AKIHIDE&SHINPEIが語る、BREAKERZ新作『WITH YOU』制作エピソード

AKIHIDE&SHINPEIが語る、BREAKERZ新作『WITH YOU』制作エピソード

BREAKERZが久々の新作『WITH YOU』を、8月25日にリリースした。人の心をすぐさま捉えるキャッチーさを前面に出した新機軸的なオープニング曲で始まり、中盤には従来通りのロック然としたアグレッシヴな側面も見せつつ、全体を通して聴いた時の味は極めてポジティヴ。まさにアルバム・タイトルの通り、常にファンに寄りそう姿勢を忘れないBREAKERZらしさが現れた力作に仕上がっている。AKIHIDE & SHINPEIのギター・チームに、今作の制作の背景にあった様々なエピソードを語ってもらおう。

今までのBREAKERZにはなかった新しいサウンドの中に、2人のギターが存在する意味が生まれた

YG:2017年に『X(クロス)』という10周年コラボレーション・アルバムはありましたが、通常のフル・アルバムとしては2015年の『Ø-ZERO-』以来、6年ぶり。かなりの年月が経ちましたね。

SHINPEI:数字で見ると久しぶりですね(笑)。

YG:止まっていたわけではないとはいえ、久々の純粋な新作ということで、特別感はありましたか?

SHINPEI:オリジナル・アルバムはバンドの今持っている姿勢を最も分かりやすく示すもので、ある意味シングルよりもキャラクターが濃くなると思うんです。そういう機会を持つのは、やっぱりすごく久しぶりだという感覚が強かったですね。でも毎年シングルをリリースしたり、スペシャル・アルバムを出したり、それに『BREAKERZ×名探偵コナン COLLABORATION BEST』(2019年)を出したりもしていましたし、ライヴ・ツアーもやっていたので、制作をすること自体が久しぶりだという感覚ではなかったんですけど。バンドの新しい名刺がこれです…という意味では、すごく本腰を入れる機会だったと思います。

AKIHIDE:確かにオリジナル・アルバムとして6年ぶりとはいえ、色々やっていましたからね。ですから久々だから特別というよりは、こういうコロナ禍の中で作品を出せたこと自体に意義があるかなと思っています。

YG:この1年半がお2人それぞれにとってどんな期間だったかというのを、読者に簡単にお伝えするとしたら?

SHINPEI:自分はソロ活動で新しい試みがありまして。今までMUSCLE ATTACKという、自分がヴォーカル&ギターを務めるバンドをやっていたんですけれど、それとは別に完全にインストゥルメンタルのソロ活動を始めました。自分で作ったオケを流しながらたった1人で演奏するという、そういう雰囲気でライヴをやってみたいと思いまして。他にも例えばゲストでリズム隊だけ招いてみたり、もしくはキーボーディストだけ招いてみたり、「自分プラス色んな形」で表現するということにトライしたいんです。今のところ聴けるのはYouTubeで公開しているライヴ映像1つだけなんですけど、いずれ曲としてしっかりまとまったらリリースしたいと思っています。

AKIHIDE:僕は…いつもお世話になっているライヴ・ハウスやジャズ・クラブでライヴができなくなったので、ファンの方とつながるための手段が他に何かないかと考えた時、配信ライヴに挑戦しようと思いまして。それも演奏以外のすべて込みで自分でやる形にチャレンジしてみました。コロナ禍で人が集まれない状況だったので、スタッフさんが来られなくてもできるようカメラや配信機器を揃えたり、ループ・ペダルを使って1人で多重演奏しながらアレンジの幅を広げる…みたいな挑戦もしてきましたね。逆に言うと、今まで培って来た色々な経験があったからこそ、それを活かして新しいことに挑戦できた、そんな期間だったと思います。

YG:そして今回のアルバム『WITH YOU』。事前にどんな方向性の作品にしようと、3人で相談することはありましたか?

SHINPEI:アルバム用の曲を集め始めてから、アルバム・タイトルになった「WITH YOU」という曲が形になってきた時に、ようやく全体像が見え始めてきたような感じでしたね。

YG:制作に先んじて具体的にコンセプトやプランを決めるわけではなく、途中から自然と見えてきたということですね。

SHINPEI:そうですね。本当は2020年にアルバムを出せればと思っていたんですが、緊急事態宣言の影響でせっかくリリースしてもプロモーションやライヴの機会も作れないのは困るので、見送ろうかということになりまして。2021年にもう一度改めて出そうという話になり、そんな中でできた「WITH YOU」が、優しくもすごい力強さが押し寄せてくる壮大な曲だったので、これを軸にアルバムを作っていこう、そうすればすごく良い作品になるんじゃないかという想いが、選曲会議をする中で生まれていった感じですね。

YG:やはりこの時期に作品を出すからには、ダークな側面よりはポジティヴな面を出そうと、簡単に言えばそういうことでしょうか?

AKIHIDE:そうですね、DAIGO君から「明るいアルバムにしたい」というヴィジョンはありました。だからそれがある意味、最初の種だったのかもしれないです。アルバムの曲順も自然と今までにない明るい幕開けになりましたし。1曲目「WITH YOU」から次の「LOVE STAGE」という、今までのBREAKERZにはあまりなかった流れで、中盤にマイナーな曲が集中している。いつもだったら逆のパターンなんですよね。そういう意味でもこういうコロナ禍という状況が、BREAKERZの違った一面を引き出した感覚はあります。

YG:確かにその冒頭2曲を続けて聴くと、底抜けに明るいというか、自然と笑みが溢れてくるような印象でした。1曲目「WITH YOU」のアイデアをDAIGOさんから聴かされた時、お2人はどんな印象でしたか?

