’18年9月、ポーランドの重鎮メタラー:ヴェイダーがちょうど1年振りとなるジャパン・ツアーを行なった。’98年の初来日公演以降、何度となく日本を訪れている彼等だが、ここのところ、9月にやって来るのが恒例となっており、’16年からこれで3年連続となる。(’17年はクリエイター来日公演に帯同) 今回は、デビュー作『THE ULTIMATE INCANTATION』(’92年)のリリース25周年を祝うワールド・ツアーの一環としての来日で、“ASIA UNDER SIEGE 2018”と題され、日本公演の前には中国にて3都市を廻り、さらにはモンゴルのウランバートルでのフェスにも出演したようだ。
何と渋谷サイクロンで行なわれた東京公演はソールド・アウトに。会場の規模が小さめだったとはいえ、『THE EMPIRE』(’16年)以来となるオリジナル新作のリリースがない中、なかなかの快挙と言えよう。ショウはいきなり、『THE ULTIMATE INCANTATION』からの3連打──しかもアルバムの曲順通りに「Dark Age」→「Vicious Circle」→「The Crucified Ones」──でスタート! もしやこのままアルバム全編が再現されるのか…と思いきや、4曲目に『THE EMPIRE』から「Prayer To The God Of War」がプレイされ、以降は新旧織り交ぜた演目で、暴れる気マンマンのオーディエンスを狂乱の渦に巻き込んでいった。ピーター(g,vo)のMCによれば、’18年はバンド結成35周年の節目でもあるそうで、そういえば『THE ULTIMATE INCANTATION』のオリジナル・リリースは’92年だから、「そっちは26周年じゃないの?」なんてツッコミも聞こえてきそうだが、まぁ細かいことは気にしない、気にしない。
結果的に『THE ULTIMATE INCANTATION』からは4曲(上記+「Testimony」)が演奏され、サード『BLACK TO THE BLIND』(’97年)からも4曲(「Black To The Blind」「The Red Passage」「Carnal」「Fractal Light」)がセレクト。『THE BEAST』(’04年)、『NECROPOLIS』(’09年)、『WELCOME TO THE MORBID REICH』(’11年)はともかく、『DE PROFUNDIS』(’95年)からの選曲がなかったのは意外だったものの(何と…「Sothis」も「Blood Of Kingu」もナシ!)、元々2部構成で3時間のショウをやったりするバンドではないから、あまり贅沢は言うまい。
演奏のまとまり、タイトさ、そして安定感は、言わずもがな極上で、ピーターは来日の時点で52歳だったというのに、依然パワーも、勢いも、攻撃性も健在で、衰えなどとは全くもって無縁。かつて、「ギター・ソロは雷鳴のようでなくてはならない」「俺のギター・スタイルはカオスだ」と発言していた通り、そのリード・ワークはアグレッシヴこの上なく、叩き付けるようなタッピング、唸りを上げるアーミングは、そもそもがとてつもなく速く、とてつもなくヘヴィな楽曲群に、さらなる凄みを注入していく。一方、まだ(?)アラフォーのスパイダー(g)も、負けじとダイナミックかつ流麗なソロを連発。ピーターのそれとはまるで異なる、正確無比なタッピングを随所で炸裂させ、シュレッダーとしての並外れたスキルも存分に発揮しまくっていた。
フロアではのっけからモッシュ・ピットが荒れ狂い、ショウが進むにつれて、観客のテンションは上がりっ放し。終盤、「Wings」(’00年『LITANY』収録)でピークを迎えるも、アンコール最後のSLAYERカヴァー「Raining Blood」で限界点を突破! そうして──激闘、約70分。お馴染みダース・ヴェイダーのテーマがアウトロとして流れる頃には、もうみんな抜け殻のようになっていた…?
果たしてヴェイダーは、また今年も9月に戻って来てくれるだろうか。楽しみに待ちたい…!!
ヴェイダー“ASIA UNDER SIEGE 2018” 2018.9.29 @渋谷サイクロン セットリスト
1. Macbeth(Intro) 〜 Dark Age
2. Vicious Circle
3. The Crucified Ones
4. Prayer To The God Of War
5. Black To The Blind
6. Testimony
7. The Red Passage
8. Carnal
9. Intro 〜 Kingdom
10. Epitaph
11. Fractal Light
12. Intro 〜 Wings
13. Triumph Of Death
[Encore]
14. Send Me Back To Hell
15. Helleluyah!!!(God Is Dead)
16. Raining Blood(SLAYER)
▲今回サポート・アクトとして、アメリカのVOICES OF RUIN、日本人メンバー含むブラジルのNEUROTICOS、そしてポーランドからTHY DISEASE&HATEと4組が帯同。その中では、キャリア20年以上を誇る白塗りメイクの激重デス・メタラー:HATEが最も注目を浴びていた!