『WAGES OF SIN』リリース20周年に際して、アーチ・エネミーとアモット兄弟に多大な影響を受けた邦人ギタリストにも別途取材を行ない、その魅力について話を聞いた。ここではNEMOPHILAギター・チームの1人、葉月のインタビューをお届けしよう。フォロワー世代の視点から、また新たな発見があること必至だ…!!
「Enemy Within」のイントロとギター・ソロの掛け合いは素晴らしい
YG:初めてアーチ・エネミーを知ったのはいつでしたか?
葉月:中学生の頃、友人から『DOOMSDAY MACHINE』(’05年)を聴かせてもらったのが最初です。それで「Nemesis」のPVを鑑賞したり、ライヴDVDを観たりするようになったんです。当時はまだHR/HMはほとんど聴いていなかったメタル初心者で、アーチ・エネミーを知るまではJ-POPやJ-ROCKを聴いていました。アーチ・エネミーをキッカケにメタルを聴き始めたので、他のメタル・バンドを聴いていると「この曲はいつデス・ヴォイスが出てくるんだろう?」と疑問に思ったりして──今では恥ずかしいですね(笑)。
YG:マイケルとクリストファー、アモット兄弟のどちらが特に好きというのはありますか?
葉月:マイケルといえば泣きのギター、クリスといえばシュレッドのイメージがあります。2人で奏でるツイン・ギターは呼吸やリズムがピッタリ合っていて、メタル界唯一無二だと思います。どちらも比べることはできませんが、マイケルのリフ・ワークやメロディアスなソロ、泣きのギターが特に好きですね。
YG:『WAGES OF SIN』を初めて聴いたのはいつでしたか?
葉月:『WAGES OF SIN』が発売された当時、自分はまだ幼稚園児で、アーチ・エネミーの歴史については過去の作品を辿っていくうちに知りました。初めて聴いたのは10年くらい前ですね。「Burning Angel」のようなミドル・テンポのダークな曲もあれば、「Snow Bound」の哀愁漂う泣きのギターが前面に押し出された曲もあり、バランス良く曲が配置されているのが特徴だと思います。
YG:アーチ・エネミーの作品の中で順位を付けるとすれば?
葉月:どれも素晴らしい作品なので(『WAGES OF SIN』が)何番目かというと難しいですが……初めて聴いた『DOOMSDAY MACHINE』と並んでトップ3には確実に入ります!
YG:歴代ヴォーカル3人の中で、アンジェラについてはどんな印象を持っていますか?
葉月:それはもう、大好きです…! ヨハンと比較すると、リズムの取り方や符割りの部分は大きく違うな…と思います。ヨハンの歌は’16年にBLACK EARTHで来日した際に聴きましたが、常に感情を込めて歌っているように感じました。対照的にアンジェラの歌は機械的なイメージがあるので、ライヴ後はその違いを楽しみながら聴きましたね。アリッサ(ホワイト-グルーズ/現vo)はアンジェラをリスペクトしているという情報を目にしたことがあるんですが、まさにその通りで、『WAR ETARNAL』(’14年)を聴いた時、メンバー・チェンジによる違和感が全くありませんでした。パフォーマンスもアグレッシヴでカッコいいです!
YG:『WAGES OF SIN』でのマイケルとクリスのギター・プレイはいかがですか? ヨハン期の3作や、以降のアルバムとどう違うと思いますか?
葉月:ヨハン在籍時の3作品はひたすらヘヴィな重厚かつ雄々しいサウンドで、デス・メタルの要素が強い楽曲が揃っていますよね。ギター・ソロのメロディックさは変わらずですが、アンジェラ加入後──『WAGES OF SIN』からは少しモダンな要素も組み込まれていると思います。
YG:クリス脱退後のライヴで、ニックやジェフが『WAGES OF SIN』収録曲を弾くのを観たり聴いたりして、何か違いを感じることはありますか?
