トニー・マカパインのジャパン・ツアーが9月に決定。この報せを聞いて狂喜乱舞しているファンは多いはず。トニーはこれまでにG3やリング・オヴ・ファイア、PSMSなどで来日はしているが、ソロとしては今回が日本初の単独公演となるのだ。奇しくも『EDGE OF INSANITY』でのソロ・デビューから30周年。今なおシュレッド・ギターの究極を追い求め続ける彼の真髄が、いよいよ日本のステージで全開発揮されることになるのだ。
今回の来日は、『EDGE OF INSANITY』(’86年)と『MAXIMUM SECURITY』(’87年)が全曲演奏されることが目玉となっている。いずれも“ネオ・クラシカルの天才”トニーの地位を盤石なものとした初期の代表作である。ここで改めて、この2作品の魅力を振り返ってみたい。また、2ページ目では本ツアーの開催にちなんだトニーとのミニ・インタビューを掲載しているので、ぜひご一読を。
CD | 輸入盤 | 1986年発表
- (1)Wheel Of Fortune
- (2)The Stranger
- (3)Quarter To Minight(live solo)
- (4)Agrionia
- (5)Empire In The Sky
- (6)The Witch And The Priest
- (7)The Taker
- (8)Chopin, Prelude 16, Opus 28
- (9)Edge Of Insanity
- (10)The Raven
- (11)No Place In Time
★“Shrapnel”レーベルからリリースされたデビュー作。同社は’80年代初頭よりオムニバス『U.S. METAL』シリーズで優れたギタリストを擁するバンドの音源を多数紹介しており、当初から“テクニカル・ギター重視”という姿勢を打ち出していたが、リリースされるアルバムはグラム・メタルやパワー・メタルが多かった。これに対してトニーのアルバムは、全編インストのネオ・クラシカル・アルバムとなっている。
超速クラシカル・フレーズの嵐だが、弾きまくるだけで楽曲が平坦になることなどなく、起承転結のはっきりしたフレーズがドラマティックに展開していくという、楽曲としてのクオリティの高さは驚異的。歌のないインストを嫌う向きにも一枚通して聴きやすいだろう。
スピーディーな(1)(2)(10)は特にアルバムを象徴する楽曲で、(5)の叙情性も光る。キメの細かいピッキング技、[スウィープ→タッピング]といった得意技の数々が全編で炸裂している。
トニーがギターとキーボードを担当し、その脇を固めるのはビリー・シーン(b)、スティーヴ・スミス(dr)という名うてのプレイヤーたち。演奏面のクオリティも完璧だ。本作のリリースとヒットにより、“Shrapnel”はテクニカル・ギター・インスト作品を中心に据えた方向へと舵を切ることになる。イングヴェイ・マルムスティーンの『RISING FORCE』(’84年)と、本作の同年に“Shrapnel”から発表されるヴィニー・ムーアの『MIND’S EYE』と並び、ネオ・クラシカル・ギターの基本と理想型を提示した名作だ。
- (1)Autumn Lords
- (2)Hundreds Of Thousands
- (3)Tears Of Sahara
- (4)Key To The City
- (5)The Time And The Test
- (6)The King’s Cup
- (7)Sacred Wonder
- (8)Etude #4 Opus #10
- (9)The Vision
- (10)Dreamstate
- (11)Porcelain Doll
★“Polygram”からメジャー・リリースされた2nd。本作ではトニーがベースを兼任。ドラマーはディーン・カストロノヴォだ(一部をアトマ・アナーが担当)。(3)(9)にジョージ・リンチ、(6)にジェフ・ワトソンがゲスト参加している。
1stと同路線ではあるが、メロディーの良さはこちらに軍配が上がるだろう。楽曲の練られ具合がさらに上昇しており、クラシカルなシュレッド技の数々を惜しげもなく披露しつつ、それらのテクニックを活かしながら構築された叙情的メロディーが押し寄せて来る様は圧巻だ。速弾きという部分を無視して聴いても、トニーの尋常ではない作曲センスが完全確立されている。
特に衝撃的なのが(2)で、アルペジオを取り入れたメイン・リフの時点から スウィープやタッピングなどトニーの代名詞的なテクニックを盛り込みながら、あくまで哀愁のメロディーを紡いで行くという名曲だ。加えて、ナイーヴなジョージとのソロ・バトルが緊張感を演出する(3)もトニーの代名詞的なナンバーとなっている。ジェフのギターがトニーと絡み合って勇壮さを醸し出す(6)も必聴。多くのファンが最高傑作とするのもうなづける内容だ。
今回の来日公演では以上の2作に加えて、4月に発表された最新作『CONCRETE GARDENS』からの楽曲も多数プレイされるようだ。
CD | 輸入盤 | 2015年発表
- (1)Exhibitionist Blvd
- (2)The King’s Rhapsody
- (3)Man In A Metal Cage
- (4)Poison Cookies
- (5)Epic
- (6)Napoleon’s Puppet
- (7)Sierra Morena
- (8)Square Circles
- (9)Red Giant
- (10)Confessions Of A Medieval Monument
- (11)Concrete Gardens
- (12)Maiden’s Wish
★約4年ぶりのソロ・アルバムとなった本作は、ピート・グリフィン(b)、アキレス・プリースター(dr)とともに制作。多弦ギターを駆使したヘヴィなサウンドとフュージョン的なテイストは、いかにも最近のトニーらしい。しかし、ダークで実験的なカラーがあまりに強かった近作と比べるとよりストレートにシュレッドが連発される楽曲は、初期からのファンにもアピールするところが大きいだろう。それはトニー自身も意識していたようで、全編でトニーの持ち味と言える緊張感溢れるギター・ワークを味わえる作品となっている。(1)から濃密なプレイが息もつかせぬタイミングで連発され、(6)ではドリーム・シアターにも通じる重厚なメタル・ナンバーを展開。(10)は1stに収録されていてもおかしくないキャッチーさだと言える。また(8)にはジェフ・ルーミズがゲスト参加し、現代最高峰の壮絶な速弾きバトルを聴けるというのもポイントだ。
(このアルバムの楽曲やギター・プレイに関しては、DVD映像も付属したヤング・ギター6月号で詳細をチェックしていただきたい)
なお来日公演でトニーのバックを務めるのは、ビヨルン・エングレン(b)とトーマス・ラング(dr)という2人。いずれも世界トップ・クラスの凄腕プレイヤーだ。テクニカル・ギターを愛する者としては絶対に見逃せない歴史的ショウとなるだろう!
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トニー・マカパイン ミニ・インタビュー:それぞれのアルバムが持っている音楽的な“ストーリー”を伝えたい
Tony MacAlpine CONCRETE GARDENS Japan Tour 2015
日程:9月29日(火)
会場:大阪 心斎橋JANUS
開場:18:30 開演:19:30
チケット料金:8,000円(税込)+ドリンク代(600円)
日程:9月30日(水)
会場:川崎クラブチッタ
開場:18:30 開演:19:30
チケット料金:8,000円(税込)+ドリンク代(500円)
詳細・お問い合わせ:クラブチッタ
電話:044-246-8888