“WAZA Tube Amp Expander”がライヴのステージを一変!
さて、ここからはヤング・ギター本誌に掲載できなかった部分。このページではより具体的に、“WAZA Tube Amp Expander”をライヴのステージで活用する方法について説明していこう。
まず最も基本的なセッティング方法は、下記図A-1の通り。
具体的に言えば、まずアンプ・ヘッドのスピーカー・アウトから“WAZA Tube Amp Expander”のFROM TUBE AMP端子に接続し、TO SPEAKER端子からスピーカー・キャビネットへと接続。つまりパワーアンプとスピーカーの間に、直列で本機を挟み込む形だ。こうすることで100Wなどの大出力アンプの音量を、ステージで使うのに適切なレベルまで調節することが可能となる。
大出力アンプの音量を下げることができる利点は、前ページでも触れた通り、ヴォリュームを「クランクアップ・サウンドを得るための音作り用ツール」にできることだ。飽和によって得られる粘りや倍音などの要素を好みの状態まで調節し、なおかつステージ上のメンバーやお客さんにとって快適な音量でプレイできるわけである。
全く同じセッティングで、逆に出力の低い小型チューブ・アンプを“WAZA Tube Amp Expander”の内蔵パワーアンプで100W化し、バンド演奏に十分な音量を確保することもできる。たとえ1Wなどのアンプであっても、ドラムの爆音に対抗できるようになるので、例えば自宅で使っている小型アンプのセッティングをそのままステージに持ち込むことだってできてしまう。
また図A-2の通り、ライヴ現場にヘッドだけを持ち込み、ライン・アウト端子からPAミキサーへXLRケーブルで信号を送るという、極めて現代的なセッティングも“WAZA Tube Amp Expander”を用いれば可能だ。
本機のRIGダイヤルには初期状態で10種類のスピーカー・キャビネットがプリセットされているが、より細かくこだわった音作りを行ないたければ、USB端子に接続したPC上でエディター・アプリ(WindowsとMac両対応)を立ち上げることで、22種類のキャビネット、5種類のオン・マイク、3種類のルーム・マイクを選ぶことができ、なおかつスピーカーに対するマイキングの位置や距離なども変更可能になる。
種類 | 内容 |
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キャビネット・シミュレーション:22種類+ユーザー4種類 | 4x12" STANDARD、4x12" R-FIER、4x12" BRIT STACK、4x12" CLASSIC STACK、4x12" GREEN/V30、4x12" for FOH、 4x10" STANDARD、4x10" SUPER COMBO、4x10" TWEED COMBO、4x10" for FOH、 2x12" STANDARD、2x12" DIAMOND AMP、2x12" for FOH、 1x12" STANDARD、1x12" TWEED DELUXE、1x12" DELUXE COMBO、1x12" for FOH、 1x10" STANDARD、1x10" for FOH、 1x8" STANDARD、1x8" MINI COMBO、1x8" for FOH USER 1〜4 |
マイクロフォン:5種類 | DYN57、DYN421、CND451、CND87、FLAT |
ルーム・マイク:3種類 | ANECHOIC、SMALL ROOM、BIG ROOM |
ちなみに表1の中にあるUSER 1〜4は、IR(インパルス・レスポンス)データを読み込むことのできる空きスペースだ。IRデータとは、スピーカー・キャビネットの音響特性をデータ化したファイルのことで、様々なメーカーから発売されていたり、あるいは個人で作成したものがウェブ上で公開されていたりする。こういったデータを取り込んで行けば、理論上“WAZA Tube Amp Expander”は無数のスピーカー・キャビネットのシミュレーションを扱うことが可能になるわけだ。
さらに上級編として、図A-1と図A-2のセッティングの併用…つまりスピーカー・キャビネットを鳴らしつつマイキングし、同時にライン信号をPAにも送って、両方の音をブレンドすることでより緻密な音作りを行なう図A-3のようなパターンもある。
ちなみに場合によってはラインの信号とマイクの音の位相がずれてしまうケースもあるが、最近のPAミキサーなら補正するのは容易なので、ブレンドすることでより太く高密度なサウンドを完成させることができる。
また前ページで軽く触れた通り、“WAZA Tube Amp Expander”をライヴのステージで用いる別の利点として、高品質な内蔵エフェクトを音作りの一環として組み込めることが挙げられる。その内訳はコンプレッサー2種類、ディレイ5種類、リヴァーブ6種類、EQ2種類。これだけでも音作りのヴァリエーションとしては十分過ぎるほどだが、どうしてもこだわっている外部エフェクターがある場合、本機のエフェクト・ループに接続して使うことが可能だ。
たとえエフェクト・ループが搭載されていないヴィンテージ系のアンプでも多彩な音作りができるわけで、さらに言えばクランクアップ・サウンド自体にエフェクトをかけるというのは、本来なら防音設備の整ったレコーディング・スタジオか、爆音を出してもOKなドーム級の会場でのライヴでしか成し得ないこと。それを自身の手元で設定できるというのは、こだわりの強いギタリストにとって嬉しい利点に違いない。
エフェクト | 内容 |
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コンプレッサー:2種類 | RACK 160D、VTG RACK U |
ディレイ:5種類 | SINGLE、PAN、STEREO、ANALOG、SDE-3000 |
リヴァーブ:6種類 | HALL1、HALL2、PLATE、ROOM1、ROOM2、SPRING |
EQ:2種類×2系統 | PARAMETRIC、GRAPHIC |
ちなみに筆者個人的には、スピーカー・キャビネットの前段とラインの前段に個別に用意されているEQが非常に素晴らしく感じられた。例えば「ステージ上は中域を持ち上げて音抜けを良く」「客席への音はエッジを効かせて迫力を出したい」といった融通が利くわけで、ライヴを頻繁に行なうギタリストなら非常に重宝するはずだ。
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