Torsti Spoof トースティ・スプーフ/THE MAGNIFICENT

Torsti Spoof トースティ・スプーフ/THE MAGNIFICENT

昔から’80年代ハードロックやAORの大ファンだった

YG:レヴェレイジでコンスタントにアルバムを発表しているあなたが、このザ・マグニフィセントを立ち上げた理由は何だったのでしょうか? レヴェレイジでは表現しきれない音楽的な欲求があった…ということでしょうか?

トースティ・スプーフ(以下TS):純粋に長い間、このようなアルバムを作りたいと思っていたんだ。マイケル(エリクセン:vo)と仕事をするチャンスが巡って来た時、この機会を逃したくないと思った。レヴェレイジでも十分に自分の音楽的な表現ができているし、とても楽しんでいるよ。でも、昔から’80年代ハードロックやAORの大ファンだったこともあり、そういった音楽性を具現化した今回のアルバムを作り上げたことで、自分の夢をひとつ叶えられたと思っているよ。

YG:レヴェレイジはペッカ・ヘイノ(vo)がブラザー・ファイアートライブに参加したように、個人活動も活発ですが、そのようにバンドの活動に時間が空いたからザ・マグニフィセントを立ち上げた…という理由もあるのでしょうか?

TS:いや、それはないよ。あくまで前から自分がやりたいと思ってやったことだ。他のメンバーの活動が理由ではない。

YG:ヴォーカルのマイケル・エリクセンに関して、今回のプロジェクトに呼び込んだ経緯を教えてください。彼とはどれぐらいからの知り合いだったのですか?

TS:フロンティア・レコーズのステファーノ・ペルジーノ社長がマイケルを紹介してくれたんだ。ザ・マグニフィセントのアイデアを思いついたのもステファーノでね。マイケルとは知り合って1年半ほどだが、初めて会ったその日から相性はぴったりだと思っていたよ。

YG:その他のメンバーに関しても、起用した経緯を教えてください。

TS:友達関係で、このプロジェクトに合いそうなミュージシャンに声をかけたんだ。マイケルにも同じように、彼の知り合いに声をかけて参加してもらっている。元々、色んな優れたミュージシャンと仕事をするのが好きだし、今回のレコーディングはそういった意味でも非常に楽しい作業だったよ。

YG:ザ・マグニフィセントのサウンドの根底には、’80年代のHR/HMに対するリスペクトの気持ちが詰まっているということで、メロディーのテイストにそういった影響が感じられます。実際に「こういうサウンドを出したい」と目標にしたアーティストはいますか?

TS:特に意識をしていたアーティストはいないな。現代の録音技術を駆使して、あの時代のようなビッグなサウンドの優れたアルバムを作りたいと思っただけさ。聴く人によって意見は異なるみたいだけど、確かにジャーニーやホワイトスネイク、ヨーロッパ等の影響を感じるというリスナーもいるようだ。でも、それらのアーティストを意識して作ったということは一切ないよ。自分たちが書ける最高の楽曲を書こうと思っただけなんだ。

YG:昨今は北欧からもダークなスタイルのメタル・バンドが登場していますが、その中においてザ・マグニフィセントの透明感のあるサウンドは、かなり目立つ特徴なのではないでしょうか?

TS:確かに僕たちの音楽は、今のトレンドに比べると遥かにソフトかもしれないね。僕たちの音楽はポジティヴな雰囲気を持っている。だからと言ってダークな音楽が悪い訳じゃない。ああいう音楽も個人的には大好きさ。でも、それはザ・マグニフィセントのスタイルではない。僕たちがやっているハード・ロックやAORなフィーリングを持った音楽とは異なるというだけでね。

YG:楽曲のクオリティはさることながら、ギター・プレイも充実していますね。極めてメロディックで構成が練られていながらも、クリアなサウンドの速弾きも所々で聴けます。メロディーとテクニックを両立させることは、あなたにとってはそれほど難しくないことでしょうか?

