コードが転回されていると分からなくなる…
YouTube等でギターの演奏を目コピする時に、これは何のコードかな?と指元をよく見て、ルート音から1度、短3度、5度、短7度だから○m7だなとわかるんですが、コードが転回形になっているとルート音がどれかわからずコード名がわかりません。スマホで調べればわかる時もありますがそれが確実に合ってるか自信も持てません。コード名を知ることで自分が弾きやすい形に変えたり、別なコードにアレンジしたりしたいので、何かいい方法があれば教えていただきたいです。よろしくお願いします。
(ちゃんぷ/20代/男性)
3つのポイントをチェック!
コードの転回形を理解すること、ベース・ラインをしっかり確認すること、そしてテンション・コードを理解することが重要ですね。いくつか詳しくお話しましょう。
転回についてのおさらい
まずは転回についてのおさらいです。基本的に、コードは主となる音の上に、3度ずつ音を積み重ねて作っていきます。一番下に来る音はベース音(base note)と呼ばれ、これがコード・ネームを決める元になります。例えばCメジャー・コードならベース音はルート(R)のC音で、その上に長3度(M3rd)のE音、完全5度(P5th)のG音…というコード・トーンが積み重なります(図1)。
さて、ここでベース音であるルートのC音を1オクターヴ上に移動させてみましょう。すると、下から2番目だったM3rdのE音がベース音になります。この時のコード・ネームは、一番下の音がEだからといってEメジャー・コードになったのではありません。C、E、Gの音から構成されるCメジャー・コードのままです。このように、構成音の順番を入れ替えることを転回といいます。表記にはいくつかありますが、ここではベース音を分母に、コードそのものを分子に表す分数のような形を紹介しましょう。例えばE音がベース音の場合、コード・ネームはC/Eとなります(図2i)。
次にE音を1オクターヴ上に移動…つまり転回させると、今度はG音が1番下になりました。それでもこのコードはまだC音とE音とG音で構成されています。表記はC/Gとなりますが、実質的にCメジャー・コードであることは変わりません(図2ii)。
7thコードの場合も同様です。図3はCmaj7コードですが、音の順番が変わっても性質がほぼ変わらないので、どの音がベース音にきても同じコードのままです。
ギターにおけるコード・フォームとコードの転回
ところで、楽曲の中でどんなコードが使われているか確認する際は、その時鳴っているすべての楽器の音に対して、ベースなどの最も音域の低いパートを基準に考えていきます。ですから、ベース・ラインの音を知ることはとても大事なのです。
さて、C音をルートにした7thコードを例にとって、ギターで1弦から4弦までを押さえるフォームを考えてみましょう。なぜ4弦までかというと、バンド・アンサンブルの中ではルート音などを低音楽器が担当し、ギターは中域を弾くという風に、コード・トーンが振り分けられることが多いからです。
図4のコードはすべてCmaj7です。ダイアグラムにはベース音となる4弦の音を記したほか、ルートのC音をオレンジ色(●)で表してあります。開放弦から12フレットまでの1オクターヴの間に、6種類のフォームがありますね。5〜6弦を省略しているため、例えば(1)や(2)はギター単体で弾くとEmに聴こえますが、この時ベースがC音を弾いていれば、これはCmaj7の一部だといえます。(3)以降はルートのC音が入っているので、ギター単体でもCmaj7の転回形であることが分かるでしょう。図5のCm7も同様です。(2)は1〜4弦の中にC音が含まれていませんが、ベースがC音を鳴らしていればCm7と考えられます。
ベース音がコード・トーン以外の場合
ところが、ベース音がコード・トーン以外の音になると、状況が変わって来ます。例えば、ギターが図4の3つ目のフォームを押さえている時にベーシストがC音を弾いたらCmaj7です(図6i)。しかしA音を弾くと、Cmaj7/Aというコードになりますが、A音をルートとしたAm7(9)というコードとも考えることができるのです(図6ii)。また、図5のCm7の4つ目のフォームを弾いている時にベーシストがC音を弾けばCm7ですが(図7i)、A♭音を弾けばCm7/A♭、またはA♭音をルートとしたA♭maj7(9)というコードの可能性があります(図7ii)。楽曲のKeyやコードの前後の流れを意識して判断していくことになりますが、これはテンション・コードの知識がないと理解できない領域ですね。
テンション・コードについては今回深くは触れませんが、あなたの悩みは、あらゆるコードの転回形が弾けること、ベース・ラインをしっかり聴き取ること、そしてテンション音が入ったフォームを理解すること、この3点が完璧でなければ解決しないと思います。
アドヴァイスとしては音楽理論を勉強することと、ジャズ/フュージョン・スタイルのギタリストを研究(コピー)することですね。1980年代に人気のあった、クロスオーヴァーと言われるジャンルの音楽は勉強するには良いと思いますよ。例えばラリー・カールトン、リー・リトナー、ロベン・フォードなどですね。カッコ良いし、楽器ひとつひとつの音が分離しているからコピーしやすいですよ。ではでは!