一筋縄では行かない感じを出したいんですよ
YG:5曲目「fall down」、これもシンプルなイントロに聴こえながら、実はギターがかなり重なっているパターンですよね。空間恐怖症的な面があるんですかね?(笑)
D:全員その傾向があると思います。確かにイントロは、間が空いてそうだけどギターはずっと鳴っていますね。
YG:あとこの曲で印象に残ったのが、9thコードの響きですね。
D:あ、気付いてくれましたか。そうなんですよ、常に9thのテンションが入っているという。一瞬聴いた時にコード進行がどこへ向かうのか分かりにくく、落ち着くようで落ち着かないまま続くような形に敢えてしてあります。さすがヤング・ギター、細かいところまでよく聴いてますね!(笑)
YG:9thコードって、ラウド・ロックのジャンルだとニッケルバックなんかがよく使いますよね。
D:多いですね。ラウド系の中でも、ちょっと切なくてエモいバンドはよく使いますよね。歌メロを活かせるバンドに多い。その辺りにはすごく影響を受けていると思います。2000年代のバンドが特に多かったですよね。
YG:6曲目「cloud 9」。KNOCK OUT MONKEYはミクスチャー要素の強いバンドですが、それにしても混ざり具合が面白い曲ですよね。レゲエ調から始まってサンバもあり、速さはパンクだし。
D:実はこの曲、僕はアルバムで1番好きなんですよ。メロディーも歌詞もいいし、サビでいきなり静かなアルペジオになるところがあるじゃないですか。あのアレンジがすごく好きなんですよね。楽しい曲のはずなのに、ちょっと感動しちゃう…みたいな感じが。
YG:プレイも細かいですよね。クリーン・トーンのギターでミュートしながら、聴こえるか聴こえないかくらいの音量でパーカッシヴなポコポコというフレーズをずっと弾いていたり。
D:あのクリーンはディレイを付点8分で鳴らすパターンです。確かにこの曲はめちゃくちゃ細かくこだわったんですよ。全11曲の中でも、ダントツでトラック数が多いですね。ギターだけでも20トラックを超えてます。全部録るのに7時間くらいかかりました(笑)。
YG:7曲目「Reverse thinking」。シングル・コイルが映えるリフで、KNOCK OUT MONKEYのアルバムに必ず1曲は入っているタイプですよね?
D:まずこのリフを作った時のイメージが、P-90ピックアップだったんですよ。デモはレスポールのハムバッカーをコイル・タップして弾いていたんですけど、レコーディングではP-90タイプが載ったPRSのSEシリーズを使いました。めちゃくちゃ改造してあるギターなんですけどね。
YG:循環コードのつもりで聴いていると、起承転結の“結”の部分でヒネリが効いていて面食らいますよね。凝り方がKNOCK OUT MONKEYらしいというか。
D:一筋縄では行かない感じを出したいんですよ。ひねくれているんでしょうね(笑)。例えば「Do it」とか、他に分かりやすくてストレートな曲はあったので、この曲は特にひねってチャレンジしたということもあると思います。
YG:ギター・ソロが始まりそうな中間部で、敢えてカッティング・リフだけで押し通す展開も面白いですね。
D:これはライヴの景色をイメージして作りました。さっき言った“ハンドマイク向けの曲”なので。ベースとユニゾンのラインをカッティングしたら面白いんじゃないかと思って。
YG:8曲目「Wake Up」、ここへ来てようやくバラード系のミドル・チューンの登場ですね。サビの裏に歌メロとは異なるギターのハーモニーが出て来ますが、あそこがとても印象的でした。
D:あのフレーズはすぐに出てきましたね、「こういう音が鳴っていてほしい!」って。あのハーモニーがあることによって、世界観が上手く広がったと思います。
YG:細かいところで言うと、1番と2番の間に出て来る短いソロ。ああいうフュージョン的でお洒落な感じは、KNOCK OUT MONKEYの中では異色ですよね。
D:もともとああいうプレイは好きだったんですよ。ほぼ1発で録ったんですよね。方針を何も決めずに適当に弾いて、これを使おうと(笑)。
YG:なるほど。確かにdEnkAさんは以前から、コード感のあるソロが得意ではありますよね。
D:コード・トーンを弾くソロは、確かに多いですね。無意識なんですけど、おそらくそういう鳴り方が好きなんだと思います。
YG:2番後の中間部にもドラマティックなソロが出て来ますが、バラードの最も盛り上がる、いわゆる“オチ”として来るパターンですよね。すごく気を遣いません?
D:曲の盛り上がりの中でも頂点の部分ですからね。だから僕はたいてい、ギター・ソロを最後に作るんですよ。ギタリストにとってギター・ソロというのはいわば、曲の中で最も主張したいことを言わなきゃならない場面なので。