TS:ありがとう。ギタリストにとって最高の褒め言葉だよ。テクニカルなギターは勿論大好きなんだ。でも、スポーツのように速さを競うようなことはしたくない。ギター・ソロやギター・プレイそのものに対して、音楽的な意図を必ず持たせたいという気持ちで弾いているんだ。今の時代、速くて難しいプレイだけで人の心を動かすのは難しいと思っているし、速く弾けるだけのギタリストなんて探せばどこにでもいる。音楽的でなければ意味が無い。自分にとっては何よりも音楽的であることが大切だと思っているよ。

YG:メロディアスなギター・ソロを弾く時というのは、どのようにしてアイデアを構築していますか?

TS:普段は自由にアドリブで色々と弾いて、気に入ったフレーズが出て来るまで弾き続けているよ。良いフレーズが簡単に出て来ることもあれば、苦労してもなかなか出ない時もある。それ以外には、レコーディング前に思いついたテクニカルなフレーズを持ち出して、それを基礎にしてソロを構築することもある。その2つのやり方を上手く使い分けているんだ。メロディックなフレーズに関しては最初から作ったものは無い。すべてアドリブだ。

YG:それは意外ですね。

TS:逆に、テクニカルなフレーズ──アルペジオ・フレーズなんかはレコーディング前に作ったのもあって、レコーディングの中で適材適所に色々なフレーズを引き出しから出すようにしているんだ。

若くて才能溢れる人たちの音楽に携わることは、僕にとっての大きな喜びだ

YG:ところで、あなた自身はギタリストとしてどういったバックグラウンドを持っているのでしょうか?

TS:ギターを始めたのは14歳の時だった。始めた当初から、イングヴェイ・マルムスティーンやポール・ギルバートを聴いて一生懸命コピーしたていよ。アルバムでのプレイを聴けば、彼らからの影響が大きいことがよく分かるはずさ。’90年代初頭、フィンランドではハード・ロックやヘヴィ・メタルの人気が落ちていて、僕はスタジオ・ミュージシャンとか、様々なバンドやプロジェクトの雇われギタリストとして活動していた。ほとんど、自分の好みではない音楽をだったけどね。やがて、そんな環境で音楽をやっていること自体に嫌気がさして、結局音楽を辞めてしまった。

YG:不本意な音楽でも、生活のためにそういった仕事をしていたんですね。

TS:ああ。レヴェレイジに入るまで7年間のブランクがあった。復帰してからは自分のコンディションを戻すのにとても苦労したけど、その価値は十分にあったと思っている。現在は今まで以上に音楽を演奏することが幸せだし、今の状況には満足しているよ。近年は若いミュージシャンに音楽を教えることも多くてね、若くて才能溢れる人たちの音楽に携わることは、僕にとっての大きな喜びだ。

YG:では、今回のレコーディングに使った機材を教えてもらえますか?

TS:アルバムでは6弦と7弦のギターを使っているんだけど、メインはESPのカーク・ハメット・モデルだ。チューニングは半音下げで、僕はギターの最も良い音を出せるチューニングだと思っているよ。アンプはボグナー“Ecstacy”とマーシャル“JCM2000”。

YG:エフェクトは?

TS:レコーディングではギターからアンプ直でプレイしていて、エフェクト・ペダルは一切使っていない。録音時はドライなサウンドがあれば十分なんだ。実際のエフェクトは、すべてミックス段階でかけるようにしている。基本的にはハーモナイザーやディレイ、リバーブをミックスで足すぐらいだよ。録音のマイクにはロイヤー“R-121”リボン・マイクとシュアー“SM57”の2本を使っている。また、プリアンプはクレイン・ソングの“Spider”を使っている。リボン・マイクで録れる太くて大きな音が好きなんだ。

YG:このザ・マグニフィセントは、活動が今回のアルバムのみとなる単発のプロジェクトなのでしょうか?

TS:いや、これからも活動を続けるだろうね。実は次のアルバムを作るという話も、すでに出てきているんだ。

YG:非常に素晴らしいアルバムができたので、今後ライヴを観る機会ができればファンも喜ぶと思いますよ。

TS:うん。オファーがあれば、フェスティヴァルとかに出ることもあるだろうね。

YG:最後に日本のファンへのメッセージを!

TS:日本でアルバムがリリースされたことを非常に嬉しく思っているし、アルバムを気に入ってもらいたいね。いつかライヴで会える日を楽しみにしているよ!