葉月:3人とも技巧派ギタリストで、本当にプレイに無駄がないですね…。特にジェフは今の時代のギター・ヒーローとして名高いですが、すべての演奏に長けた正確なギター・プレイと、どんなフレーズを弾いていても音の粒立ちの良さが際立っています。特に「Ravenous」のギター・ソロは圧巻でした。ただ、クリスの黙々とギター・プレイに徹したパフォーマンスも魅力だと思います。
YG:『WAGES OF SIN』で一番好きな曲を教えてください。
葉月:「Enemy Within」です。アルバムの1曲目ってとても大事な位置だと思うんですよ。物語の始まりのようなイントロと、やはりギター・ソロの掛け合いは素晴らしいです。全作品の中でも一番好きな曲です。
YG:『WAGES OF SIN』収録曲の中で、特に凄いと思うプレイを挙げるとすれば?
葉月:「Ravenous」のイントロですね。リフで惹き込まれるのと、曲の展開が激しくて常に緊張感があります。ギター・ソロの緩急も好きで、アルペジオ〜ギター・ソロ〜ツイン・ギターが駆け足で入ってくるセクションは鳥肌モノでした。
YG:『WAGES OF SIN』収録曲で、最もライヴ映えする曲というと?
葉月:一番好きな曲でも挙げさせていただきました「Enemy Within」ですね。最初に観たアーチ・エネミーのライヴは単独公演ではなくて“LOUD PARK 14”だったんです。ワクワクしながら始まるのを待っていたら「Enemy Within」のイントロが流れてきて、会場は大盛り上がり! イントロのピアノを聴いた瞬間に両目からダラダラ涙が出てきました(笑)。あの時の胸の高鳴りは忘れられません!
YG:今回『WAGES OF SIN』を聴き直してみて、改めて発見などはありましたか?
葉月:初めてアルバムを聴いた時は音楽に関して全くの素人だったので、「この曲のソロではこのエフェクターを使っていて…」「このコード進行を使っていて…」などギターに関する知識や音楽的な部分が分かるようになったのはとても楽しいです。
YG:『WAGES OF SIN』収録曲をコピーしたことは?
葉月:「Ravenous」はよく練習していました。イントロやAメロのグルーヴ感を出すのが難しかったですね。フレーズ自体は弾けてもドラムとのコンビネーションであったり、リズムをキープするのが意外と難しいテンポであることに気が付きました。
YG:自分のプレイやスタイル、また作曲面などで、マイケルやクリスからの影響が強く出ているところはありますか?
葉月:マイケルがよくグリスをする時、下からではなく上から指をスライドさせるんですが、それはよく真似しています!
YG:機材面ではどうでしょう?
葉月:マイケルのシグネチュア・モデルのワウを使用したことがあります。使用感やトーンも好みです。ジェフ・ルーミズのピックも使用しています。
YG:では最後に、まだまだ語り尽くせない『WAGES OF SIN』への愛や思いの丈をご自由にどうぞ…!!
葉月:『WAGES OF SIN』はまさに青春の思い出です。ご飯を食べる、寝る…といった日々のルーティーンの中に“『WAGES OF SIN』を聴く”という項目が入っていたくらい、毎日リピートして聴いていました! 時を経て、自分がギタリストになり、観られる側になって、自分のプレイ・スタイルであったり、ギター・フレーズ、楽曲制作の面でアーチ・エネミーに影響を受けていることを再認識しました。初めて参戦した アーチ・エネミーのライヴで「Enemy Within」にノックアウトされて、開始1分未満で号泣したことを思い出し、音楽に対する熱もさらに増しました!!
INFO
『DISSENSION』/NEMOPHILA
2021年発表
『OIRAN EXTENDED EDITION』/NEMOPHILA
2021年6月25日(金)発売 (現在予約受付中)
NEMOPHILA Official Website
NEMOPHILA
葉月 Twitter
@mochimochimuuch