ケーブルを使ったのは久々で、なんか変な気分だった
YG:ジョンは2本のベースを使い分けていましたが、どっちも自作なのですよね?
JG:いや、赤い方だけだよ。あれは昔からずっと弾き続けているベース(エクスプローラー・シェイプ)のクローンなんだ。ある時、マークが「もしツアー中にベースが盗まれたらどうするんだ? そうなったら激怒するだろ?」と言うから、「だったらいっそクローンを作ろう」と思ってさ。どのみち、指板に問題があって、もはや剥がれそうだったしね。あのクローンには、オリジナルと同じピックアップが載っていて、ネックはさらに良くなっているけど、ボディの木材はロクでもないベニヤ板だ(笑)。トレモロは中国製で、そこそこのシロモノだけど、ちゃんと機能しているし、出来上がりにはとても満足しているよ。
もう1本──リッケンバッカーのコピー・モデルはHONDO製だ。いや…実を言うと、あの見てくれと手にしたフィット感以外はあまり気に入ってなかったんだが、このモデルはボルト・オン・ネックだから、解体して持ち運べるところが最高でね。実際、飛行機に乗せる時は、ネックを外して小さなケースに入れておく。その方が経費削減になるし、楽器ケースに入っていないのでベースだとは思われなくて、空港の職員が手荒に扱わないのも最高だ(笑)。本体はかなり改造していて、ペグはヒップショット製に付け替え、ピックアップはセイモア・ダンカンのハムバッカーを載せ、ケーラーのトレモロを加えた。ネック・ピックアップは邪魔だから外してしまったよ。必要ないからね。それで少しは軽くなるし(笑)。見栄えもクールで、とても気に入っている。気分はクリス・スクワイアさ!!
MG:彼みたいになりたいのか?
JG:クールだろ? 大好きなベーシストさ。勿論、本物のリッケンバッカーのような音も、出そうと思えば出せるし。
YG:そもそもお2人は、昔からギターやベースをよく改造したり、自作したりしていましたね?
JG:自作はキットから始めた。白いVシェイプのベースを作るところから始めたんだ。そのベースは『WALK THROUGH FIRE』『EXTERMINATION』『METAL CITY』で使っているよ。素晴らしい音が出せるんだ。
MG:俺のギターも、ジョンが殆どすべての作業をやってくれた。結果、本当に素晴らしい出来になっている。市販されているギターと遜色ないよ。昨今はオンラインで何でも買えるんだから凄いよな。ヤング・ギターにも、キットを使ってギターを自作する人のことが載っているんじゃない?(笑) PRSみたいな(高価な)ギターじゃないとダメだという人もいるだろうけど、金のない若者にはとても買えない。でも、大金を払わないと真っ当なギターが手に入れられないかというと、そうでもないんだよ。
JG:そうそう。探し回れば、素晴らしいモノが見つかる。俺は昔から改造するのも好きだった。さっき話したリッケンバッカーのコピー・モデルもそうだけど──古くはダン・アームストロングのクリア・ボディのヤツとかさ。『WIPED OUT』の裏ジャケットに写っているアレだよ。中国製のコピー・モデルで、お気に入りだったのに盗まれてしまった…。そもそも職人技が光る高価なギターって、高級家具みたいなモンだろ? でも、俺達は楽器を手荒に扱うし、パフォーマンスも乱暴だから、そういうのは必要ない。
MG:何でも破壊してしまうからな!(笑) だって、壁に飾っておくモノじゃないだろ? 俺達にお飾りは必要ない。欲しいのは有能な“道具”なんだ。
JG:ああ。まさに仕事道具だからな。
MG:PRSを持ち上げて、ネック同士をぶつけてスライドさせるヤツなんていないよ(笑)。でも、俺達は(楽器同士を)叩き付けて擦り合わせる。目的達成の手段として、そう使うんだ。これからギターを始めようとしている新しいプレイヤー諸君には、「ギターには金をかけなきゃいけない…なんて心配は無用だ」と励ましてあげたいね(笑)。ただ、自分に合った楽器を見つけて弾き始める──それでイイのさ。殊にエレクトリック・ギターの場合だと、ピックアップが最も重要だったりする。それで「良い音でプレイしたい」という欲求は満たされる。
JG:マークが最初のシングル(1980年「DON’T NEED YOUR MONEY」)で弾いたギターなんて、30ポンドで手に入れたんだよ。それで「Wiped Out」を弾いたんだ。今でもそのボディは保管してあるから、新しいネックを付けて直さないとだな(笑)。
MG:そうそう、あのテレキャスターは今でも持っているよ。
JG:買った時は白かったのに、今じゃ黄ばんでいるヤツな(笑)。凄く古いんで、叩き壊されて、ピックアップが飛び出したりしているけど…!!
