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AKIHIDE 『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』インタビュー

インタビュー●坂東健太 Kenta Bando

akihide

BREAKERZの一翼を担うギタリストAKIHIDEが、6枚目のソロ・アルバム『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』を、2018年6月20日にリリースした。2作目の『Lapis Lazuli』(2013年)以降はギター・インストに軸足を置いていた彼だが、今作は1stソロ『Amber』(2013年)以来久々に、歌モノの表現にも改めて踏み込み直しているのが音楽的な肝(全12曲中半分をAKIHIDE自らが歌い、さらにもう1曲で新進気鋭の女性歌手:蓮花がゲスト参加して歌っている)。また実は絵本作家としても活躍するほど絵画の腕前にも長けているAKIHIDEだが、今作には何と60枚に及ぶ書き下ろしイラストから成る分厚い絵本が付属している。もはやブックレットの次元を遥かに超えた密度とヴォリュームには、驚かされること必至だ。

絵本と音楽、2つが重なり合うことで僕らしい世界観になる

YG:AKIHIDEさんは常にBREAKERZとソロの両面で休みなく活動しているイメージがありますが、実はソロ・アルバムのリリースは久しぶりですよね?

AKIHIDE:前作(『ふるさと』)からは実質2年半ほど空きましたね。ですから今回はかなり試行錯誤しつつ、こだわって作りました。実は2年前の夏の時点で、構想が何となくできてはいたんですけど、そこからアイデアがたくさん出過ぎて悩んでしまって…。ただ1年ほど前に「もう自分の思うがままに作ろう」と開き直ってから、徐々に前へ進んで行きました。それはちょうどBREAKERZの10周年記念で、けっこう忙しく動いて時期でもあったんですけどね。

YG:AKIHIDEさんの場合は音楽だけでなく、作品のコンセプトとなる物語やイラストまで一緒に考えるわけで、仕事量が膨大ですよね。今作に関してはどこから取りかかったのでしょうか?

AKIHIDE:最初にいくつか曲を作ったんです。2年前の2016年7月5日に六本木EXシアターで、本作にも収録されている「プラネタリウム」と「Wonderland」を既に演奏しているんですよ。その頃は「ロック・ギターにナイン・インチ・ネイルズみたいなエレクトロ要素や、ニュー・ウェーブの要素を入れたらどうなるか」といった発想で曲を作っていたんですが、その後になって「タンポポ」のようなアコースティック要素が濃い曲も生まれてしまい、ジャンルが色々な方向へ拡散して、一体何を軸にしたら良いんだろう…と悩んでしまったんです。でも1年前にAcid Black Cherryのアルバム制作に呼んでもらった時…、それは色々なミュージシャンが書いた楽曲をyasuさんが歌うという作品だったんですが(2017年『Acid BLOOD Cherry』)、その時にyasuさんから歌詞を作ることの面白さを教えていただいて。それがきっかけで、久々に僕も歌おうかと思ったんです。そこでまた1つ「歌モノ」という方向も出て来たので、もうこれは出て来たものをすべて入れてしまうしかないなと。そうなると今度は物語を書きたくなり、それが軸となって様々な要素が上手く結びつくな…と思ったんですよね。

YG:事前に物語を読ませていただきましたが、CDのブックレットの次元を超えたヴォリュームがありますよね。

AKIHIDE:確かにそうですね。最初は絵本と音楽を切り離して、別の作品にするぐらいのつもりだったんです。でも、その2つが重なり合うことで僕らしい世界観になる…というのが、今作の肝なので。

YG:絵はどんな手順で描いて行ったのでしょうか?

