キコ・ルーレイロ、作曲の上達は「ゴミ箱をいっぱいにすること」

キコ・ルーレイロ、作曲の上達は「ゴミ箱をいっぱいにすること」

現在発売中のキコ・ルーレイロ最新ソロ・アルバム『THEORY OF MIND』はお楽しみいただけているだろうか。ヤング・ギター2024年12月号では、本人インタビュー及び映像連動つき奏法分析記事で同作に込められた様々な魅力に迫っている。ここではインタビューの中から、制作に関する誌面未掲載のエピソードを紹介しよう。奇しくもその内容は、ヤング・ギター2025年1月号で特集している“ギターと作曲”との関連性も深い。ぜひ参考にしていただければ幸いだ。

まるで金を掘り当てるような作業だよ

YG:本誌7月号でインタビューを行なった5月の時点ではすでに楽曲が完成していたようですが、具体的な制作期間はいつぐらいでしたか?

KL:作曲はメガデスのツアーの合間にやっていたから、とても長いプロセスだったよ。ツアーでは既存の曲に集中しているから、ホテルに帰っても新しい曲を作るモードになりにくいんだ。でもたまにバックステージでジャムったり、アコースティック・ギターを弾いている間に「いいアイデアだな。録音しておこう」ということがある。だから、スタート地点の多くはツアー中に出てくることが多いね。レコーディングが終わったのは3月で、その後マスタリングやミキシングに進んだ。

作曲したいと思っているYG読者にアドヴァイスだ。例えばキコの新曲とか、他のバンドでもいいけど新しい曲を聴いて「これはクールだ! こんな曲が作りたい」と思うとする。ギターを手に取って、それに似たものを弾くだろう。まったく同じように弾いてみてもいいけど、憶えた後はそこに自分らしさを入れて、ちょっと違うものにできるかやってみるんだ。でも良し悪しは判断せずに、思いついたままにプレイする。多少似ていてもいいから、とりあえずそれをスマホやパソコンに録る。その作業をできるだけ繰り返す。毎日が望ましいね、習慣化されるから。テクニックを練習するのと同じで、毎日アコースティック・ギターでも8弦でもいいから、手にしてシンプルなアイデアを弾くんだ。複雑じゃなくていい。最先端の曲を作ろうなどとは考えないで、ひたすら感性に任せてプレイする。そうやってできたものを溜めていけば、2〜3ヵ月後にはアイデアが20、50、…100個ぐらいに増えているはずだよ。

その後で、自分をアイデアを判断する役に切り替え、1つ1つ聴いていく。「これは好き」「これもいいね」「これは良くない」「スティーヴ・ヴァイに似すぎている!」などと(笑)、やっていくんだ。そうやってまとまった中から10個くらい、自分のインスピレーションが光ったものを選び取る。まるで金を掘り当てるような作業だよ。これが、曲を発展させるための素材になる。どんなバンドも、この通りではないにせよ、何らかの形でそういう作業を行なっているものだよ。作る時と判断する時を混同してはいけないけどね。でないと作った側から「ああ、これはダメだ」の繰り返しで、後に何も残らない。本や詩を書くこと、絵を描く時も同じ。出来上がってから「これは僕のベストじゃないな」と捨てたりする。むしろ、どんどん作って溜めていって、後でゴミ箱をいっぱいにしなくちゃ。

YG:そうして今回ゴミ箱行きを免れた素晴らしい楽曲が、『THEORY OF MIND』に収録された11曲なのですね。

KL:その通り!(笑)

INFO

KIKO LOUREIRO - THEORY OF MIND

『THEORY OF MIND』
KIKO LOUREIRO

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CD | ビクター | 2024年11月20日発売