MERRYが2014年12月24日、約3年半ぶりのスタジオ・フル・アルバム『NOnsenSe MARkeT』を発表した。どこか懐かしさのある歌謡曲的な楽曲と、パンキッシュな突き抜けた激しさのあるナンバー、それらを絶妙にブレンドしていくのが彼らのスタイルだが、今作はそのバランスがよりエネルギッシュな方向へシフトした印象。アレンジに関してはこの後の話で「シンプルになるよう心がけた」とも語られているが、それでも相変わらず緻密であり、凝りに凝りまくっている。結生と健一のギタリスト両名に、この新作での聴き所を色々と語ってもらった。
長い間ツアーをしていると自然な流れで作曲できるようになる(結生)
YG:シングル『ZERO -ゼロ-』(’13年)をリリースした際のインタビューでは、「山のようなアイデアを作ってはボツにするという作業を繰り返していた」とおっしゃっていましたよね。最新アルバム『NOnsenSe MARkeT』の制作も、同様に大量のアイデアから練って行ったのですか?
結生:今回はそれほど悩みませんでした。今作は「群青」(’12年)、「梟」(’13年)、そして「ZERO -ゼロ-」というシングル曲と、「群青」の会場限定盤のカップリング曲だった「Carnival」も含まれているんですけど、それ以外の新曲はデモの段階からわりと最初の段階からメンバーと方向性を決めながら作った感じですね。昔よりも賢くなったというか(笑)。長い間ツアーをしていると、「こういう曲はまだMERRYでやっていないから作りたいよね」みたいに自然な流れで作曲できるようになるんですよ。そういう意味で、今作は“ライヴに向けたアルバム”と言えるかも知れない。
健一:そうですね、ライヴで映える曲を作るという意識は、制作の最初の頃からありましたね。みんながそれに向けて曲作りをしていました。
YG:MERRYには作曲できるメンバーが沢山いるじゃないですか。例えば今作の2曲目「NOnsenSe MARkeT」は、作曲クレジットが“MERRY”とバンド表記になっていますが、こういう場合は具体的にどのように作曲が進んでいるんでしょう?
結生:作曲の初めの段階から、全員で作っていますね。具体的には「どういう曲にする?」という話し合いから始まって、「テンポはどうする?」「コードはどうする?」とか、そういう細かい作業を積み重ねて。
YG:スタジオでジャムる感じですか?
結生:ジャムる以前ですね。「NOnsenSe MARkeT」に関しては、ツアー中のホテルの一室で、僕と健一くんとネロ(dr)の3人で集まって作り始めています。さらにそれ以前に、この曲はガラ(vo)の歌詞が先にあって、「この歌詞に対して曲を作ってくれ」という彼のリクエストから始まっているんですよ。その歌詞に合わせて、ギターの生音でメロディーの案を出しながら作っていきました。歌メロはどんどん変わりましたけど、バックの演奏に関しては、ほぼその最初に作ったアイデアのまま。悩まず、そのままゴール!という感じですね。
YG:その「NOnsenSe MARkeT」ですが、リズム的な引っ掛かりのあるギター・ソロが面白いですね。ああいうソロは、頭で考えながら構成を組み立てている感じですか?
結生:そうですね。最近、ギター・ソロの部分で新しいコード進行が出て来るような、特別な構成のある曲を作っていないな…と思って、この曲ではそこを個人的に遊ばせてもらおうと思ったんです。半音ずつ上がるコード進行から入って、途中で健一くんとハモるところからまたコードが変わる…、そういう構成を考えました。
YG:イントロではオクターヴでハモる部分もありますが、独特の雰囲気を醸し出していますね。
結生:メロディーを目立たせたくて、まずエレクトリックで重ねてから、アコースティックでも同じメロディーを弾いてます。「和なテイストだけど、どこの国だ?」みたいなイメージですよね。そもそも歌詞も、どこの国のことを歌っているのか分からない内容なので(笑)、演奏にもそういうニュアンスが入っていた方が良いと思って。
健一:サビの歌メロのセンスがすごくガラらしくて、MERRYらしい曲ですよね。“昔からのMERRY”の要素が最も出ている曲かなと思います。
YG:その「NOnsenSe MARkeT」の前に、イントロ的に始まるのが「iNtO the mARkeT」。この曲は4本のアコースティック・ギターで構成されていますね。
結生:そうですね。他の曲にもアコースティックがちらほら入っているので、どうせならこのイントロもアコースティックにしちゃおうと。物悲しい感じが出て、結果的に上手く行きました。