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マイケル・シェンカー・フェスト2018 2018.9.5 @東京 国際フォーラム ホールA

レポート●斎藤新吉 Shinkichi Saito Pix●Mikio Ariga

MSF2018 - Michael Schenker

ハロウィンの“PUMPKINS UNITED”や、現行ラインナップと黄金期のメンツが合体したフォリナーなどもそうだが、昨今はベテラン・バンド新旧メンバーの大同団結によるライヴが度々話題になる。そういった試みの中でもマイケル・シェンカー・フェスト(MSF)はその成功ぶりが傑出している。当初は1ツアーのみの期間限定ファン・サービスかと思いきや、今やスタジオ作品『RESURRECTION』(’18年)を発表するまでになり、来日も‘16年8月、’17年10月(“LOUD PARK 17”のヘッドライナー)、そして去る8月末〜9月初頭の公演で3度目。マイケルは’14年から毎年日本に来ているが、流石は神。今回も大盛況に終わってファン・ベースの強さを再確認させられた。さらに内容的にもノスタルジックなツボを突きながら、新ネタと構成の妙でマンネリ感を打破するという、シェンカー来日史の中でも際立ったライヴとなったのである。

筆者が観た東京国際フォーラム公演は、全6公演に及ぶ日本ツアーの最終日。ネット上にはセットリストの詳細が氾濫していたはずだが、あえて筆者はその情報をシャットアウトして会場に向かった。どの曲で始まるのかと推測する楽しみを残しておきたかったからだ。まずは最新作からだろうか、それとも変に狙ったりせずに「Armed And Ready」で始めるのだろうか…。色々と考えを巡らせているうち、定刻通りに場内が暗転、「ワルキューレの騎行」がSEとして流れた瞬間に往年のファンが大歓声を挙げ、そしてステージにマイケルが現れた。他のメンバーはテッド・マッケンナ(dr)とクリス・グレン(b)、スティーヴ・マン(key, g)。つまりリード・ヴォーカリストがいない。この状態でマイケルが冒頭のコードを鳴らしたのだが…。

まさかの「Holiday」? それもヴォーカルはマイケルが自分で執っている!? これはまさしくサプライズ。普通だったら絶対にオープニング曲に選ばないであろうスコーピオンズのバラードを1曲目に、しかもマイケル自身の味わい深い歌声で聴けるとは。ただ「Holiday」は1コーラスのみで終わり、実質的なオープニングはUFOの「Doctor Doctor」だった。従来ならクライマックスで演奏することが多いこの曲を最初に持って来ること自体が驚きだ。1番はグラハム・ボネット、2番はロビン・マッコーリー、最終コーラスはゲイリー・バーデンが担当。特にグラハムがこの曲を1コーラス歌う光景なんて以前だったら考えられないことだ。マイケルは笑顔で身体を揺らしながら、ふくよかなトーンであのメロディーを情感たっぷりに演奏。当然しょっぱなから凄まじい歓声が会場に渦巻いていた。

MSF2018 - Band

ドゥギー・ホワイト

いきなり歴代MSGヴォーカリストが勢揃いするという豪華な幕開けだったが、「あれ、ドゥギーは?」という疑問も頭に浮かぶ。すると唯一の“非MSG”メンバーであるドゥギー・ホワイトは、リード・シンガーを1人ずつフィーチュアしたパートの一番打者として登場。「Live And Let Live」に始まり、彼の持ち歌であるテンプル・オブ・ロックのナンバーが「Vigilante Man」「Lord Of The Lost And Lonely」と続いていき、マイケルはステージ上手のアンプ前で没頭気味にリードを弾いている。テクニカルなリックもキメ細かいピッキングで再現。そこからもマイケルの絶好調ぶりがうかがえるというものだ。

