色んなところにギターが隠れている。隙間から音を探すのがとても楽しいアルバム(SHINPEI)
YG:8曲目の「UNDER THE MASK」は、すごく元気になる曲ですよね。
SHINPEI:不思議な曲ですよね。
YG:コロナ禍のテーマで歌詞を書いて、こんなに楽しい曲にできるというのは、さすがDAIGOさんですよね。
SHINPEI:そうなんですよね。デモの段階では全然歌詞のテーマも決まっていなかったんですけど、どんどんアレンジが変わって、最終形がこうなりました。最も姿を変えた曲かもしれないですね。もともとはDAIGOさんが、Netflixでモトリー・クルーの『THE DIRT』(2019年)という映画を観て、その勢いで「曲作りをしよう」って連絡してきたところから始まったんですよ。最初は鼻歌だったんですが、本人の中にシャウトしたい雰囲気があったみたいで(笑)、デタラメ英語で歌ってました。でも進むうちにモトリー・クルーの欠片がどんどんなくなり、「じゃあ逆にそこから離れて、ファンキーなカッティングなんてどうだろう?」みたいな流れになりまして。そうやってどんどん変化し、最終的に原型が出来上がったという…面白い経緯ですね。
YG:まさかこれの元ネタがモトリー・クルーだとは、誰も想像しないと思います(笑)。続く9曲目「I love my daughter」は、DAIGOさんのすごくプライベートな曲という捉え方でいいでしょうか?
AKIHIDE:歌詞の内容としては、もちろん娘さんが生まれたのでそういう想いもあるんですけど、そもそも親子愛を描いたTVドラマ「ミヤコが京都にやって来た!」のタイアップとしてお話をいただいて、その流れで作っていった曲でもあります。本当に優しい曲が出来上がりましたね。
YG:タイミングが素晴らしく合ったということだったんですね。
AKIHIDE:本当にそうですね。DAIGO君に子供が生まれたタイミングで、たまたま親子愛を描いたドラマのタイアップが来るなんて。なかなかないことですよね。
SHINPEI:この曲はかなり初期の段階から、宅見さんにアレンジを預けていたんじゃないかな? ピアノ・アレンジが強い曲の場合は、けっこう彼にお願いすることが多かったりするんですよ。色んな楽器をマルチにこなす方なので。
YG:グロッケンの音がピアノに重なっていますが、これはSHINPEIさんだったりするんですか?
SHINPEI:厳密に言うと、僕のはシンプルな鉄琴ですね。レコーディング現場に僕の持っているものを持参したんですけど、結局は宅見さんが叩いてくれました。
YG:最後の「End Roll」は先ほどおっしゃったように、かなり前からアイデア自体はあった曲ということなんですよね?
SHINPEI:そうですね。3年前にBREAKERZのライヴがあった時、書き下ろしの曲を作ろうという話になって、バンドで「せーの!」で合わせるだけで成り立つようなシンプルな曲を作りたいねとDAIGOさんと話していたんですよ。ある意味、コピーしやすいアレンジの曲ですね。そういうアイデアから始まりました。
YG:おっしゃる通りシンプルな曲ですが、こういうアレンジの場合、音作りが相当大事なんじゃないかと思うんです。そういう意味で言うと、BREAKERZ作品で聴けるクランチの音色はとても絶妙な線を行ってますよね。パッドなどの上物などと合わさることで空間を埋めるという、バランス感が素晴らしいと思いました。音作りに関しては、けっこう時間がかかったりするんですか?
AKIHIDE:今回は各々がそれぞれ録った素材を集める形で最終ミックスしているんですよ。僕は例えばフラクタル・オーディオ・システムズの”Axe-Fx II”を使って、そのアウトにさらにマイクプリなどをかまし、EQをかけて上の帯域を伸ばしたり…、普段はエンジニアさんがやるようなことを自分でやりながら、なるべく良い音で録ろうとしました。こういうコロナ禍の中でも、しっかり良い音を録るというのは大事なので、そこは相当こだわりましたね。それを最初にやったのがこの曲だったのかな。僕はうっすらと12弦のアコースティックなんかも重ねているんですけど、たぶん色んな音と混ざっているので分かりにくいかもしれないですね。何となくニュアンスやアタックの部分は生きていると思うんですけど。
YG:なるほど、細かいコダワリですね。ちなみにどの辺りですか?
