NOISE FLOOR／スポックス・ビアード

米国を代表するプログ・ハード・バンドの13作目（２枚組）。１枚目は正統派のハードな曲が揃い、変拍子や転調を自在に扱いながら技巧的な達者さを見せていくが、入り組んだ演奏を包み込んでいるザ・ビートルズとクラシック音楽が交わったような形の歌メロのポップさも侮れない。奥本亮（key）のメロトロンやオルガンの古式ゆかしい音色や、指弾きの達人：アラン・モーズ（g）のアタック感のまろやかさも大切な聴きどころ。２枚目は欧州で既発のEPにデモ音源等を追加した特別盤だが、’70年代からの薫陶を受ける彼らの実態が、より直接的に刻まれた６つのデモが実に秀逸。個人的にはこちらが本編かも。

【文】菅原健太