WAZA Tube Amp Expander / BOSS 真空管アンプの可能性を拡げる画期的ディヴァイス!!!

WAZA Tube Amp Expander / BOSS 真空管アンプの可能性を拡げる画期的ディヴァイス!!!

Leda(Far East Dizain)による“WAZA Tube Amp Expander”試奏レポート

Leda

最後にこの“WAZA Tube Amp Expander”の魅力をさらに分かりやすく読者のみなさんへお伝えするため、実際にプロ・ギタリストにしばらくの間使用していただき、その具体的な感想を伝えていただくインタビューをお届けしよう。

今回白羽の矢を立てたのは、自身のバンド以外にも様々なアーティストのサポートを務め、さらにプライベート・スタジオにてレコーディングまでこなしてしまう、若手随一の多才さで知られるLeda。彼には“WAZA Tube Amp Expander”を実際に1週間ばかり使用していただいた上で、主にサウンドに関するインプレッションを語っていただいた。

ロード・ボックスは「どこでも戦えるようにするための準備」

——Ledaさんは普段から、ロード・ボックスを愛用しているのでしょうか?

Leda:使っています。例えばお客さんが聴くPAスピーカーからの音はラインで作り込みたいけど、ステージ上ではスピーカーからの生の音をちゃんと聴きながら演奏したいといった場合に。あとは例えばツイン・ギターのライヴの現場で、相方のギタリストがどんなアンプを持って来るか分からないような場合は、必ずロード・ボックスを用意するようにしています。そうすればライン出しにもキャビ出しにも、両方対応できますから。どこでも戦えるようにするための準備という感じですね。

——Ledaさんは確かフラクタル・オーディオ・システムのデジタル・サウンド・プロセッサーをメイン・アンプとして使っていたと思いますが、それと一緒に真空管アンプ・ヘッドも常備しているということですか?

Leda:そうですね。フラクタルは自分のバンドで主に使っていて、サポートの現場の時には真空管アンプと一緒に、必ず一緒にロード・ボックスを持っていくようにしています。

——なるほど。レコーディング時はどうでしょう?

Leda:外部の大きなスタジオで作業する時はスピーカー・キャビネットを普通に鳴らすので、ロード・ボックスを使わないことも多いんですけど、主に自宅のスタジオで活用しますね。あと…最近のデジタル・サウンド・プロセッサーは、ものすごく難しい設定まで細かくできてしまうじゃないですか。それが逆に困りものだったりもするんです。どんな音にしようか、迷走してしまうことが多々あって。でも真空管アンプの場合、メーカーごとに確固たる基準がありますよね。「うちのアンプはこの音なんです!」みたいな(笑)。それがとてもありがたいというか。

——フレキシブルに動きたい現代のギタリストとしては、デジタル系がメインでありつつ、真空管アンプも常に基準として存在していてほしいわけですね。

Leda:そうですね、真空管アンプの方が圧倒的に強い分野は確実にありますから。人間とロボット…じゃないですけど、機械には機械の良さがある、人間には人間の良さがある。適材適所ですね。

——真空管アンプ自体は他には何を?

Leda:BARONという、もうなくなってしまったメーカーのものを主に使っています。それとマーシャルのケリー・キング・モデル“JCM800 2203KK”、それから“JCM2000”の改造モデルに、フェンダーのヘッドもありますね。

まずラインの音が素晴らしい!

そして今回、“WAZA Tube Amp Expander”を1週間ほど試奏していただいたわけなんですが…、感想はいかがですか?

Leda:まずラインの音が素晴らしいと思いました。それから…マイクの種類やマイクの位置、マイクの距離なども選べるんですが、その選択肢が広過ぎず狭過ぎないのもいいですね。ただ、初期設定されているプリセット自体、何もいじらなくても質が高いんですよ。僕自身はキャビネット・シミュレーターに慣れていますけど、“WAZA Tube Amp Expander”は初めて使う人でもかなり使いやすい。ラインの音を使う時っていうのは、例えばスピーカーに貼り付くような質感を出したい場合だったりしますよね。そういったドライな音がちゃんと出てくれる反面、マイクの設定をいじれば少し遠い音も作れるし。すごく実用的だと思いました。

——キャビネット・シミュレーションは22種類用意されていますが、どの辺りが気に入りました?

Leda:例えばクリーン系やクランチ系の音だと、1×12” TWEED DELUXE辺りがいいですね。
(註:ここからは実際に100Wの真空管アンプ・ヘッドを“WAZA Tube Amp Expander”に接続し、モニター・スピーカーへ出力しながら実演してもらった)

——なるほど、確かに小型キャビネットを振るわせている感覚がありますね。

Leda:いい感じにローやハイが削れたニュアンスも、ちゃんと再現されていますし。例えばエアロスミスとか、ああいったバンドを思わせますよね。あとクリーン系に合うキャビネットだと、1×8” MINI COMBOも好きです。

——これは小型コンボ・アンプのキャビネット部分を再現したものですが、実際は100Wのヘッドを鳴らしているというのが面白いですね。歪んだ音だとどうでしょう?

Leda:4×12” GREEN / V30が良かったですね。セレッションのスピーカーをイメージしているんだと思いますけど、ヴィンテージっぽいチャキっとした切れ味が出てくれるのがいいと思います。

——12インチ・スピーカーを4つ搭載しているニュアンスもしっかりありますね、奥行きやローの分厚さが感じられますし。ちなみにマイク・タイプは5種類の中から選ぶことができますが、歪み系だとどの辺りが好みですか?

