KNOCK OUT MONKEYが来たる2017年7月5日、3rdスタジオ・フル・アルバム『HELIX』を発表する。緻密さと豪快さが同居したこの力作の解禁に先んじて、彼らは去る5月より作品タイトルを冠した“KNOCK OUT MONKEY TOUR 2017 “HELIX””を開始。12月初頭まで続くというこの長いツアーの中から、その3公演目である6月4日・渋谷クラブクアトロ公演を観る機会を得た。
ちなみに筆者が最初にKNOCK OUT MONKEYのライヴに触れたのは、確か2014年6月のこと。熱い瞬間と緩い時間が50:50で入り混じった何ともミクスチャーなステージだった記憶があるが、ギタリストのdEnkAいわく「あの頃は色んな側面を見せたくて試行錯誤していた」とのことで、3年あればライヴもガラリと変わる。今回の彼らは頭からお尻まで息をつく暇もない、徹頭徹尾暴れまくる“やんちゃ100%”なパフォーマンスで圧倒してくれた。
今回のツアーで彼らはほぼ毎公演ゲスト・アクトを迎えており、この夜のオープニングを飾ったのは大阪在住の4人組アイドルPassCode。…と書くとミスマッチ感が半端ないが、その音楽性はEDMの要素を含んだ激アグレッシヴなラウド・ロックであり、本格的バンド・サウンドの上で可愛い女の子たちが歌って踊って煽って叫ぶという異世界音楽。そのファンたちも大挙していたフロアは、開始数分でモッシュが巻き起こるブチ切れ具合。40分間で会場の熱をこれ以上ないぐらいに上げまくった。
ダンサブルなSEをバックにdEnkA(g)、ナオミチ(dr)、亜太(b)、w-shun(vo, g)の4人が登場。「JET」の裏打ちリズム連続リフと、バーニーの白いギターを抱えたw-shunの「かかって来い東京!」というドスの聞いた声と共に、いよいよKNOCK OUT MONKEYのライヴがスタートする。黒いメサブギー3段積みの威容の前で、ギブソン“Les Paul Axcess”というフロイドローズ搭載のマニアックな武器を手に、最初からこれでもかと弾きまくるdEnkA。ムキムキの筋肉で細かいリフも勢いあるスウィープ・アルペジオも丁寧に決めるその様は、何とも力強くて安心感がある。続く「RIOT」ではフィンガーボードを大きく使うヘンテコなリフを豪快に奏で、「You have got freedom」ではオクターヴ、カッティング、アルペジオ、ハーモニクスなどなど多彩なフレーズを細かく紡ぎ…。彼のプレイはこのジャンルでは異端とも言えるほど、実に繊細で多彩だ。その忙しさもあってか、そして観客の熱量に当てられてか、3曲目にして既にドレッドヘアから汗が滝のように流れている(笑)。もちろんその量は他の3人も変わらないわけだが。
このツアーでは新作からの曲が既にかなりの頻度でプレイされており、この日もセットリストの4曲目に、アルバムでも4曲目に当たる「Dog」が登場。4月末から先行公開されているとはいえ、馴染みの曲であるかのように大合唱が起こったことに驚かされたが、それはKNOCK OUT MONKEYにしては比較的シンプルで間の多い曲調だからかもしれない。コーラスもリフもメロディックで憶えやすくて魅力的だ。さらには昨年11月リリースのシングル曲「Do it」と、そのカップリング「Jump」に挟まれる形で、新作のオープニングを飾る予定の「Louder」も披露。w-shunは「べらぼうに踊れる新曲をやるんで聴いてください」と言っていたが、踊れるというよりは暴れられると言った方が合っているド直球の爆裂ナンバー。それでいて複雑なコード運びや半音階を多用したギター・ソロなど、随所にdEnkAの細かいフレージングがあふれていることは言うまでもない。実にKNOCK OUT MONKEYらしい仕上がりに、今この瞬間初めて耳にしたはずの観客も大喜びだ。
また古くからのファンが喜びそうなインディーズ時代の「What’s going on now」「Scream & Shout」に続いて、またもや新作からの「Run」を披露するという、振り幅が広くて心憎い演出も。こちらは鋭いピッキング・ハーモニクスが耳に残るギター・フレーズから始まり、全編にポジティヴな泣きの歌メロがフィーチュアされたキャッチーなナンバーで、やはり観客からは初めて聴いたと思えない好リアクション。これだけ新しい曲を連発するのは本来なら“大胆に攻めた選曲”だが、何の違和感もなく大歓迎される辺り、ファンに愛されてるなあ…とつくづく思わされる。
ライヴはその後、軽やかなカッティングとハーモナイザーの効いたペンタ系ソロが光る「OH, NO」、dEnkAの好きなスラッシュ(ガンズ・アンド・ローゼズ他)を思わせるメロディー弾きとダイナミックなワウ使いが印象的な「Paint it Out!!!!」、爽やかに跳ねる「Flight」とダークに激しく重く突っ走る「Bite」まで、ほぼノンストップ。と言うより、オープニングからエンディングまでの約70分に渡って、クールダウンする瞬間は全くなかった。もしかすると今回のセットリストが、対バン形式ならではの凝縮した仕様だったからかもしれないが、力があり余っている若いファン層にはこの形の方が合っているはず。そのエネルギーを吸い取って、メンバーも全力以上のパフォーマンスで応える。この熱さと暑さが、今のKNOCK OUT MONKEYの真骨頂なのだろう。
KNOCK OUT MONKEY 2017年6月4日@渋谷クラブクアトロ セットリスト
1. JET
2. RIOT
3. You have got freedom
4. Dog
5. Do it
6. Louder
7. Jump
8. What’s going on now
9. Scream & Shout
10. Run
11. OH, NO
12. Paint it Out!!!!
13. Flight
14. Bite