テンプル・オブ・ロック楽曲はMSFとしては新ネタの1つだ。MSG楽曲に比べてどうしても知名度で劣るものの、ドゥギーは持ち前の熱い歌唱と大仰なアクションでもって観客をノせるべく奮闘し、マイケルも「Lord Of〜」の民謡的メロディーを骨太に揺らしながらアピールしている。ちなみに以前のテンプル・オブ・ロックはバンドとしての結束が強いのにアンサンブルがユルいという弱点もあったが、MSFの面々によってプレイされるこれら楽曲は圧倒的にタイト。さらに言えば’16年の時点ではソツなく破綻ない安全パイ的演奏だったが、今回は遥かに熱を帯びている。

ここで『RESURRECTION』からの初選曲「Take Me To The Church」。ドゥギーがリードで、ゲイリーとロビンがコーラスに加わる。以前のMSFでこういった演出があったのは「Dancer」と、全員勢揃いの「Doctor Doctor」ぐらいだったが、今回は要所要所で他のシンガーがリード担当をサポートするという趣向を見せる場面が圧倒的に増えていた。ゲスト・ヴォーカルを起用したお祭り的ショウと言うよりも、4人の専任ヴォーカリストを擁するMSFという1つのバンドによるステージングという感が強いのだ。

「マイケルと初めてプレイした曲だ」という曲紹介で始まった曲「Before The Devil Knows You’re Dead」は、テンプル・オブ・ロック時代と同様にドゥギーがメロイック・サインを掲げながら歌うという故ロニー・ジェイムズ・ディオへのトリビュート的な意味合いもあった。最後はドゥギーの“Thanks Ronnie”という囁きで締めくくられた。

ちなみにドゥギーのパートでマイケルが手にしていたディーン製シグネチュア・モデルは、ピックガードの半分が赤いという“Michael Schenker Fest V”。日本公演に登場したのはこれが初めてだ。

MSF2018 - マイケル・シェンカー

ロビン・マッコーリー

ひとまずドゥギーが退場してからプレイされた「Into The Arena」は、クリスのベース・ソロの後半を短縮してマイケルのレガートなソロを追加し、そこから後半につないでいくという珍しい構成。その後リード・シンガーがロビンに切り替わる。彼のパートは「Bad Boys」で軽快にスタート。アメリカンなノリのハード・ロックだが、マイケルのソロになると欧州的な妖しさが出るという不思議なマッチングが実に心地よい。ここで気づいたのだが、最初のツアー時はゲイリー〜グラハム〜ロビンというMSGの歴史に沿った流れが基本だったが、今回は時代を遡る構成なのだ。さらに屈指の技巧ナンバー「Save Yourself」が早くも炸裂。難なくソロを再現するマイケルの流麗な指捌きには、もはや恐怖すら感じさせる。ロビンの歌声も相変わらず安定感があり、ハリのある声で溌剌としたメロディーを歌い上げている。

MSF2018 - ロビン・マッコーリー&マイケル・シェンカー

ロビンのパートがこの2連発で始まるというのは実に良い構成だ。’16年のライヴではまったりしたバラードが多く、会場のテンションを下げてしまったということもあったが、こちらは観客の反応も上々。しかも今回のバラードはサビが歌いやすい「Anytime」とあって大合唱となり、この曲ではスティーヴとマイケルによる美しいツイン・リードという見所もあった。今回スティーヴはリード・ギターを弾く場面が増えていたのだが、音の温かみや演奏のコクという点で、彼こそマイケルのベスト・パートナーなのではないかという思いを新たにさせられた。

最新作で冒頭を飾っていた「Heart And Soul」では、ロビン以外のシンガー3人がサビになるとアンプの壁の後ろから現れ、コーラスを終えるとまたアンプに引っ込むという演出。この引っ込む時のグラハムの走り方が実に可愛いかったのだが、とにもかくにもマイケルの呪術的ソロが絶品。引続き3人コーラスを従えた「Love Is Not A Game」のエンド・ソロでも雄叫びを上げるかのようにヴィブラートが壮絶に決まった。