Leda:DYN57辺りですかね。マイク・ポジションはCENTERとか、もしくは1cm、2cm辺りに設定するのが一番好きです。

——DYN57はシュアのダイナミック・マイクをイメージしたものですね。やっぱりロック系のギターだと、レンジが適度に絞れているダイナミック・マイクが合うんですかね?

Leda:そうですね。特に低域が適度に削れていて、高域がザラザラしている感じがリアルに再現されていると思います。まさにギターのレンジ感の中でちょうどいいところに、勝手に収まってくれるというか。

——Ledaさんは8弦ギターをメインに使用していますよね。音域の広さを考えると、コンデンサー・マイクの方が合いそうな気もしますが。

Leda:リフ系なら、僕はダイナミック・マイクの方が絶対に好きです。8弦ギターの場合、ローは逆にあまり出さなくても良いんですよ。実音が低いんで、過剰に低域を出すとベースと干渉してしまいますから。

——なるほど。試しに、AKGのマイクをシミュレートしたCND451に切り替えてみましょうか…。低域の膨らみがかなり増しましたね。

Leda:そうですね。もちろん再生しているモニター・スピーカーの特性もあると思いますけど。

——ノイマンのマイクをシミュレートしたCND87に切り替えると…。このアタック感はソロ向きですね。ザクザク感がものすごく出て来ました。

Leda:そうですね。DYN57みたいにバキっとしている方が、音の粒が荒くてバッキング向きだと思います。

——例えばLedaさんが自分のギターでバッキングを録音するとしたら、“WAZA Tube Amp Expander”をどんなセッティングにしたいですか?

Leda:自分が使っているアンプとの相性を考えると、キャビネット・シミュレーションは4×12” R-FIER辺りがいいかもしれないですね。マイクはDYN57、距離はSHORTにして、ポジションはCENTERから2cmの間ぐらい。ルーム・マイクはSMALLがいいかも。

——ソロ系の音作りだとどうでしょう?

Leda:4×12” CLASSIC STACK辺りがいいですね。意外とフラットな音色がほしいので、マイクはCND87辺り。距離は…曲にもよりますけど、MEDIUMの少し遠いようなニュアンスがいいと思います。ポジションは5cmくらい、ルーム・マイクはBIG ROOMがいいかな。

▼インタビュー中で実際にLedaに作っていただいた、バッキング用とソロ用のキャビネット&マイク・シミュレーション設定。彼の8弦ギターとBARON製アンプ・ヘッドとの相性を考えた音作りだ。

高品質なエフェクト類とループの活用

——外部エフェクトを接続できるエフェクト・ループに関してはいかがですか?

Leda:以前メインで使っていたマーシャルの“JCM800 2203KK”なんかは、もともと余計な回路が入っていないからこそ、音が良かったりするんですよね。ただ現代的な音楽をやるには、このシンプルさだと難しいという側面もあって。もし昔“WAZA Tube Amp Expander”があれば、ぜひ一緒に使いたかったですね。当時はここまでフレキシブルなロード・ボックスはありませんでしたから。このエフェクト・ループはかなり実用的だと思います。

——そしてさらに、内蔵エフェクトも加えることができるわけですが。

Leda:特に印象に残ったのは、エディター・アプリの使いやすさですね。僕はBOSSの“MS-3”も愛用していて、現行のスイッチャーの中では一番エディットしやすいと思っているんですが、“WAZA Tube Amp Expander”のエディターはそれに通じるものがあります。これだけ使いやすいからこそ、積極的に音をいじりたくなるんですよね。それにMIDIやフットスイッチでの操作もできますし、ライヴでの使いやすさがしっかり考え抜かれている辺りはポイントが高いですね。

(実際にエディットしながらリヴァーブをかけて弾いてみる)

——何というか、めちゃくちゃ良い音ですね!

Leda:曲に合えば、掛け録りにも使えますね。とてもいい掛かり方なので。

——ディレイはいかがですか?

Leda:せっかくなのでPAにステレオで信号を送ることを考えて、左右にディレイ音が振られるPAN辺りを活用したいですね。ステージ上で鳴らしているスピーカー・キャビネットが1台だけでも、客席には立体的なディレイ音が届けられるわけですから。

——コンプレッサーは2種類あって…VTG RACK Uは名前の通り、少し昔っぽい音がしますね。

Leda:バコンという潰れ具合が、いい感じに再現されている気がします。RACK160Dの方はよりハイファイな掛かり方ですね。例えばバンド・サウンドの中で「あからさまにコンプを掛けてます」ってわかるようにしたい場合は、VTG RACK Uの方がいいと思います。あと個人的に使い勝手が良かったのがEQ。

——スピーカー・キャビネット側とライン側、2系統で個別に掛けられるEQですね。

Leda:そうです。例えば客席に送るライン側の音を、このパートでは2dBだけ大きくしたい…というところがあるとしますよね。でも同じようにスピーカー・キャビネット側で2dB大きくなっても、バンドの中で弾いているとたいして違いが感じられないんですよ。だからといって5dBぐらい大きくしてしまうと、今度は客席側の音がめちゃくちゃでかくなり過ぎて…。

——なるほど、そういう時に個別の設定が生きると。

Leda:そうです。さすが、BOSSさんはわかっている!って思いますね(笑)。ただそんな風に色んなことができるわりに、ある程度ちょうどいい塩梅に抑えてくれている辺りがいいですね。

——あまりにもマニアック過ぎず、それでいて大雑把でもないと。

Leda:細かく調整できるけど、選択肢が多過ぎて迷うことが少ないというのは、実に日本人らしい設計ですよね。最近のBOSSさんは本当にすごいというか…、ギタリストにとって親しみやすいイメージを保ちながらも、プロ・ユースな新しい分野でも進化していると思いました。