AKIHIDE:最初は、小説に挿絵が8枚くらいあるという程度にしようと思ったんですけど、それでは足りなく感じられて、結局60枚ほど描いたんですよ(笑)。基本的にはパソコンの“Illustrator”ソフトを使っているんですが、実際に紙に絵の具で塗ってスキャンした背景も合わせていまして。絵によっては20枚くらいプリントアウトしてから、そこにラメや光り物の石などを入れ、それをカメラマンさんに撮影してもらって…ということもやっていますね。

YG:アナログとデジタルの手法が混在している辺りは、音楽と通じるところですね。私は絵画のことは全く分からないんですが…、そういった手法は一般的なんでしょうか? かなり大変そうですが。

AKIHIDE:僕もあくまでもギタリストなので、他の方がどうやって絵を描いているのか詳しくは知らないんですよ。完全に我流なので。ただ確かに、絵を描くのは作曲と似ているところがあるかもしれませんね。

YG:今までに様々なミュージシャンと共演して来たAKIHIDEさんですが、今後は画家とのコラボレーションもあるかもしれませんね。

AKIHIDE:なるほど。ただ僕は表現したがりで、自分から湧いて来るものを形にすることに喜びを感じるので、今は自分で描く方が楽しいかもしれないですね(笑)。

YG:歌モノの歌詞に関しては、物語と完全にリンクしているのかと思いきや、意外にそうではないところが面白いですね。

AKIHIDE:物語が作品の軸となってはいるんですが、大事なのは作品に触れた時の心の動きを、ファンやリスナーの方と共有することなんですよ。絵本のテーマと楽曲のテーマは近いものではあるんですが、曲の中で描くのはもっと身近な、共感が得られるようなテーマにしたかったので、少しずらしているんですよね。

YG:ある意味、2人のアーティストが1つのお題に対して別々に表現したかのようですよね。

AKIHIDE:まさしくその通りで、絵本だけ見ても、音楽だけ聴いても楽しいというものにしたかったんです。それぞれが違った内容だから、補間し合いつつ相互関係で見られるというのが、今作の面白いところだと思います。

YG:ちなみに以前別のインタビューで、「最近は個人的にピアノ・トリオの音楽をよく聴いている」とおっしゃっていましたよね。それは今作にも反映されているのでしょうか?

AKIHIDE:ピアノは表現できるヴォイシングが、ギターとは違いますよね。特に今回参加してくれたキーボードの小林岳五郎くんが入れてくれたフレーズは、すごく叙情的で、曲の哀愁を何倍にもしてくれました。もちろんギターはギターにしかないヴォイシングができるんですが、今回はピアノにしか出せない音を注入したかったんですよ。それにサックスなんかも、すごく強い存在感がある楽器ですよね。ギターはもともと音量が小さいですし、電気を使うことでやっとそれらと渡り合える楽器。今回はそういった強い楽器が支えてくれているからこそ、ギターがより自由に動けた…という側面もあるかもしれません。

YG:ギタリストのソロ・アルバムというより、たくさんの楽器があるバンドのバンマスみたいなイメージの作品ですよね。他の楽器の方々にはあまり指定せず、自由に弾いてもらったのでしょうか?

AKIHIDE:基本となる土台は当然僕が作りますし、メイン・フレーズも指定することはありますが、あとは基本的に自由に弾いてもらっています。要は、自分の中にあるものを超えた音を出してもらうのが狙いで。

YG:確かにその道のプロフェッショナル同士が、ぶつかりあっている印象を受けました。

AKIHIDE:今回参加してもらったのはライヴで一緒にやっているミュージシャンが多くて、それにさっきも言った通り、去年の秋から季節ごとにやっているライヴの中で、既に何曲か演奏しているんですよ。だから徐々に色を加えてもらった形ですね。それもあって余計に、セッションではなくバンドのような印象があるんだと思います。そこは強みですね。

YG:今作の主題である“遊園地”は、どこから出て来たのでしょうか?

AKIHIDE:まず「Wonderland」という曲が2年前にできたんですが、そこから“Electric Wonderland”という言葉が思い浮かび、なんだか遊園地っぽいなと思ったんです。だからきっかけはあの曲ですね。

YG:遊園地といえば普通は楽しいイメージですが、全体的に哀愁の方向へ進んでしまうのが、やっぱりAKIHIDEさんらしさなんでしょうね。

AKIHIDE:そうですね。僕は相反するものが混在しているのが好きで、例えば「楽しい」と「悲しい」、「華やか」だけど「錆びている」とか。それがどうしても僕の作品のテーマになってしまうんですよね。