「絵本と音楽、2つが重なり合うことで僕らしい世界観になる」AKIHIDE 『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』

「絵本と音楽、2つが重なり合うことで僕らしい世界観になる」AKIHIDE 『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』

聴いた方が推測したり想像したりして、頭に呼び起こされたものが正解

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YG:では収録曲について順に聞かせてください。1曲目のインスト「プラネタリウム」はアコースティック・ギターから始まりつつ、後ろにシンセサイザーのシーケンスが流れていて、さらに突然エレクトリック・ギターのヘヴィなリフや、サックスが入って来たり…。ここ数作の生楽器メインなイメージとは、明らかに様子が違いますね。

AKIHIDE:2年前にやったライヴが、“想い出プラネタリウム”というタイトルでして。華やかに始まりつつ、あのヘヴィなリフで色んな思い出が嵐のように蘇るという、そんなイメージで作りました。ここ5年ほどソロ・ワークをやって来ましたが、今回はアコースティックの要素とロックの要素を混在させたいと思ったんですよ。さらにそこにシンセ・ベースやアナログ・シンセが鳴り響く…という。そのために気合を入れて、アナログ・シンセを2台、新しく買ったんです。Dave Smith Instrumentsの“Prophet 6”と、モーグの“Slim Phatty”という機種。これは声を大にして言いたいですね(笑)。

YG:2台買うというのがまたすごいですね! そういった様々な要素が全体をカラフルにしていて、さらにサックスがメロディーを奏でることで、お洒落さも一際増していますね。

AKIHIDE:今までのソロ活動の中で、ジャズなどのジャンルを色々と勉強することができたので、中でもサックスが持っているあの色気を、絶対に取り入れたいと思ったんですよ。

YG:主旋律を奏でる楽器が次々に変わり、リズムも場面ごとに色々と変わるじゃないですか。もしかすると、季節のような概念を表しているのかな…と思ったんですが。

AKIHIDE:あぁ、その感想は嬉しいですね! そうかもしれないです(笑)。今作は特に理屈立てずに作ったので、聴いた方が推測したり想像したりして、頭に呼び起こされたものが正解かな…と思っています。

YG:なるほど。使用ギターはフェンダー・ストラトキャスターでしょうか?

AKIHIDE:そうですね。基本的にストラトキャスターを大半で使い、ソロではギブソンの“ES-335”を使いました。

YG:2曲目は歌モノの「Ghost」。哀愁のある曲調でありながらも、ホーンがテーマを奏でると華やかさが増しますよね。悲しい歌詞なのに聴いていてあまり悲しくないという(笑)、そのマッチングが面白いと思いました。

AKIHIDE:ホーンが吹いているパートは、最初のアイデアではストリングスにするつもりだったんです。でもそれだとちょっと普通過ぎるなと思って。最近、サックスとトランペットによる2本のホーン・セクションが好きなので、入れてもらったらハマりましたね。シンセ・ベース、アコースティク・ギター、サックスとトランペット、ロックなリズム…という組み合わせは、意外に珍しいですしね。

YG:ギター・ソロに関してですが、今作ではこの曲に限らず、時々すごく危うい音使いが出て来て、一瞬ドキっとすることが多かったんですよ。これって、今までのAKIHIDEさんとは明らかに違うアプローチですよね。

AKIHIDE:最近ウルフ・ワケーニウスの音楽をずっと聴いていて、彼がそういう音使いをよくするんですよ。パット・メセニーのような感じではなく、もっと分かりやすく外すんです。最後の1音だけ、とか。

YG:確かに長いソロの中で、1箇所だけ不意にアウトしているところがあったり。そもそも曲自体に説得力があるので、わざとだということはよく分かるんですが、不思議に感じました。

AKIHIDE:もしかしたら外れているのかもしれませんけどね(笑)。でもよくジャズ・ギタリストの方が、「外れた音なんて存在しない」って言うじゃないですか。その言葉は確かにその通りだなと思って。

YG:新しい境地なわけですね。3曲目の「My Little Clock」…、これは第一印象が「キング・クリムゾン?」でした。

AKIHIDE:その通りです。「Frame By Frame」(1981年『DISCIPLINE』収録)からインスパイアされた曲ですね。

YG:やはりそうでしたか(笑)。4拍子の上で5音フレーズを奏でていますが、こういうポリリズムの場合は耳だけではなく、音符を目で追いながら作曲するんでしょうか?

AKIHIDE:そうですね。音が複雑でさすがに頭の中だけではできなかったので、ピアノとギターをMIDIで打ち込んで整理しつつ。

YG:やっぱり目と耳の両方使うんですね。ただ、この曲で歌っているゲスト・ヴォーカルの蓮花さんの歌声がすごくポップなこともあり、難解さを感じさせませんでした。

AKIHIDE:絵本の中に時計姫という、天使の歌声を持つロボットのキャラクターが出て来るんですよ。デモでは僕が歌っていたんですけど、これは天使の歌声ではないなと思って(笑)。そこで、以前別のお仕事でご一緒したことがある蓮花さんなら、この曲に合いそうだなと思ってお願いしたんです。

YG:凝ったバックにキャッチーな歌声が見事にマッチしていますよね。ここまで上手くハマることは、最初から見えていました?