AKIHIDE:サビですね。サビのクリーンでユニゾンさせています。そうやっていつもと変わらず全力でやりながら、みんなの音を合わせたという感じですね。
YG:事前に機材リストをいただいているんですが、お二人ともわりと今まで使ってきている、信頼のある機材を引き続き使ったイメージですね。(※註:当インタビューの最終ページに掲載)
SHINPEI:そうですね。僕のギター・アンプに関しては、ディーゼルで5年以上ずっと落ち着いてます。それ以前はマーシャルにいったり、ヒュース・アンド・ケトナーにいったり、ブルネッティにいったり…色んなハイ・ゲイン・アンプを試していました。ダイアモンドも使ったことがあったかな。
YG:相当色々と、ハイ・ゲイン系を試行錯誤していたんですね。
SHINPEI:そうですね。ディーゼルの中でも初期型の“HERBERT”ヘッドと“V412”キャビネットの組み合わせは、使い方次第でめちゃくちゃヘヴィになるんですけど、フラットにセッティングするとすごく気持ち良い万能な歪みに落ち着けるんです。旧型の“HERBERT”なんですよ、“MK II”じゃなくて“MK I”です。あと、僕はフラクタルに関しては1つヴァージョン・アップして“Axe-Fx III”を使い始めているんですけど、これもすごく良いですね。
YG:最近はどのアーティストさんの話を聞いても、ケンパーかフラクタルかという感じですよね。
SHINPEI:そうですね。それも使い分けて試したんですけど、僕はフラクタル派になりました。プリセットの時点でガツンと出来上がった音が出てくれるので、後はそれを引き算していって、自分の好みに音を削っていくというか。
YG:…といった具合にアルバムのお話を聞かせていただきましたが、最後にお2人から一言ずつメッセージをいただけると。
SHINPEI:この『WITH YOU』は、いわゆるギターの音の渦が詰まっているようなアルバムではないんですが、逆に耳を澄ませば色んなところにギターが隠れているみたいな、隙間から音を探すのがとても楽しいアルバムだと思います。ポップからロックまで色んなサウンドが詰まっているので、そういったアプローチを聴いてもらえると嬉しいですね。様々な音の欠片が詰まっているアルバムだと思ってます。
AKIHIDE:タイトルの『WITH YOU』は、こういう時代でも共に一緒に歩いていこう、生きていこうという意味合いで、そういうポジティヴなエネルギーに溢れているアルバムだと思います。SHINPEIも言ったように、ギターがたくさん溢れている作品ではありませんが、1つ1つのフレーズに前に突き進むエネルギーを込めていきました。僕に関しては、今回は特にエフェクティヴなフレーズも多くて、そういうところでギタリストとして新しく出来ることであったり、熱い想いを自分なりに込めたので、ぜひ読者のみなさんに聴き取っていただけると嬉しいですね。
BREAKERZ『WITH YOU』 ギター・レコーディング機材リスト
AKIHIDE
★アンプ
フェンダー“’68 Deluxe Reverb”(コンボ)
ボグナー“Ecstasy”(ヘッド)
ディバイデッド・バイ・サーティーン“FTR37”(キャビネット)
★ギター
フェンダー・カスタム・ショップ“’62 Stratocaster Heavy Relic”
ギブソン・カスタム・ショップ“Historic Collection ES-335”
フェンダージャパン“Telecaster”
ギブソン“SG Junior ’69”(※P-90搭載)
モーリス製12弦アコースティック・ギター
★エフェクト・ボード
クロン“Centaur”(金色・ロゴあり)
ヴェムラム“Jan Ray”
エレクトロ・ハーモニックス“Deluxe Memory Man”(旧型)
デジテック“Whammy 5”
ジム・ダンロップ“Cry Baby”
★その他自宅作業時の機材
MXR“DYNA COMP”
ローランド“SDE-3000”、“SDD-3000”
フラクタル・オーディオ・システムズ“Axe-Fx II”
カメレオンラボ製マイク・プリアンプ
SHINPEI
★アンプ
ディーゼル“HERBERT MK I”(ヘッド)、“V412”(キャビネット)
★ギター
Sugi Guitars“SH605”
ブリードラヴ“Fusion”(アコースティック・ギター)
★その他自宅作業時の機材
フラクタル・オーディオ・システムズ“Axe-Fx III”
アーニーボール・ミュージックマン“AXIS”
Plugin Allianceのプラグイン・ソフト(ディーゼルやメサブギーのモデリング・アンプを使用)