人気曲となっており、イントロの壮大なギター・フレーズと超ロング・シャウトを聴くやいなや観客席はワッと湧いた。メンバーも先ほどとは打って変わってにこやかな表情を浮かべている。会場中を包み込む感動と熱気は個々のプレイにも大きな影響を与えているのか、特にラストにおけるヴォーカルとギターが織りなすハーモニーは涙を誘うほどの抒情性に満ち溢れていた。楽曲が本来持っている旋律の美しさが生演奏では一層引き立てられるのも、彼らの魅力の1つと言える。

イリュージョン・フォース:Jinn 2

ライヴもいよいよ終盤へ突入。ここまで来ると、ステージ上の雰囲気はすっかりくつろいだものになっていた。代表曲「Our Vision」では、皆大はしゃぎで表情豊かにステージ上をあちこち動き回ったり、丈二がフラッシーな動きで指板を押さえる“アンジェロ・ラッシュ”を楽しげに弾いてみせたり、誰かが他のメンバーの演奏にちょっかいを出したり…。観ているこちらも、思わず微笑んでしまうのだった。

なお、イリュージョン・フォースは“アンコールを行なわない”スタンスのバンドであり、普通であればこの曲がラストとなっていた。ところが…最後の音が消え、皆が終演を予感した次の瞬間、裕也の「まだ終わらないんだなー!」と言う声と共に、2ndアルバムの表題曲「Illusion Paradise」がスタート! 思わぬサプライズで会場は歓喜の嵐に。記念すべき3周年ワンマンのラストを飾るにふさわしい圧倒的なパフォーマンスを見せてくれた彼らに観客は盛大な拍手を送り、本公演はその幕を閉じたのだった。まさにキャリアの集大成を感じさせた怒涛の2時間半。彼らの、今後のさらなる躍進を願うばかりである。

イリュージョン・フォース:Jinn 3
イリュージョン・フォース:四郎丸丈裕也 4
イリュージョン・フォース:四郎丸丈二3
イリュージョン・フォース:秋田浩樹 2
イリュージョン・フォース 3

ILLUSION FORCE 3rd Anniversary ONE MAN Show 2021年12月4日@吉祥寺クレッシェンド セットリスト

1. SE -Eastern Wisdom-(SE)〜 Glorious March
2. Unlimited Power
3. N.E.O
4. Beast Of The Earth
5. These Illusions
6. This Wish
7. The Coming Tragedy
8.The Force Of Illusion
9. I’ll Be Your Hero 〜 Drum Solo
10. Salvation
11. The End Of Days
12. Our Reason
13. Alive
14. Awakening Your Universe
15. Sazareishi, Pt. Ⅰ :Inochi no Ibuki
16. Sazareishi, Pt. Ⅱ :From Within
17. Sazareishi, Pt. Ⅲ :Infernal Chimera, Rabager Of Life〜Sazareishi, Pt. Ⅳ :Taoyaka ni-(SE)
18. Cosmos
19. Acceleration
20. The World Soul
21. Our Vision
22. Illusion Paradise

使用機材

今回のライヴに使われた機材を紹介していこう。なお、アンプは全員レンタルだ。まずは裕也。使用ギターはギブソン“Les Paul Traditional 2011”で、オーディオテクニカのワイヤレス・システム“ATW-1501”をBOSSのギター・プロセッサー“GT-1”に接続している。アンプはマーシャル“JCM900 SL-X”で、ベルデンのケーブル“9778”で“GT-1”と接続していた。

イリュージョン・フォース:四郎丸丈裕也 3

続いて、丈二のギターはHeritageの“H-150”。こちらもエフェクトはBOSS“GT-1”で、Line 6のワイヤレス・システム“Relay G30”で接続されていた。アンプはマーシャル“JCM2000”で、“GT-1”との接続にはオヤイデのケーブル“9AC-202”を使用。

イリュージョン・フォース:四郎丸丈二4

ベーシストのオリーは、知り合いから譲り受けたと言うフェルナンデスのベースを使用していた(モデル名は不明)。ピックガードの “夜露”という筆文字が特徴的だ。ワイヤレス・システムは裕也と同じオーディオテクニカ“ATW-1501”で、エフェクトにはBOSS“GT-1B”を使用。ベルデンのケーブル“8412”を介してアンペグのベース・アンプ“B2R”に接続されていた。

イリュージョン・フォース:オリー・バーンスティーン 2