AKIHIDE:よく合うだろうとは思っていました。複雑な曲を生の人間だけで演奏するということにも意味がありましたし、そういう相反するマッチングがきっと上手くハマるだろうなと。まあ彼女にお願いしたいと思い付いた時点で、もう大丈夫だとは思っていましたけど。

YG:次はインストの「Wonderland」。AKIHIDEさんらしい和風の旋律ですが、ちょっと松本孝弘さんのソロ・ワークのイメージにも似ていますよね。

AKIHIDE:ああいったペンタトニックの使い方は和のイメージと共に、哀愁感も出ますよね。ただどちらかというとこの曲の場合は、久石 譲さんや坂本龍一さんの影響から膨らんでいるかもしれないですね。ちなみにこの曲の元のリフは、多分10年以上前に作ってあったんじゃないかと思います。Aメロで聴こえてくるディレイ・フレーズなんかは、15〜16年くらい前、それこそ僕がBREAKERとして活動する前の頃のアイデアですね。Line 6の“POD 2.0”と“DL4 Delay Modeler”で録ったんですよ。ディレイは確か、エレクトロ・ハーモニックスの“Memory Man”をモデリングをしたタイプです。すごく良い音で録れていたので、そのまま使いました。僕、「いつか使えるだろうシリーズ」のようなアイデアを、パソコンの中にけっこう取ってあるんですよ(笑)。作曲に悩むと開いてみるんです。

YG:中間部に7拍子のようなフレーズがありますよね。変拍子を使う時は、わりと意識的に入れようとします? それとも自然に?

AKIHIDE:どうなんでしょう? 僕の曲は8分の7拍子がけっこう多くて、自然に出て来ますね。今までの作品でも数多く使っているんで、もう慣れてしまっているかもしれませんね。

YG:5曲目の「ブリキの花」は弾き語り系。パーカッションはアコースティックのボディー叩きですか?

AKIHIDE:豊田 稔くんという、カホンとドラム・セットを融合したようなキットを使っている、素晴らしいパーカッショニストがいるんですよ。彼が叩く音と、僕がアコースティックのボディーを叩く音が混ざっている形ですね。

YG:とても心地よくグルーヴが合っているので、2人のリズムが組み合わさっているとは思いませんでした。

AKIHIDE:本当にすごく良いパーカッショニストなので、もう安心して委ねられるというか、僕に合わせてくれます(笑)。しかも先にライヴでやってからレコーディングしたので、バッチリでしたね。

YG:メロディーを含むアルペジオ・バッキングはAKIHIDEさんの得意とするプレイの1つだと思いますが、こういった奏法はそもそもどうやって身に付けたのでしょうか?

AKIHIDE:5年前にソロ活動を始めて、2作目の『Lapis Lazuli』というアコースティック・インスト・アルバムを作った時に練習し始めました。今も練習していますけど、なかなか難しいですよね。この曲はこういった、いわゆる独奏のフレーズをバックに歌を入れることを狙って作った曲なんですよ。

YG:練習し始めた頃、参考にしていたギタリストはいます?

AKIHIDE:アンディ・マッキーの曲をコピーして、自分なりに消化していましたね。

YG:意外に同世代のギタリストから影響を受けているんですね。ちなみにバッキングとメロディーを両立させるプレイの場合、開放弦を上手く使うのが1つのポイントだと思うんですが。

AKIHIDE:そうですね、だからこの曲もカポを2フレットにつけています。前作は「変則チューニングだからこそできる面白さ」みたいなプレイを追求していたんですが、今作はレギュラー・チューニングでカポの位置だけ変えようと思って。あと個人的に大事だと思うのが、右手の薬指。メロディーを弾くのはこの指なんですよ。でも薬指ってそもそも力がないじゃないですか。だからなるべく強く弾けるように、前作から集中的に練習しています。

YG:次のインスト「タンポポ」は、小さめのドラム・キット、ベース、アコースティック・ギターという最小限の編成。ただアコースティック・ギターは、かなりの数が入っていますよね?

AKIHIDE:これはけっこう細かいんですよ、基本のバッキングだけでも4本入っています。しっかり聴こえる音と遠くで鳴っている音、さらにまた別のフレーズとそれの遠鳴り…。そこにメロディーとハモリが加わって、合計6本ですね。

YG:小さく聴こえる音は、アンビエンス・マイクで録ってディレイをかけたのかと思っていました。すべて違うギターで録ったんですか?

AKIHIDE:いや、基本は同じギターなんですけど、マイキングやポジションを変えながら。もしかしたら少しだけ違うギターも使ったかもしれないですけど、むしろ弾き方を変えたりしながら試行錯誤しました。

YG:構成としては、最初にミニマルなテーマの繰り返しがあり、そこからどんどん発展して行く形ですよね。

AKIHIDE:そうですね。あのリフが最初に頭に浮かび、そこに単純なハモりとは違う、絡むようなフレーズを入れたいと思って…、そんな風に自然にメロディーが膨んで行きました。『Lapis Lazuli』のタイトル・トラックの発展形みたいな曲を作りたかったんです。