レア曲が“スペシャル”感をより一層高めたセットリスト
王道アメリカン・ロックの雄、ナイト・レンジャーが日本武道館の舞台に帰ってきた。前回の武道館公演は’86年1月、二度目の“Seven Wishes Tour”の時のことだったから、およそ35年ぶり。近年のジャパン・ツアーはクラブ〜ホール規模の会場が主だっただけに、個人的には集客に若干の不安もあったものの、蓋を開ければ二階席までほぼ満員の盛況振りだったのは、今回が日本でのラスト・ツアーを謳っていたことに加えて、閉塞感漂う現代日本において、常にポジティヴなエネルギーを発散する彼らのライヴを、多くの音楽ファンが渇望していたことの現れだったのかもしれない。そして、彼らは今回の日本公演でその期待に見事に応えてくれた。
楽屋でのメンバーの会話を模した寸劇調SEが場内に流れ、ステージを覆っていた幕が降りると、1曲目にプレイされたのはブラッド・ギルスとケリ・ケリーのツイン・ギター・ハーモニーをフィーチュアした「This Boy Needs To Rock」。途中ディープ・パープルの「Highway Star」を挿入したお馴染みのアレンジを含め、のっけから痛快なパーティ・ロックで会場全体をハッピーなムードで包み込んでいく。そして、ここから「Seven Wishes」「Faces」「Four In The Morning」「Sentimental Street」「Interstate Love Affair」といった『7 WISHES』(’85年)からのナンバーを立て続けにプレイ。もちろんこれは、リリースから今年でちょうど40年を迎えた同作を祝う選曲で、「Faces」と「Four In〜」の間には、背後のスクリーンに当時のMVなどで構成された映像が映し出され、観客を郷愁の世界へと誘った。さらにレア曲「Interstate〜」の存在が、“スペシャル”感をより一層高めるのに貢献していたことも特筆しておきたい。

『7 WISHES』セクションがひと段落付くと、7曲目の「Sing Me Away」からは、ひたすら名曲が連なるいつものナイト・レンジャーのライヴを展開。途中ブラッドとジャック・ブレイズ(vo, b)のキャリアを振り返ってオジー・オズボーンの「Crazy Train」(今回は演奏前にオジーを追悼して数秒の沈黙が捧げられた)とダム・ヤンキーズの「High Enough」がプレイされたのもお約束で、次々に繰り出されていく楽曲のどれもが観客の唱和を誘発していたのは、ひとえに彼らの素晴らしいマテリアルの為せる業と言っていいだろう。歌メロはもちろん、ギター・ソロ、さらにはバッキングの1フレーズに至るまで口ずさめるキャッチーさに、改めて彼らのコンポーザー/アレンジャーとしての類稀なる才能を実感した次第だ。しかも、それらをプレイするバンドの実に楽しそうなこと。弦楽隊3人は初っ端からステージ上を駆け回り(あれでジャックが御年71歳とは到底信じられない!)、ブラッドはエキサイトするあまりいつも以上にはっちゃけたアーミング技をキメまくる。さらに「Night Ranger」に挿入されたケリー・ケイギー(vo, dr)のドラム・ソロ(和太鼓奏者の黒流が客演)では、他のメンバーがスティックを手にケイギーの元に集まり、彼と一緒にトライバルなグルーヴを刻む場面も。半世紀近いバンド・キャリアを経ながら、いまだに強固なフレンドシップで結ばれた彼らの姿を見て、妙に温かい気持ちになったのは筆者だけではあるまい。





ファンの期待に応えた高難度技巧の再現
その後、セットは彼らのデビュー・シングルにして、屈指のツイン・リード・チームを世に知らしめた人気曲「Don’t Tell Me You Love Me」で一旦終了。残すはアンコールのみ、日本で彼らの演奏を楽しめるのもあとわずかだ。ステージに戻ってきた彼らは、大ヒット・バラード「Sister Christian」をプレイすると、ジャックが今夜が日本でのラスト・ショウになることと、日本のファンへの熱い思いを伝え、続いて美しいアコースティック・ギターのアルペジオが鳴り響く…、そう、「Goodbye」だ。バンドの熱演が繰り広げられる中、我々の脳裏には40年近いバンドとの歴史が走馬灯のように駆け巡っていく。しかし、いつまでも感傷に浸っている場合ではない。アンコールの最後を締め括るのはもちろんこの曲、「(You Can Still)Rock In America」! ギター・ファンにはジェフ・ワトソンのエイトフィンガー・ソロで知られる当曲だが、’14年加入の4代目ギタリスト、ケリが見事にこの高難度技巧を再現し、ファンの期待に応えた。そして、パイロが炸裂する派手派手しいエンディングを経て2時間20分超に及んだナイト・レンジャーのショウは大団円。この時、ステージ上のメンバーと観客の顔には、爽快で充足感に満ちた表情を見てとることができた。
「歳を取って2〜3年後にはどうなっているか分からないから、最高のパフォーマンスができる今のうちに」(ブラッド談)との思いから、“ラスト・ツアー”と銘打つことになった今回の日本公演。しかし終演後、BGMの「Rock And Roll All Nite」(KISS)が場内に流されていた約4分間、観客の大半は席を離れず、ステージ上のメンバーも日本のファンとの別れを惜しむ様子を見せていたのを見るに、この決断が両者にとって本意ではないことは明らかだ。そしてさらに言えば、今の日本には彼らのように我々を元気付けてくれるバンドと音楽が必要なのだ。再び彼らによる極上のパフォーマンスをこの地で体験できる日が来ることを強く祈りたい。

ナイト・レンジャー@日本武道館 2025.10.16 セットリスト
1. This Boy Needs To Rock
2. Seven Wishes
3. Faces
4. Four In The Morning
5. Sentimental Street
6. Interstate Love Affair
7. Sing Me Away
8. Touch Of Madness
9. The Secret Of My Success
10. Rumours In The Air
11. Call My Name
12. Eddie’s Comin’ Out Tonight
13. Crazy Train(OZZY OSBOURNE cover)
14. Night Ranger incl. drums solo
15. High Enough(DAMN YANKEES’ song)
16. Reason To Be
17. High Road
18. Can’t Find Me A Thrill
19. When You Close Your Eyes
20. Don’t Tell Me You Love Me
[encore]
21. Sister Christian
22. Goodbye
23. (You Can Still)Rock In America
来日ツアー公式グッズの通販がスタート!

今回の大阪・東京公演会場で販売されたナイト・レンジャーの2025年来日公演オリジナル・グッズの、オンライン通販がスタートした。1982年から2025年までの全日本公演日程がバックに記載されたメモリアルTシャツ(上写真)をはじめ、マグカップ、バンド・ロゴの金属製キーホルダーなどに加えてウェブ限定の湯呑みやスマホ・スタンドなど、ラインナップも豊富だ。当日買い逃した方も、残念ながらライヴを観られなかった方にも、ぜひチェックしていただきたい。なお下記の期間限定での販売で、全アイテムが数量限定のため、期間内であっても売り切れとなる可能性があるので、お早めに!
販売期間:2025年10月24日(金)12:00〜2025年11月30日(日)23:59
詳細・販売リンク:【ナイト・レンジャー】公演グッズ販売開始
ナイト・レンジャー公式インフォメーション
公式ウェブ:Night Ranger
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