ここで最新作のリーダー・トラックだった「Warrior」がプレイされた。ロビン、ゲイリー、ドゥギーが一節ずつリレーし、サビはグラハムが担当という組み合わせで、シンプルな楽曲だがまるでジャーマン・メタルばりに壮大なムードを醸し出す。この曲が演奏されたのは、ショウのちょうど中間点。ハマるのはここ以外にないと判断されたのだろう。ちなみにグラハムがドゥギーと並んでいるという光景にデジャヴを感じたのは、レインボーの歴代シンガーが集まったイベント“The Voices Of Rainbow”がオーヴァーラップしたからだろう。よくよく考えてみれば、日本側プロモーターの企画によるシンガー勢揃いイベントがヒントとなって、’15年のマイケルとグラハムの共演につながり、さらにMSFとして世界に輸出されていったとも言える。そう思うと感慨深い。

グラハム・ボネット

リード・シンガー入れ替えのタイミングにはインストが入る、ということで「Ulcer」…ではなく「Captain Nemo」に続いてグラハム・ボネットのパートへと移行する。最初はMSFお馴染みとなったロビン&ゲイリーのコーラス・コンビを従えての「Dancer」だ。グラハムは“LOUD PARK”時はやや声が荒れていたが、今回は絶好調。PA側でヴォーカルのフェーダーを思い切り上げたのかと思うほどよく突き抜ける極太ヴォイスが炸裂する。ファンの反応を観ていても感じたことだが、グラハムのパートはMSFのショウの中でも特別感が強いように思う。それはアルバム発表時とリズム隊もシンガーも同じ、つまり最もリユニオン感覚が強いというのが理由の1つにあるのではないだろうか。しかもツアーが幻に終わった『ASSAULT ATTACK』(’82年)期のラインナップであるだけに…。すでにMSFの2度の来日で観ているとは言え、この奇跡的な光景は何度観てもため息が漏れる。

MSF2018 - グラハム・ボネット

「Dancer」のポップさとは打って変わっての「Desert Song」は、グラハムMSGの凄みを見せつける緊張感漂う熱演となった。ヨーロピアンな哀愁のリフと絶唱が生む迫力は圧巻の一言。ちなみに、このレポートを作成するために筆者の取ったメモを見返したところ、この曲だけ何も書いていなかった……多分圧倒されていたんだろう。ここで再びロビンとゲイリーを従えた最新作からの「Night Moods」が入る。牧歌的なメロディーのこの曲は「Desert Song」と良いコントラストになっていた。そして必殺の「Assault Attack」。リフが鳴り響くと同時に、おそらく今回最大級の歓声がわき起こる。やはりこの曲は格別だ。ソロの3連フレーズの端正な弾きっぷりはもちろん、哀愁のリード・メロディーもマイケルの魂がこもった壮絶な演奏だった。終盤でグラハムの声が裏返っていたのはご愛嬌。

さらに「Searching For A Reason」という『ASSAULT ATTACK』の中でも地味な部類に入る曲が選ばれたのは少し意外だったが、歌うようなマイケルのメイン・フレーズ、終盤のスティーヴとのハモりには思わず心を熱くさせられた。

MSF2018 - マイケル・シェンカー

ゲイリー・バーデン

最後のシンガー切り替わり時のインストはスコーピオンズの「Coast To Coast」。その前にマイケルが“これは俺が作った曲で〜”という、近年物議をかもしたエピソードを語ったため、少し背筋に寒いものが走ったが、ゲイリー主役のパートが「Are You Ready To Rock」で開始されると高揚感は一気にマックスへ。やはりMSG初期の曲は一発のリフだけで聴く者を虜にしてしまう。そこに乗るピッチも声量も不安定だが不思議な魅力に満ちているというゲイリーのヴォーカル。この安心感こそ彼とマイケルのケミストリーだ。

MSF2018 - ゲイリー・バーデン

ここから続いてはアルバム『MSG』(’81年)と同様に「Attack Of The Mad Axeman」。スタジオ盤でファルセットで歌っていたパートは、ゲイリーがいつものように低音に置き換えていたが、ロビンの高音ヴォーカルがオクターヴ上をナイスなフォロー。MSFならではのコンビネーションだ。MSFでは日本初披露となった「Rock My Nights Away」(贅沢を言えば’84年の『ROCK WILL NEVER DIE』のように「Captain Nemo」からつなげる構成にして欲しかったが)で、スティーヴのポップなキーボードがファンを煽りに煽る。

