ネックの反りを確認〜調整してみよう:YG TUNE-UP FACTORY 第4回 メンテナンス編

ネックの反りを確認〜調整してみよう:YG TUNE-UP FACTORY 第4回 メンテナンス編

今回はネック本体についてお話をします。ネックが反(そ)るというのは皆さんもご存知かと思いますが、反った場合具体的に何が起こるのでしょうか? また、どのように対処すれば良いでしょうか? 今回は反り方の症状である“順反り” (じゅんぞり)と“逆反り”(ぎゃくぞり)について、反り具合の確認方法、そして反りを解消するためのトラスロッドの回し方などをご説明しましょう。

ネックが“反る”ってどういうこと?

通常、ギターに弦を張った状態のネックには60〜70kgくらいの張力がかかっています。この時、弦とネックが平行、つまりまっすぐになっているのが標準の状態ですが、ネックが弦の張力に引っ張られ、起き上がっている状態になると順反りとなり、7〜12フレット辺りの弦高が高くなります。

基本的にネックは弦に引っ張られるものなので、順反りになることは普通の現象です。ただ、極端に反っていると弾きづらさを感じ、問題となります。

図A■順反りの状態

次に逆反りですが、こちらはヘッドの位置が下がって弦とネックの隙間が狭くなってしまった状態を指します。開放弦または1〜8フレット付近を押弦した時に音のビビリが発生するでしょう(図B)。症状が酷い時は、弦がフレットに常にぶつかっている状態になり、音が詰まると思います。

図B■逆反りの状態

反り具合を確認しよう

反り具合はご自身で普段からチェックすることができます。まずはギターを、弾いている時の姿勢で抱きかかえて下さい。普段弾いている状態でネックがどのように反っているかを確認するのが、正しい方法です。

ギターを普段弾いている時の姿勢で抱える人物

そして片手の指で6弦の1フレットを押さえ、もう片手の親指でネックとボディーのつなぎ目付近にあるフレット(ギターの種類によって異なります)を押さえます(図C)。ここで、つなぎ目のフレットを押さえている手の人差指などで7〜8フレット付近を何度か叩いてみて下さい。”カチカチ”と音がすれば、フレットと弦の間にすき間がある…つまり順反りになっているということです。音がしなければ、真っ直ぐか逆反りということになります。

反りの確認方法
図C■反りを自分で確認する方法

ネックに埋め込まれたトラスロッドとは?

反り具合を確認して改善が必要だとわかったら、今度は調整をしていきます。調整の作業は楽器店やリペアショップで行なわれていますが、軽い症状のものはやり方を身につければ自分で調整することも可能です。その前に、少しネックの構造を見てみましょう。

ネック内部には、あらかじめトラスロッドという鉄芯が入っています。ロッドの先端にあるナットはネックの外に出ており、これをナットを締める方向に回すと、ネック内部のトラスロッドの中央部分が上に持ち上がる方向に作用するので木(ネック)が動くため、反りの状態を変化させられる…という構造になっています(図D)。

トラスロッドの構造
図D■ネック内部の構造と反りの調整の仕組み

ナットの位置や形状、使える工具は様々

ナットの位置はギターの構造やトラスロッドの種類によって異なります。さらに、ナットの形状も様々なものがあり、回す工具もレンチやドライバーなど、形状に合った工具を準備することになります。代表的なものをいくつか見てみましょう。

トラスロッド・ナット 六角レンチ
ボディー側にナットがあるタイプ。六角レンチでナットを回す。
トラスロッド・ナット マイナスドライバー
同じくボディー側にナットがあり、形状はマイナスドライバーが入るようになっている。

トラスロッド・ナット ボパピプレンチ
セットネック・ジョイントなどに多い、ヘッド側のナット。写真のタイプは、ギター用のパイプレンチを使用する。

ロッドの“効き”に合わせてナットを回そう!

それではトラスロッドを動かしていきますが…実作業を始める前に1つ、大事なことがあります。

過去にトラスロッドを回したことのある人は「硬くて回らなかった」あるいは「すぐに回った」など、ギターによって感覚が異なったのではないでしょうか。この感覚を“効き”と言い、効きの良し悪しはトラスロッドの種類やネック材の状態などによって左右されます。ですので、効き具合を先に把握してから1回に回す量を決める必要があります。

順反りの場合は、ナットを時計回りに回して締めます。逆反りの場合は、反時計回りに回して緩めます。

ナットを回す方向

最初にほんの少しだけナットを回してみましょう。その後少し経って、ネックの状態を確認します。ナットが回りやすいなら、締め幅が残っていることになります。また、ネックもすぐに動いてくる場合、1回に回す角度は5〜10度を目安にして下さい(a)。新しいギター(やネック)は大体このぐらいが良いでしょう。

少々回したぐらいでは硬くて動かない場合は、1回につき30〜90度くらいと、回転角度を多めにしましょう(b)。古いギターはすでに順反りの癖がついているものが多く、既にトラスロッドもかなり締め込まれていることも多いため、トラスロッドの回転角度も多く回さないとネックが十分に変化しないのです。

(a)トラスロッドの効きが良い場合、及び最終の微調整
少しずつ回す場合の角度の図
(b)トラスロッドの効きが悪く、なかなか回らない場合
多めに回す時の角度の図

ただ、締められる方向には限界点があります。緩める方向には回るけど、締める方向には硬くて回らない…という場合、無理に回すとネック内でロッドが破損する可能性もあるので、プロに任せた方が無難かもしれません。

それでは実際にやってみましょう。先程決めた角度で、1回回します。そしてしばらく置いた後、反り具合を確認しましょう。変化が大きくなければ、先程と同じ角度でまた回し、一旦置いて様子を見る…この繰り返しです。

理想の状態に近づいてきたら、回転角度を少なくして微調整していきましょう。

ヘッド側のナットをパイプレンチで回す様子
ボディー側のナットを六角レンチで回す様子

工場出荷時のギターは順反りになっている!?

冒頭で、ネックはまっすぐになっていることが標準だとお話しましたが、実は、工場からギターが出荷される時、ネックは順反りの状態になっています。理由は、弦はハジくと上下左右に振動しますので、ネックがまっすぐだと弦がフレットにぶつかり、音がビビってしまうから。あえて弦が動くことを考慮して、順反り状態に調整しているのです。

しかし、これでは7〜12フレット付近の弦高が上がって弾きづらさを感じることがありますね。このポジションは、テクニカルなプレイを好むギタリストであれば使用頻度が高いかもしれません。ですので、まっすぐ気味の順反りに調整を希望するテクニカル系のプロ・ギタリストは多いです。

まとめ:四季のある日本はネックも変化しやすい。普段から確認を

日本には春夏秋冬4つの季節があり、気温や湿気の状態が大きく移り変わります。木材で出来ているギターのネックも、時期によって若干の変化は起きてしまうものです。普段から反りの状態を把握していれば不具合の早期発見に繋がりますので、今回の手順に沿って時々確認をしてみて下さい。

YGウェブには、ネックの調整に関する記事が他にもあります。ぜひこちらもご参考に。

参照:弾きにくくなってしまったネックを自分で調整したい!