MG:当時の俺にとっては高価なギターだったんだよ。ちゃんとフェンダー製だし! まだガキだった頃は、多くのギターが高価でとても手に入れられなかった。でも、今じゃ何だって簡単に手に入る。ケンパーみたいな、無数の音が入れられる超便利な機材もあるし。いや、昔もサウンド・シティの“One Hundred”みたいなのがあったな。あれは本当に奇妙で、低音を上げると音量が変わったりして、「一体どうなってるんだ?」って感じだったよ。まるで野生動物のようだった。スピーカー・キャビネットのプラグを差し込むと、煙が出たこともあったし(笑)。
JG:昔はそういうことがよくあった。俺もキャビネットを3台吹っ飛ばしたことがある(笑)。
MG:そうそう、キャビネットが吹っ飛んだり、スピーカーが吹っ飛んだり…とんでもなかった。
JG:あれは高くついたな(苦笑)。
MG:面白いのは、ヴィンテージの珍しいエフェクト・ペダルが色々復刻されていることだ。しかも、当時よりも作りが良くなっていたりしてさ。とにかく、俺達は昔から実験的なことを色々やっていたよ。ファズ・ペダルの中身を取り出して、ギターに搭載したり…とかね。ギターでスイッチをオン/オフ出来たんだぜ。それでとんでもない音を出していた。完璧にクレイジーなギター・サウンドをね!
JG:ミューズのマシュー・ベラミーの先駆けだな(笑)。でもコントロール不能で、あまりにクレイジーだった。
YG:ところで──昨日、サウンド・チェックの際に機材がトラブっていたようですね?
JG:ワイアレスだよ。これまでにも何度も経験してきたけど、また壊されたんだ。
MG:今回も航空会社がやってくれたよ!
JG:ああ。レシーバーのヴォリューム・コントロールのところがヘコんでしまっていた。

MG:だから、昨日はケーブルを使ったんだ。ケーブルを使ったのは久々だったんで、なんか変な気分だった。それこそ超オールドスクールだよ(笑)。
YG:それにしても、お2人は今も機材に対する興味や思いが凄いですね! 還暦を超えて、今も最新機材を求めて、実際に使ってもいるし、改造もやっていて…。
MG:新しいテクノロジーを使い損ねているミュージシャンは沢山いるよ。中には、本当に使う価値のある良いモノがあるのにね。例えばケンパーは、マイクを使わずPAに直で信号を送るだろ? そこがイイ。だって、いつも同じスピーカーが用意されているとは限らないし、ツアー先へ常にキャビネットを持参することなんて不可能だ。場所によっては音を拾うマイクも異なるし、マイクは何かの拍子で動いてしまうかもしれない。不確定要素が多過ぎるよ。その点、スピーカー・エミュレーターによるクリアなギター・サウンドをPAに直で送れば、俺がステージで聴いているのと同じ音が出せる。
JG:そう。しかも、毎回どこでも同じサウンドが出せるんだからな。
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MG:そのメリットのためだけでも、使わない手はないよ。あと、自分で持ち運べるということ。ヴィンテージのマーシャルほど唯一無二ではないかもしれないけど、本物との違いなんて、まず分からないだろうな。さっきから言っているように、俺は音にはとってもうるさい。最高の音が出したいから、それで新しい機材も採り入れているのさ。良いテクノロジーなんだから、使わないと勿体ない。
JG:マイケル・ワグナーが言っていたよ。「溜め込んでいるアンプを全部売ってしまおうかと思った」ってね。いや、彼は実際にそうした。50台も持っていたチューブ・アンプを、すっかり売っ払ってしまったんだ。「もう必要ない。全部このケンパーの中にあるから」と言って。結局のところ、肝心なのはそれをどう使うか…さ。“Pro Tools”もそうだけど、よい道具は使わなきゃ。そうして良いことに使えば、素晴らしい結果が得られる。
MG:ケンパーが悪だと言ってるヤツがいたら、俺が「ふざけんな!」と言ってやるよ!!(笑)