DAIGO君が俺のギター・ソロを「もっといけるだろ!」みたいに煽ってくれた(AKIHIDE)
YG:3曲目「Blue Moon」は、AKIHIDEさんワールド全開。この曲に関しては、どういうイメージで作っていきました?
AKIHIDE:コロナ禍になる前の2019年末、アルバムを作ろうかと言い始めた頃に既に持っていた曲なんですけど、そこからしばらく眠っていたんです。BREAKERZって「ジャズ・ロックでちょっとセクシーめな歌詞の曲部門」が、アルバムの枠に必ずあるんですよね(笑)。そこを狙った曲で、比較的僕も書きやすいし、ソロ活動で学んだコード進行などを活かせました。楽しみながら作っていった曲ですね。
YG:この曲のギター・ソロの、オクターヴ・エフェクトがかかった感じは、ウェス・モンゴメリー的なイメージだったりするんですか?
AKIHIDE:ウェスは一時期よく聴いていましたね。このソロでウェスみたいなものを弾こうとは思っていなかったですけど…ウェスは凄まじいじゃないですか、ソロの構成から何から。そういう影響の片鱗が出ていたりはするのかもしれないです。ただ、どちらかというとジャンゴ・ラインハルトなどに近いかもしれないですね。マヌーシュというか、ジプシー・ジャズの要素がわりと出ているかも。
YG:歌詞は女性の視点で書いてありますよね。それを男性が歌うというのは昔から存在する手法ではありますが、これだけバッチリとハマるDAIGOさんのヴォーカルは、やはり稀有ですよね。
AKIHIDE:DAIGO君は他のキャラクターが憑依するんですよね。やっぱりある意味役者らしいというか…彼はモノマネもすごい上手なんですけど、それも1つの要素なのかもしれないです。模写するというか、自分の中に別人格を取り憑かせるのが上手いのかもしれないですね。声に関しても、この曲では女性の匂いを感じさせるような歌い方をしてくれましたし。
YG:SHINPEIさん的には、この曲に対する印象はどうですか?
SHINPEI:個人的にはこのアルバムで一番、ギターの攻略しがいがある曲という感じです。フレーズがすごくテクニカルですし。
YG:なるほど、AKIHIDEさんの曲を弾くにはまず攻略というプロセスがあるわけですね。
SHINPEI: そうですね(笑)。やりがいのあるフレーズがデモに入っていて、それを耳コピするみたいな形で自分なりに弾き方を作っていくんです。例えばフル・ピッキングでやるべきなのか、ハンマリングで滑らかにレガートで弾くべきなのか…と色々試行錯誤して。ちなみにこの曲と「Judgment」に関しては、スタジオに入っていつもどおりアンプでガッツリ音を鳴らしてレコーディングしたので、ギタリスト的にも最も燃え上がった曲たちと言えますね。
YG:4曲目は倉木麻衣さんがゲスト参加した「I lost(with Mai Kuraki)」。テーマや歌詞の内容的に最初の「WITH YOU」と対照的で、絶望的な悲しすぎる美しい曲というイメージですね。最初にDAIGOさんから出たアイデアでは、どういう感じだったんですか?
SHINPEI:これはもう、最初に聴かされた段階で既にある程度出来上がった形でしたね。イントロのピアノのイメージがDAIGOさんの中に最初にあって、それを元にめちゃくちゃシンプルな曲を作りたかったと、本人は言っていました。今までにたくさん曲を作ってきたことによって、少しパターン化してしまったところがあって、そんな自分に刺激を与えたかったみたいです。あまりメロディーをたくさん入れず、点のようなイメージで作っていくという。サビは8音くらいしか使っていないんですけど、その最小限の音で一番良い表現ができるようトライしたということですね。
YG:以前も「ひらり舞い散る花のように」(『X』収録)で倉木麻衣さんとコラボしてましたし、相性が良いことは分かっていたましたが、この曲で聴ける彼女の歌の存在感も素晴らしいですよね。
AKIHIDE:そうですよね。これは制作途中に女性コーラスを入れたいという話をしていて、DAIGO君からアイデアが出たんです。今回も倉木さんは快く受けてくださって、僕らが想定していた以上にたくさんのコーラス・アレンジをしてくださいました。びっくりしたよね。
SHINPEI:本当にそうですね。例えばサビのハモりを少し歌っていただいたり、それだけでもありがたいことじゃないですか。なのにある意味、作曲にまで参加してくださったと言っていいぐらい、コーラス・ラインをしっかりと作っていただけて。だからといってお腹いっぱい過ぎるような量ではなく、最初から理想的な形が見えていたかのようなで完成度で、感動しました。あれだけお忙しい方が、時間とアイデアをこうやって提供してくださったというのが嬉しいです。
YG:ギターのアプローチ的には「WITH YOU」と同じく、なるべくシンプルにいくような形ですか?
AKIHIDE:この曲に関してはアレンジャーさんに元々お願いしていたので、その中でも音色や空気感を自分なりに出せるように、そういう姿勢で録りました。ギター云々というよりも、倉木さんのコーラスが素晴らし過ぎちゃって(笑)、やっぱり声のパワーってすごいなと。
YG:その素晴らしい声をバックアップするというイメージですね。
AKIHIDE:そうです、支える感じですね。
YG:5曲目「闇夜に舞う青い鳥」は、今作の中で一番古い曲ということですよね。2019年9月にシングルでリリースされた曲ですが、アイデア自体はさらにずっと前からあったんですよね?
AKIHIDE:アイデアはそうですね。人前で披露した順で言えば、最後の「End Roll」が一番古いとは思うんですけど…。違ったっけ?
