枠に囚われない多用なスタイルと鋭利なサウンドを武器に日本の音楽シーンを席巻する5人組ヘヴィ・ロック・バンド:lynch.。彼らの最新アルバム『AVANTGARDE』が、本日9月14日にリリースされた。ギター・チームの玲央&悠介には、昨年『D.A.R.K. -In the name of evil-』をリリースした際、本誌2015年11月号でYG初となるインタビューを行なっているが、今回再び2人に話を聞くことができた。前作以上に“凶暴性”を増したアグレッシヴ極まりないギター・リフが飛び交い、キャッチーなメロディーも際立つ本作について、たっぷりと語ってもらおう。
「最前線でありたい」という思いが込められています(玲央)
YG:『D.A.R.K. -In the name of evil-』に伴う昨年のツアーでは、lynch.史上最大規模の会場である東京ドームシティホールにてライヴを行ないましたね。こちらの模様は映像作品『IMMORTALITY』(’16年)となってリリースされましたが、当日のことを振り返ってみていかがですか?
悠介(以下Y):今までで一番大きな会場ではあったんですけど、特に臆することもなくやれましたね。それはツアーを通してバンドが成長できたからこそだと思うんです。あれを機にさらにバンドの勢いが増していった感があるので、この勢いのまま突き進んで行きたいとも思いました。
玲央(以下R):これまでで一番広い会場で良いライヴができたことで、よりこの先のヴィジョンがはっきりと見えるようになりましたね。本当に良い経験になったと思います。
YG:今年の始めにはメンバー5人がそれぞれ1日ずつライヴをプロデュースする、特別なイベントも行なわれましたね。あれによって、何か新たに発見できたことなどはありました?
Y:僕はバンド形態ではなくサポート1人を迎えた弾き語り形式でパフォーマンスをしたんですけど、少人数でやることの難しさを知りましたね。あと、あらためてバンドで演奏することの大事さも分かったというか、lynch.のメンバーの偉大さっていうのも再認識できたなと。
YG:玲央さんのプロデュースした日は、かつて別バンドで共にプレイし、初期lynch.のサポートを務めたベースの攸紀さんが所属しているHOLLOWGRAMとのツーマン形式で行なわれましたね。
R:ええ。最近はワンマンの公演が多かったので、緊張感もあり、新鮮でもあり、良い刺激になったと思いますね。
YG:続いて新作『AVANTGARDE』についてお聞きします。タイトルは“前衛的”ということを意味するフランス語ですが、そういう斬新な音楽を目指した作品ということでしょうか?
R:“前衛音楽”という意味合いではなく、「最前線でありたい」という思いが込められています。何かを追うのではなく、自分達がフォローされる側でありたい。それは前回のインタビューでも話した、V系バンドの根本にある「いかに普通から外れたことをやるか」という精神にもつながっていますね。
今のラウド・ロック・シーンって、わりと計算された難しいことを詰め込んだバンドが多いと思うんですよ。それに対して僕らは、逆にシンプルなサウンドで攻めようかと。だから『AVANTGARDE』は、そういうシンプルに魅せるという側面が強調されていると思います。緻密に計算されたサウンドも好きではあるんですけど、シーンがそちらを向いているからといって、僕らもそっちを向くのは違うと思ったんですよね。メンバーは5人とも、そういうことが嫌いですし(笑)。
YG:最初にいただいた『AVANTGARDE』の音源はまだラフ・ミックスの状態で、ほとんどの曲には「AMERICA」や「ARPEGGIO」といった仮タイトルが付けられていましたが、いつもそういう感じで何となくタイトルを付けておくのですか?
R:そうです。「ARPEGGIO」は悠介の作った「FAREWELL」の仮タイトルなんですけど、そこから「悠介はこの曲でアルペジオを聴かせたいんだな」というのが分かるじゃないですか。そうしたら、いかにそのアルペジオを目立たせるか、邪魔をしないかということを意識して自分のパートを作りますね。葉月(vo)からも例えば「SPEED」(「NEEDLEZ」の仮タイトル)という曲が送られてきたら、スピード感を殺さないようにフレーズを考えたりとか、わりとそういう感じで曲を完成させていくんですよ。
YG:かなりヘヴィで攻撃的な「PRAYER」は「NEW METAL」という仮タイトルでしたね。
R:あれは明徳(b)が作った「METAL」というお蔵入りになっていた曲があって、それを葉月が復活させたので「NEW METAL」になったんです(笑)。
YG:アルバムで一番攻めていると思う曲はどれですか?
R:僕は多分他のメンバーと意見が違うと思うんですけど、「FAREWELL」ですかね。無音になる箇所があるんですけど、(作曲者の悠介が)その長さに異様なくらいこだわっていて。その尺によって後半の聴こえ方が全く異なるんですよね。ひょっとすると悠介はセルフ・プロデュースのライヴでアコの弾き語りを経験して、音の抜き方や間の取り方に対するセンスがより研ぎ澄まされたのかなと思いました。今までlynch.に無音のある曲なんて多分なかったですからね(笑)。そういうこともあって、しっとりした曲ではあるんですけど凄く攻めていると思います。
YG:悠介さんはいかがですか?
Y:バンド的な視点で言うと、「UNELMA」の歌詞は今までになかったものかなと。このバンドで「UNELMA」のような、季節的にいうと“夏”を思わせるような曲をやることになるとは思っていなかったですね。今までは“ダーク”や“エロス”といったテーマが世界観となっていたので、こういう短パンが似合うような詞は革新的だなと思いました(笑)。