ディジー・ミズ・リジーのニュー・アルバム『FORWARD IN REVERSE』が4月13日にリリースされる。オリジナル・アルバムとしては’96年の『ROTATOR』以来、何と20年ぶりだ。解散と一時的な再結成を挟み、遂に本格的な復活を遂げた彼らだけに、長年待たされたファンにとっては文字通りに待望の作品と言えるだろう。’90年代の2作品とは微妙にテイストを変えつつも、明らかに彼らの音楽だと分かる個性が満載の傑作だ。
ちなみに去る3月末にはもう1つ、本国デンマークでは’14年にリリースされたティムの関連作品が、日本盤として初登場している。それがデンマークのシンガー・ソングライター:マッズ・ランガーとのコラボレーションによって生まれた『SIDE EFFECTS』だ。どちらかと言えばティムのソロ作品に近く、ナイーヴなヴォーカル・メロディーを主軸にした作風で、ディジー・ミズ・リジーとはまた異なる魅力を味わえる1枚となっている。ディジー・ミズ・リジーの名曲「Silverflame」とマッズの代表曲をマッシュ・アップしたナンバーも含んでおり、わずか5曲しか収録されていないことが惜しくなるほどのハイ・クオリティぶりだ。
ヤング・ギター5月号では『FORWARD IN REVERSE』に関するティムのインタビューを掲載しているのだが、その取材時に『SIDE EFFECTS』についても語ってもらっている。ここではその本誌未掲載部分のインタビューをお届けしよう。
デンマークの人達からすごい反応が返って来たんで、もっとやろうということになったんだ
YG:マッズ・ランガーとの共作である『SIDE EFFECTS』も日本で遅れてリリースされました。マッズは日本ではほぼ知られていないミュージシャンなのですが、彼について簡単に教えてもらえますか?
ティム・クリステンセン(以下TC):マッズは僕より10歳年下の32歳で、デンマークでは超ビッグなアーティストなんだよ。ちょうどニュー・アルバム(『RECKLESS TWIN』)がリリースされるところで、ファースト・シングル(「3AM」)はオンエア・チャートの1位に輝いている。僕には彼の大成功の理由が理解出来る。彼はものすごく上手いシンガーだし、キャッチーな曲を持っていて、その上いいヤツでもある!(笑) だから、彼がデンマークで成功しているのも納得だよ。
彼は長年の友達で、お互いに“兄貴”“弟”と呼び合っている。音楽兄弟だよ。音楽的に共感出来る部分がたくさんあるんだ。マッズはポップ・アーティストで、僕は少なくともディジー・ミズ・リジーではロック・ミュージシャンであって、2人の立ち位置は違うと言える。でも、何か通じ合うところがあるんだな。
YG:この共演が実現したのはどんなきっかけでしたか?
TC:誰のアイデアだったのかは憶えていないな。多分僕でもマッズでもなくて、他の誰かが思いついたことだったはず。で、テレビ番組で僕と彼の曲を合体させてアコースティックでやったところ、デンマークの人達からすごい反応が返って来たんで、もっとやろうということになったんだ。一緒に新曲を書いてみたら上手く行ったんで、気がついたら大規模なデンマーク・ツアーがブッキングされていた。そして5曲のレコーディングを始めて、EP『SIDE EFFECTS』としてリリースしたんだ。それが今度は日本盤でリリースされる。デンマークでの発売は大分前のことだったから、それが日本でも入手可能になるのは素敵なことだよ。このEPはいい曲が入っていて、誇りに思っているんでね。
YG:彼はポップ畑の人、あなたはロック畑の人ということですが、『SIDE EFECTS』ではあなたのポップ・サイドのセンスが強く出たという感じでしょうか?
TC:どうだろう。これは、まさしく2人によるコラボレーションによって作られたものだから。曲によっては僕の方が多く作曲に関わったかもしれないし、彼の方が多く書いた曲もあると思うけど、2人が半分ずつ作ったプロジェクトであることは確かだ。メロディー・ラインを聴いて、「そこはティムが書いたに違いない」と思う部分もあるだろうし、マッズについても同じことが言えるだろうけど。もちろん、マッズがポップだから僕もそれにつられてポップになるということはあるし、僕がロックだから彼もそれにつられてロックになるということもある。だから僕たちは、このプロジェクトを通じて多くを学んだよ。互いのこと、個々の仕事の仕方についてね。すごくインスパイアされた。
YG:『SIDE EFFECTS』ではギターはどちらかと言えば歌の伴奏という感じで、ディジー・ミズ・リジーとは使い方が異なると感じました。その点、ディジー・ミズ・リジーの最新作『FORWARD IN REVERSE』ではよりギタリストとしての自分が出せたのではないですか?
TC:もちろん! 確かにマッズとのプロジェクトの方はギター・プレイよりも曲がメインだ。それに対してディジー・ミズ・リジーではギターにもっと専念出来る。僕はどちらのやり方も大好きなんで、両方やれて嬉しいよ。
YG:このアルバムではマッズもギターを弾いているのでしょうか?
TC:弾いているよ。ただ僕ほどではないけど。部分部分で少しキーボードを弾いているし、アコースティックもちょこっと弾いているけど、彼のメインはヴォーカルだ。でもある曲では、ちょっとしたギターの掛け合いをやっているんだよ。
YG:それは「Strangers」のことですね?
TC:そう!
YG:マッズとのコラボレーションはこれからも続けるのでしょうか? おそらくこれを聴いたファンは、「5曲じゃ足りない」と思っているはずですが。
TC:(笑)それは場合によるな。それぞれの活動にプライオリティを置いているからね。マッズは間もなくニュー・アルバムが出るので、彼はそちらに専念することになる。でも、他のことをやれる暇が出来たら、また一緒にやるかもしれないよ。僕らもすごく楽しめたからね。でもこれはあくまでもサイド・プロジェクトだから、2人とも余裕がある時に限られるんだ。