プロ・ミュージシャンは爆音対策をしている?
プロ・ミュージシャンの方はライヴ本番以外にリハーサル等も含めて、長く爆音の中にいることになりますが、耳に対して何かケアなどをされているのでしょうか?
(カフス/20代/男性)
意外に思われるかもしれませんが、プロのバンドの音量は…
人によっていろいろな方法があると思いますが、リハーサルについて言うと…まず、アンプの真正面に立たないことが大切ですね。もちろんヴォーカルやドラムと言ったほかのメンバーに対しても自分のアンプから出る音が直撃しないように、配慮が必要です。
意外に思われるかもしれませんが、プロのバンドのリハーサルは爆音ではやりません。各メンバーがお互いの演奏を確認しなければならないので、音量よりもバランスを大切にします。したがって、音量は必然的に必要最小限になりますね。そういう意味で言うとリハーサルにおける耳のケアという考え方はあまり必要ないかもしれませんね。リハーサル・スタジオの面積や構造上の問題でどうしても耳に負担のかかる場合は「耳栓」をするしかありませんが、リハーサル中に「耳栓」をするケースはあまり聞きません。
ついでに言うと、プロのミュージシャンは基本的に耳を大切にしながら生活していますので、ヘッドフォンで好きな音楽を聴く際も出来るだけ音量は控えめにしているはずです。逆にアマチュアの人たちは自分のことしか考えない、もしくは、メンバーに配慮する余裕がない?ために「爆音」でリハーサルを行なう傾向があります。これが一番心配ですね。あなたは大丈夫ですか?
また、ライヴ本番中における耳のケアですが、基本的には今まで書いてきたことと大きくは変わりません。東京ドームやアリーナ・クラスの会場ではさぞや爆音でやっているだろうと思うかもしれませんが、逆なんです。ステージが広くメンバーとの距離も遠いので、アンプから出る音を直接聴くのではなく、各メンバーの足元にあるモニター、もしくはイヤモニに「実にバランスよくミックスされた音」が流されているんです。私も大きなステージの経験がありますが、驚くほど心地よい音に包まれて演奏できるんですよ。
とはいえ…ザ・フーのピート・タウンゼンドやAC/DCのブライアン・ジョンソン、そしてポール・ギルバートのように、爆音にさらされたために難聴を患っているケースもありますね。ポールには直接話を聞いたことがありますが、患ってからというもの、アンプやモニター・スピーカーの位置などを出来るだけ耳の負担にならないよう本当に注意して決めているので、音響スタッフにも迷惑をかけてしまい大変なんだそうですよ。ライヴでは、ヘッドフォンを耳栓代わりに着用していることもありました。実際に聴覚障害を患ってしまったら、速やかに医者の指示に従わざるを得ません。
とにかく常に心地よいサウンドに包まれるよう、メンバーや関係者と工夫してみることですね。
(Pic:Masayuki Noda)