SHINPEI:合ってます。「End Roll」は2018年のライヴで一度だけやった、ライヴ用の曲みたいな感じだったんですよ。デモのネタとしては、「闇夜に舞う青い鳥」はそれより前からあったのかな?
YG:それを2019年のタイミングで、改めてしっかり曲にしようと思ったきっかけは何だったんですか?
AKIHIDE:当時は色んなタイプの曲を作っていて、時代に寄せた曲なんかもあったんですけど、やっぱりBREAKERZらしいストレートなロックをやりたくて、これをシングルにしたんですよね。今回収録するにあたって改めて聴くと、確かにBREAKERZらしさがすごく出ていて、とても大切な1曲になっていると思います。
YG:この曲のアレンジに関しては、3人でスタジオに入って顔を突き合わせてガッチリ固めた…ということを、昔のインタビューで読ませていただきました。そういうやり方は、BREAKERZにとってスタンダードなんですか?
AKIHIDE:大昔のデビュー当時は、レコーディング・スタジオに入る段階でみんなで意見交換していましたね。最近は僕とSHINPEIだけに任せてもらうことが多かったんですけど、「闇夜に舞う青い鳥」では久々にDAIGO君がアイデアを出してくれて。俺のギター・ソロを何かこう、「もっといけるだろ!」みたいに煽ってくれたんですよ(笑)。「もっと高いところまでいけませんかね!」みたいに、フレットがない音域を歌うんです。それで僕も奮起させられたというのが、この曲のレコーディング風景でしたね。すごく久々で懐かしい感じでした。
YG:6曲目「BARABARA」はガッツのあるロック曲。最後までダークに突っ走って終わってしまうというのは、BREAKERZにとってなかなか珍しいパターンですよね。
AKIHIDE:そうですね。この曲は『妖怪人間ベラ』という映画の主題歌で、その世界観に寄り添っているので決して明るくならず、暗黒に始まり暗黒に終わっていくというイメージでした。
YG:この曲の最初の歌メロにも、少しジプシー・ジャズっぽい印象がありますね。旋律の前後を半音で挟んでつなげていくような。
AKIHIDE:これはけっこう考えて作ったんですよね、半音を積み重ねることでおどろおどろしさを出そうと思って。そういうアイデアで作った曲だったので、自然にというよりは意図した部分が大きくて。ギターも歌とぶつからないよう、PC上で音符を並べて「ここだと音がぶつからないな」「ぶつかったからここのメロディーは変えようかな」と、機械的にリフを作っていきました。
YG:SHINPEIさん的には先ほどおっしゃっていたみたいな、耳コピの段階でちょっと苦労する曲ですか?
SHINPEI:苦労するというか、ギタリストとして燃える曲ですね。ちなみにこの「BARABARA」は、「LOVE STAGE」との両A面シングルだったんですよ。ものすごく対照的な2曲が1つのシングルに並ぶというのが面白いなと。そして今回アルバムの中に並べてみると、「I lost〜」のようにあまりギターの出番がない曲もある一方、「BARABARA」ではギタリスト・パワーを爆発させるような瞬間があり、また違った面白さですよね。この曲はそういう意味で、エネルギーを全部受け止めてくれる曲だったと言えると思います。
YG:この曲のギター・ソロは、AKIHIDEさんが先ほどおっしゃったように計算づくな感じですか? コーラスと掛け合う形が面白いですよね。
AKIHIDE:普通に家でアドリブを何回かやっている中で作り上げていった感じで、計算というよりは純粋に曲の流れを自分で体感しながら作っていきました。
YG:7曲目「Judgment」、これは「すごくやさぐれたデジロック」と、私の試聴メモに書いてあります。
SHINPEI:良いですね、そのキャッチコピー(笑)。
YG:そういう暴力的なリフ・ロックのまま最後までいくのかと思いきや、サビはすごくキャッチーで、その辺りの組み合わせの妙が面白いと思いました。これはどういうテーマで作った曲ですか?
AKIHIDE:BREAKERZには「リフ・ロック枠」もあるんですよ。時としてセクシーなリフ・ロックもあれば、今回のようなやさぐれ系みたいものもあるんですが、これはライヴ映えするイメージで2019年末くらいに作ったんです。その時はまだコロナ禍前だったので、まさか今回こういう形で収録して、ライヴでお客さんはディスタンスを保ちながら、かつ声も上げられない…という状況になるとは思ってもいなかったんですけど。でもこの曲を敢えて作品に入れようと思った心意気は、メンバーとしてすごく良いと思いました。BREAKERZのそういう芯が変わらず、従来のらしさもきちんと入れていこうと。ある意味、決意が込められている曲でもありますね。
YG:DAIGOさんが歪んだ声で歌っている最初のパートは、メロディーが不思議な中近東風というか、いわゆるJ-POPのセンスから出てこないものだと思ったのですが。この辺りも計算づくですか?
AKIHIDE:フェンダーの“Deluxe Reverb”を使ってトレモロをかけて、リヴァーブもすごく深くかけて…みたいセッティングで録ってるんですが、まさしくそういうサーフ・ミュージック的なイメージで作ったんですよね。ヘヴィな中に急に、ベンチャーズの「Pipeline」じゃないですけど、ああいうノリが来ると面白いかなと思って。ですから中近東のイメージではなく、西海岸的…ですかね(笑)、ちょっと分からないですけど。
YG:個人的にこういうゴツい曲は、SHINPEIさんが作曲するイメージがあるんですが、実はAKIHIDEさんの曲だったというのも面白かったです。
SHINPEI:確かに僕も好きで作ったりするんですけど、今回に関してはAKIHIDEさんがこの曲を持って来ました。ギターに関しては、今回はリモート録音の曲が多かったのですが、この曲も「Blue Moon」と一緒にスタジオでディスカッションしながら録りました。