マイケルが最新作の曲「Messin’ Around」を紹介。MSFを始めてからのマイケルはMCの楽しみに目覚めたのだろうか? それはともかく、雰囲気がモロにグラマラスなブリティッシュ・ロックであるだけに、過去のクラシック曲とも遜色なくハマる。 “That was fun”とつぶやいたマイケルがおもむろに「Armed And Ready」のリフを弾き、お馴染みのギター・ソロでは1フレーズごとに歓声が上がる。サビは当然大合唱だ。

MSF2018 - ゲイリー・バーデン&マイケル・シェンカー

マイケルが賛辞を送って一旦ゲイリーは退場し、UFOの「Rock Bottom」はロビンが、続いてドゥギーが1番と2番をそれぞれ担当する。マイケルにとっての最大の見せ場である即興ソロは約10分。ペンタトニックを繰り返しているだけでもそこには鬼気がこもり、連発されるアルペジオは美しくも殺気があふれている。このソロが終わってバッキングに戻る時は緊張と緩和の効果があり、観ている側もなんとなく安心してしまう。メンバー全員に見守られる中、テッドが短いドラム・ソロ(叩いているうちにどんどんリヴァーブが強くなっていく)を披露し、盛大なラストが締めくくられた。

アンコール

MSF2018 - バンド

「Rock Bottom」が終わったということはこれで本編が終了することを示し、あとはアンコールを残すのみ。一旦メンバーがステージ袖に捌けるかと思いきや、マイケルがすぐに“One More? Two More? Three More?”と観客に呼びかけ、そのまますぐにロビンのヴォーカルによる「Shoot Shoot」でショウが再開された。次の「Natural Thing」では引続きロビン、加えて2番でドゥギーがヴォーカルを担当。さらにギター・ソロに突入した瞬間にアンセムの清水昭男が出現する。彼自身がシェンカー・ファンであり、日本でのレーベル・メイトという縁で実現したのだろう。まずはマイケルに並んでバッキングを担当し、マイケルから引き継いでのソロを16小節ほど披露した。モロにシェンカー的フレーズを弾くのではなく、アンセムの時以上にロックンロールなソロを荒々しく弾いてマイケルに対抗するという適応具合は流石。ただ登場の仕方があまりに突然で、終演後にあれが清水だと認識できなかったという声がちらほら聞こえたことは残念だった(前日のSNSでの発表を見ていなかったファンも少なくなかったのだろう)。

そして「Lights Out」である。グラハム、ゲイリー、ロビン、そしてドゥギーが1コーラスごとにリード・ヴォーカルをリレーしながらクライマックスへと上り詰めていき、ドゥギーも“Time we said goodbye”の歌詞に合わせて観客に手を振る。これで本当に最後の曲のようだ。そして最後の音が鳴ると同時にステージの照明が消されて真っ暗に。つまりタイトル通りの“消灯”だ。再び照明が点くとそこにはメンバーの姿がなく、すぐに終演のアナウンスになるという心憎い演出——正直に言えばここまでドラマティックな構成を用意しているとは予想外だった。

演奏時間は約2時間40分超。’16年の約90分を大幅に超えるヴォリュームだった。その中で披露されたあの手この手の演出は、マイケルのライヴを繰り返し何度も観ている熱烈なファンにとっても新鮮なものばかりだったに違いない。さらに筆者もご多聞に漏れずそうだったが、観覧しながら「次はこんな曲順で」「あのメンバーと一緒にあの曲をやって欲しい」と想像を膨らませていた人も多かっただろう。以前にマイケルが語っていたように(実現へのハードルは限りなく高いと思うが)フィル・モグが参加すればファン感涙は間違いなく、もしくはミッチ・ペリーを加えて『PERFECT TIMING』(’87年)期の曲をやるというのも手かもしれない。MSFとしてのライヴの見せ方にはまだまだ可能性が残されているのだ。というわけで、最後に筆者の私見をあえて強い口調で述べておきたい。 

何故「Red Sky」をやらないのか!?