SHINPEI:彼は色んな形で曲のネタを出してくれるんですよ。時に鼻歌だけとか、もしくはアコースティック・ギターの弾き語りとか。今回の「WITH YOU」は珍しい形で、ピアノを爪弾きながら鼻歌を歌っているようなデモだったんですね。彼曰く、BREAKERZ用の楽曲としてイメージしたのではなくて、とにかく自分の内から自然に出てきた音楽だったらしいんですね。母体となる楽器がたまたまピアノだったと。そのデモを聴いた段階では、本当に柔らかい旋律の曲だなという印象だったんですが、上手い具合にバンド・サウンドを混ぜていけば、BREAKERZとして良い感じに表現できるんじゃないかなという期待がありましたね。

AKIHIDE:SHINPEIがそういうイメージでアレンジした次のデモを聴いて、新しいな!と思いましたね。良い意味でBREAKERZらしくないなと感じました。その後にアレンジャーの宅見(将典)君がシンセ・サウンドや色々な音を足してくれて、より壮大になりました。ピアノメインで作っていった曲なので、ヤング・ギターさん的に言うと、あまりギターが目立たない曲にはなったんですけど(笑)。ただそういう壮大で煌びやかな音像の中で、どうやってシンプルかつ効果的に彩りができるだろう…ということは、すごく考えてレコーディングしました。それによって今までのBREAKERZにはなかった新しいサウンドの中に、2人のギターが存在する意味が生まれたと思います。

YG:全体的に空間のある曲で、ギターの音はピンポイントで瞬間的に出てきますよね。ギタリストとしてはかなりセンスを問われると思うのですが、怖くありませんでした?

SHINPEI:確かに(笑)。怖さというかチャレンジというか、そういう意識はありましたね。余白を埋めたくなる気持ちを抑えながら、必要なところにだけ必要な音を入れるという。それができるようになったのは14年という歩みがあったからで、少しは気持ちに余裕ができたのかなと思います。

AKIHIDE:この6年の間に培ってきた、ある意味大人目線のギター・アプローチだったかもしれないですね。

YG:2曲目「LOVE STAGE」、これは映画『LOVE STAGE!!』の主題歌として作られた曲なんですよね。事前に他の媒体のインタビューなども色々読ませていただいたのですが、BREAKERZの場合、そういうタイアップの場合は3人別々に曲を作って提出し、バンド内コンペみたいなことをするそうですね?

AKIHIDE:そうですね。それぞれ持ってきた曲を聴き合い、場合によってはそこからさらに1人1曲ずつ作ったり、クライアントさんの意見を聴いたり。選曲会みたいなことを何度もする感じですかね。チーム一丸となって、どの曲が一番相応しいかというのを決めていきます。

YG:すごく健全ですけど、常に競争があるわけですね。

SHINPEI:毎回がオーディションみたいな感じですね(笑)。「LOVE STAGE」の時も同様に先方に何曲か提出して、お気に入りを選んでもらいました。

YG:SHINPEIさん的にはどんなテーマで作曲したわけですか?

SHINPEI:この曲を作った当時によく触れていたのは、アイドル・ソングだったんですよ。聴いてみるとめちゃくちゃ良い曲が多くて、意外にバンド・サウンド重視のものもけっこうあるんです。そんな中、特徴として気付いたのは、基本はバンド・サウンドなんだけどシンセ・リードがテーマになっているという形。そういうのがここ10年くらい、主流になっているスタイルなんだな…と感じまして。上手くBREAKERZに取り入れてみたら、どんなものが完成するか…そんな意識で作ってみました。

YG:なるほど。とはいえパワー・コードで刻んでいるニュアンスなんかは、すごくSHINPEIさんらしいイメージでした。右側のチャンネルでずっとディレイのフレーズを弾いているのは、AKIHIDEさんですか?

AKIHIDE:僕ですね、あの懐かしい感じは。

YG:あれは懐かしいというイメージなんですね。

AKIHIDE:僕はもうドンズバな「付点8分ディレイのギター・ボーイ」なんですけど(笑)、今の時代にやると逆にちょっと新鮮に感じるぐらい、けっこう大昔からある手法ですからね。すごく大好きなパターンなので、この曲ではそれをやってみました。

YG:もともとデモの段階ではAKIHIDEさんのパートが空けてあり、ゼロの状態から考えていったということなんですか?

AKIHIDE:いや、SHINPEIはもともと、デモに僕っぽいフレーズを入れてくれる場合が多いんですよ。そのアイデアをそのまま使うこともあれば、僕なりに違ったアプローチにすることもありますし、ケースバイケースです。この曲の場合、Aメロのフレーズなんかは最初はからあって、「俺っぽいな」と思いながら聴いてました。エフェクティヴなギタリストが好きそうなフレーズですね。その他のパートは、僕がさらに細かくディレイを加えていき、複雑にしてみました。

YG:SHINPEIさんのギターはパワフルで、AKIHIDEさんのフレーズは知的で、DAIGOさんの歌は妙に可愛いという…BREAKERZでしかあり得ないバランス感ですよね。

SHINPEI:そうですね(笑)。BREAKERZらしいといえばらしいのかもしれないですね、このバランスは。

YG:ちなみにYouTubeに、この「LOVE STAGE」のMVを公開されていますよね。そのコメント欄を見てみると、スペイン語がずらりと並んでいるんですよ。それに関しては、何か心当たりがあります?

AKIHIDE:いや、どうしてでしょうね? アニメがスペインで人気があるのかな?

SHINPEI:そうかもしれないですね。でもそんな遠くまで届いているなんて、めちゃくちゃ嬉しいですね!