マグナス・カールソン・インタビュー/ザ・フェリーメン『ONE MORE RIVER TO CROSS』「“越えるべきもうひとつの川”というのは、人生の大きな変化のことだよ」

マグナス・カールソン・インタビュー/ザ・フェリーメン『ONE MORE RIVER TO CROSS』「“越えるべきもうひとつの川”というのは、人生の大きな変化のことだよ」

本番ではデモと全く違うソロを弾こうとするんだけど…

YG:では、今回のレコーディングでのギター周りの使用機材を教えてください。ギターはいつものアーニーボール・ミュージックマン“Steve Morse Model”のみでしたか?

MK:うん。スティーヴ・モーズのモデルはピックアップの組み合わせオプションが沢山あって、様々なサウンドを得ることが出来るので、他のギターを使う必要がないからね。だからいつも、ギターを変える代わりに、ピックアップ・セレクターでポジションを変えるだけだよ。

YG:どこかモディファイしてますか?

MK:いや、すべてストックのままだよ。

YG:アコースティック・ギターは使いましたか?

MK:このアルバムでは使っていない。いつもは、よくテイラーのアコを弾くんだけどね。

YG:アンプも、いつものケンパー“Profiling Amplifier”のみですか?

MK:そうだ。ずっとそうしているよ。よく使うサウンドはエングルだね。その中から色々なプロファイルを試している。

YG:エフェクターはどうでしょう?

MK:すべて“Pro Tools”で追加している。ミックスの際に、色々と変更することが出来るようにね。すべてのエフェクトを排除したサウンドに、ディレイやリヴァーブなどその時々に適切なエフェクトを追加するようにしているんだ。

YG:全曲のチューニングを教えてください。

MK:基本は全弦1音下げで、曲によってドロップCにした。ドロップCの場合、細い弦だとチューニングが安定しないから、[.009〜.046]の弦を張っているよ。

YG:ところで、『A NEW EVIL』のミックスとマスタリングはヤコブ・ハンセンに依頼していましたが、今作は『THE FERRYMEN』を手掛けたシモーネ・ムラローニを再び起用しましたね?

MK:今回、誰に頼むか決めたのは、フロンティアーズ・レコードだよ。シモーネもヤコブも素晴らしいエンジニアだから、両方と仕事が出来て僕としては光栄だよ。

YG:今作にも鮮烈なギター・ソロが満載されていますが、シュレッド具合のバランスなど、心掛けたことはありましたか?

MK:僕にとって誇りに思えるソロというのは、“曲をより良くするソロ”なんだ。速弾きで「凄い!」と思わせるのは重要じゃない。楽曲に何か良い影響を与えるソロが理想だな。そう出来ているとイイんだけど…。あまりにも速く弾き過ぎると、妙な感じになるだろ? ゆっくりとした素敵なメロディーの方が、しっくりくることもある。願わくばすべてのソロに、何か良いモノを見出してもらえるとイイんだけど。

YG:ソロは練り込みましたか? インプロで弾いたソロもありますか?

MK:デモでは即興で弾くんだけど、大抵はいい加減な仕上がりになって、アルバムではとても使えない。だから本番のレコーディングでは、また全く違うことを弾こうとするんだ。でも殆どの場合、デモのソロと同じように弾いてしまう。しかも、なかなか上手く弾けなくて、結局は元の即興ソロのコピーになってしまって…。不思議なもんだよね。

YG:ヤング・ギター読者に、特に注目して欲しいソロというと?

MK:以前、「いつもその曲に合うソロを念頭に置いている。単に次のサビへのつなぎでしかないソロなんて退屈なだけだからね」と言ったと思うけど、僕はいつだってそのことを心掛けているから、どれか1曲だけ選ぶのは難しいな。ただシュレッドしているだけじゃダメだ。そこには素晴らしいメロディーがなくてはならない。凄まじい速弾きを聴いて、「何て凄いんだ!」と感動することもあるけど、その20秒後には、やっぱり覚えられるようなメロディーの方がイイな…と、いつも思うんだ。それか、さっさと聴くのを止めてしまうよ。

YG:『ONE MORE RIVER TO CROSS』の日本盤には、ボーナス・トラックとして「The Last Wave」のアコースティック・ヴァージョンが追加されていますが、ギターレスのピアノ・アレンジになっていて、ちょっと驚きました。過去2作のボーナス・トラックも、やはり本編収録曲のアコ・ヴァージョンだったものの、いずれもアコースティック・ギターがメインのアレンジでしたよね? 今回、ギターなしでいこうと思ったのはどうしてでしょう?

MK:単に、これまでと違ったことを試すのもイイかな…と思っただけさ。それに「The Last Wave」は、ピアノとの相性が抜群だったからね。

YG:ちなみに──まだ『ONE MORE RIVER TO CROSS』がリリースされたばかりですが、もう次のプロジェクトに取り掛かっているのですか?

MK:現在進行中なのはアレン/オルゾンの新作で、そのあと、フリー・フォールの新しいアルバムに取り掛かる。そしてその次は、ラスト・トライブの新作を作れたらな…と思っているところさ。

YG:最後に、ザ・フェリーメンとしての今後の予定を教えてください。これまでにライヴを行なったことはないと思いますが、何か計画はありますか?

MK:それについては、今まさにみんなで話し合っているところだ。未だ実現には到っていないけどね。3人の忙しいスケジュールの合間を縫って何とか実現することが出来るのなら、是非ともやりたいと思っているよ。その時は、追加のメンバーも探さないとな…!

マグナス・カールソン2